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魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー  作者: ウィル・テネブリス
魔法の姫とファンタジー世界暮らしの余所者たち
553/580

58 ストレンジャーズ、エクストリーム一休み


 新しい歴史を一日分刻んだアサイラムで、また冒険者たちが動き出した。

 未調査地点を調べに行くやつもいれば、白き民の陣取る場所へ向かう一団だっていた。

 周辺を見回りつつ小遣い稼ぎに()()を集める連中。居残りついで休息や訓練、拠点内の作業と思い思いなやつら。

 人手も施設も増えて「あそび」が増えてきたが、白き民の脅威は変わらずだ。


「……で、その物知りが言うには白き民は巨人以外にお友達を増やしてるかもしれないってさ」

「白き民に新種か。お前の言う物知りなやつとやらが何か教えてくれたみてえだが、別にんなこと言わなくたって「それくらい来るだろうな」ぐらいの考えはここにあったぞ?」


 朝食が終わって程ない頃、広場のテーブル越しに坊主頭が嫌な顔を浮かべてた。

 鎧も着込んで荷物も整えた格好は今にでも冒険に出かけそうな具合だ。


「俺がこうして話す前からだいぶ腹くくってた感じだな、タケナカ先輩」

「想定外な事態ってのは何かしら繋がってやってくるもんだ。巨人が出たってことは、そんな具合で新手が出てきたっておかしくはねえだろ?」

「じゃあこうしてあんたに話しておいて正解だったかもな」

「お前のことだから物知りさんとやらがどんな人柄なのかは聞かないでおくがな、話をまとめるに――あいつらは俺たちを意識していて、しかもバックに親玉がいて、敵の種類が増えるだろうってことか? 本気で言ってんのか?」

「本気じゃなきゃこうしてお出かけ前に声がけしないだろ? 俺だって今朝いきなり耳に挟まれてこれだぞ」

「んなこと突然教えてくるような奴と知り合うなって気分だが、むしろそいつを聞けて安心しちまったぞ」

「安心だって? どこに落ち着き見出してるんだよ」


 そろそろ発つとばかりの姿に、こうしてニャルからの情報を伝えてたわけだ。

 タケナカ先輩はこれから南側の地域を探索しにいくらしい。

 そこへ「物知りなやつからの情報」と都合よくかいつまんで説明すれば、この持ち掛け方に向こうはなぜか納得気味で。


「顔も見えねえような奴からの情報なんざあんまり信じたかねえがな、あの白い連中を誰かが動かしてるとなりゃデカい情報だ。俺たちが有利になりえるぞ」

「どう有利になるのか教えてほしいもんだな。あとそいつの顔なら撮影してあるけど見るか? おっぱいぎり隠れてるけど」

「今の説明でますますそいつに対する不信感は増したが、とにかく俺が言いてえのはこうだ。もしほんとに操ってるやつがいるってのなら、そいつは致命的なミスを幾つも晒してやがるんだぞ?」

「少なくとも冒険者に負け続けてるってところは分かるな」


 しまいに「はっ」と鼻で笑った。

 あいつらを動かすやつがいるなんて聞いたら普通はよからぬ知らせだ。

 でも俺たちはそうでもない、というのも――


「ああそうだ、そこらじゅうに白き民がいっぱいいるってのに生かし切れてねえからさ。ここの制圧に失敗するわ、いまだに東と南とで大軍を抱えてただじっとしてるわ、挙句の果てに俺たちの存在に焦ってやっと手を打ち始めてるとなりゃ……大した奴じゃねえかもな」


 むしろどこか安心したようなタケナカ先輩がそうなんだろう。

 仮にいたとすれば、この土地にやってきた冒険者に慌てるようなやつだ。

 もっと言うならこっちの脅威に気づいてからやっと対策をするような相手か。


「ここ最近を振り返ると大したことない人物像が浮かんでくるな。じゃあ今頃は巨人をやられた次は何をぶち込むべきかお悩み中か?」

「今のところ想像できたのは自分のコマも満足に動かせねえようなやつさ。まあそれだけならいいんだが、そいつがちゃんと反省できるってことは厄介だな。今までとは違うやり方をしでかす可能性もできちまった」

「敵の種類が増えるってことは、そりゃ向こうのやり方もその分増えるよな」

「それを今の状況に重ねてみろ。頑なにお住いの地域を守ってるようなやつらが突然気を変えてこっちへ来たらやべえだろ?」

「そうだな、反省を生かして東と南から同時に来られたらえらい迷惑だ」

「もう敵が動かねえってのは「何もしてませんよ」ってことにはならんさ。それがお前の教えてくれた情報と不吉に重なっちまったわけだ」


 そして俺がもたらした情報が、ここの状況と嫌に重なってしまったようだ。

 廃墟にべったりな白き民が何らかの理由で一斉にこっちに来る可能性も上がった。


「あそこを死守しつつ、実は見えないところで何か準備してましたってオチが見えてきましたと」

「さっき言った白き民の新種とやらの話も絡みそうだろ? 信頼性はともかくこいつは重要な情報だ、今後のあいつらの動きに警戒する理由には十分さ」

「こうして話しといてよかったと思う」

「いきなり変なこと言いだすからとうとう本格的におかしくなったと思ったがな。とにかく分かった、俺の口から巨人以外に何かしら新手が出るかもしれないということを伝えとく。それに伴って向こうの動向に一段と注意するように説明するからな」

「ありがとう、こういうのは俺よりタケナカ先輩の方が説得力あるからな」

「次からはそれくらいできるように努力しろよ。それにちょうどよかったな、ドワーフの爺さんどもだって「なんとなく」でそういう事柄に対する備えはしてたみてえだ」


 話し合った結果、頼れる先輩はこの件を広めておいてくれそうだ。

 それにちょうどいい頃合いだったらしい、道路の向かい側を見た。


「……あれがなんとなくか? どうしたんだあのでっかい……クロスボウは」


 素材管理所の建物のそばに視線があてはまった。

 人間では扱えない特大級のクロスボウが重たげに鎮座してる。

 たぶん白き巨人の所有物だ、金属部品によるところどころの補強が魔改造を銘打ってた。

 滑車を取り付けられたり、太すぎる弦を引くためのクランクがついたりとやりたい放題だ。


「白き巨人の落とし物だ。俺たちでも使えるようにと改造してやがるんだが、ご覧の通り一基完成してるだろ?」


 タケナカ先輩はどういう感情なんだろう、少なくとも遊び心に呆れてそうだ。

 あれで白き民をぶち抜けという魂胆が視覚化されてるぞ。


「再利用してあいつらにお返ししろってか。あれ喰らったら痛いじゃすまないだろうな」

「あいつらが使ってた()()()()は状態が良ければあんな風に直しとくとさ。試し撃ちが済んだら拠点内の見張り台に一つ設置するそうだ」

「どおりで馬鹿でかい矢が何本もあるわけだ。これならデカいのが来ても安心だな?」

「しかも戦車だってあるだろ? ここの備えも強くなってるんだ、ここの冒険者どもに伝えるにはいい機会に他ならねえ。俺に任せとけ」

「よろしく頼む。ところでその格好はお出かけ?」

「白き民だらけの町をぶっ潰すってのなら、その周りを調べて本番の際に邪魔が入らねえようにしねえといけないだろ? 南側で見つかった新しい場所を調べてくる、休みを取ってるやつらと留守番しといてくれ」


 なるほど、だいぶ余裕もあるしニャルの情報も耳に入りやすいかもしれない。

 タケナカ先輩はその足でわいわいやってるところへ向かおうとするも。


「――タケナカ、投擲用のポーションを新たに作ったぞ。ライトニング・ポーションを応用して作った『イグニス・ポーション』だ、少々危険ではあるがお前たちぐらいなら扱えるはずだ」

「クリューサがお前たちに試してほしいそうだぞ! なんと爆発するポーションだ! 冒険者でも使える手榴弾といったところだな!」

「ってクリューサ先生か。なんだいきなり、今度は真っ赤なポーションが充填してあるようだが……?」


 ちょうど遮るような形で、クリューサとクラウディアが何かをお披露目にきた。

 木箱を満たすほどにこもった柄付きのポーションだ。

 カバーと安全レバーに守られたガラスの中で真っ赤な液体がたぷたぷしてる。

 ついでに手書きで『危険』とあって。


「なにこれ、柄付きの手榴弾みたいだな」


 思わず手が伸びた。

 ぎりぎりファンタジーな見た目だが、擲弾兵がぶん投げるのに適した構造だ。


「みたい、じゃなくその通りだ。万能火薬と特殊な薬剤を混ぜた液体が充填してあるからな、決して振り回してガラスを割るような真似はするな」

「その特殊なのは最終的にどうなるんだ?」

「混合が始まってすぐ、空気と触れた瞬間に爆発する。擲弾兵向けの説明をするならば、この世界の連中でも使えるようにポーションという体の攻撃手榴弾だな。もっともマナ溶液が入ってるからお前は使えんが」


 白い顔色の淡々とした説明を真に受けるならこいつはいわゆる手榴弾だ。

 俺の作った万能火薬はポーション調合まで役に立ってるらしい。。


 ……ちなみに、冒険者やらがG.U.E.S.Tの武器を使えないというルールは手榴弾だとかにもあてはまってる。


 例えばそこらに典型的な手榴弾があるとしよう。

 安全ピンを抜けばレバーがすっ飛び、雷管が叩かれて導火線に着火、その先にある起爆剤にあたってドカン!が普通だ。

 それをこの「なんて物騒なもん作ってるんだ」という顔の先輩がピンを抜こうとすれば――微動だにしないのだ。

 一言でいうなら謎の力が働いて、何が何でも使わせないつもりだ。


「今度は俺たちに手榴弾でも投げろってか? なんてもん作るんだか……」


 そんなものをいきなり押し付けられた本人は危ないお薬に困ってる。

 でもこいつはクリューサが信頼する証拠だ、流石はタケナカ先輩の人柄だ。


「殺傷力は熱と衝撃が半径数メートルに及ぶ程度だ。固まった連中の対処や巨人の足をすくうには十分なはずだぞ」

「そりゃすごいが、まさかこいつは着発式か?」

「ライトニング・ポーションと同じ原理だ、ガラスが割れたら起爆する。もう少し研究すれば時間差で作用するようになる術が見付かりそうなんだがな」

「カッパー程度のやつにはもたせられねえな。分かった、使わせてもらうぞ」

「余分に作っておいたから練習分もある。実戦で放り込む前に確かめておけ」


 お医者様は倉庫へ行ってしまった。

 思うにあいつのおかげで冒険者たちの火力も上がってる気がする。


「さっきの話を掘り返すけど、向こうが冒険者を警戒する理由がなんとなく分かった気がするぞ」

「だろ。ドワーフの武器にクリューサ先生のポーションに、ここ最近で戦い慣れたやつがいっぱいいるからな。つまり向こうを刺激したのは確実に俺たちのせいってことにもなるが」

「だったらなおさらこの依頼を完遂する必要があるな」

「そういうことだ。しかも稼がせてもらってる以上、もはや失敗は許されねえからな」

「最近思うんだけど、クラングルからくる支援物資の数も俺たちが成功して帰ってくると見込んでるよな、あれ。つまり期待大」

「食わせてもらってる恩ができちまった証拠だ。冒険者ギルドに何期待してるか知らんが、向こうを安心させねえといけない理由がすっかりデカくなったことを忘れるなよ」


 なんであれ、この未開の地に安全をもたらす仕事に力を入れろってことだ。

 タケナカ先輩はサンプルのポーションを手に冒険者の集まりへ向かった。

 集まった外出チームはここの半分ほどか。外はあいつらに任せて、今日は拠点で過ごさせてもらうか。

 そう思って席を立った時だった。


「朝からお忙しそうですねえ……こうも冒険者の皆様が賑やかだと、なんだかうまくやっていけそうな気がして不思議ですよ」


 くたびれた中年の狩人衣装添えがやってきた。

 正しくはのんびりした様子で帰ってきたミナミさんだ。

 後ろにお仲間もついてきてるあたり、無事に交代が済んだか。


「戻ってきてたのか。お帰りミナミさん」

「ただいま戻りました。相変わらず敵に変化なし、けっきょく監視初日はただのキャンプになっちゃいましたね……」

「ほんとに向こうに変化がなかったのか? 皆さま揃いも揃ってそんな感じに緊張感ない顔してるけど」

「大きいのも含めて街をうろうろするだけでしたよ。なんというか、見ていて「あいつら飽きないのかなあ」と不安になるほどです」

「向こうの心配するほどに異常なしか。こういう時はいい知らせとして受け取った方がいい?」

「今は我々の帰還を喜んでいただければ。代わりに周辺の探索でいくつか怪しい場所を確認したので、地図に書き足しておきますね。監視の引継ぎも無事に終わりました、手厚い支援に感謝してます」

「そりゃよかった。お礼は道具手配してくれたスパタ爺さんと食堂のみんなに言っといてくれ、お弁当おいしかった?」

「いやあ美味しかったですね……! 敵との距離感忘れるぐらい堪能させていただきました、それはもうみんなで焚火を囲んでわいわいと」

「おいしすぎてキャンプになっちまってるな。ところでマシュマロ焼いてるやついなかったか?」

「えーとあれはですね、ヒカリちゃんが突然マシュマロとチョコとビスケット取り出して焼き始めたんですよ……けっして私の指導不足ではないですからね?」

「ほんとにキャンプ感覚じゃねーか。でもちょっと食ってみたいと思った」


 その口から敵に動きなし、と出てしまえば果たして喜んでいいのやら。

 でもいい知らせになるように努めてくれたらしい。

 鞄からラベルの剥がれたボトルをこっちに向けてるあたりがそうだ。


「あの子もカッパーに昇格してだいぶ肝が据わりましたからねえ。それよりイチさん、こちらが頼まれていた炭酸水です」


 キャップのついた150年モノのウィスキーだったものを差し出された。

 「ちゃんと中洗いましたからね」と言われて確かめてみれば、ぷしゅっと冷たい炭酸を感じた。


「……マジで炭酸だこれ」

「炭酸って自然に湧くって聞いたことありますけど、ここまで強めのやつが出るなんて流石フランメリアですよね。お酒割って飲んでました、おいしかったです」

「とりあえず最初に飲んだ奴と、そいつをもって酒割ろうと思った奴はどんな顔してるのか気になってる。誰だ?」

「すみません、すべての元凶は私です」


 こんなものが出てくるなんてさぞ楽しかったと思う。

 一口飲むとしゅわっときた。本当に炭酸の刺激だ、しかも透き通るようにうまい。


「炭酸水に免じて許してやるよ。それより白き民に新種がまた出るかもしれないって話だ」

「おや、帰ってくるなりまたいきなり。何かあったんですか?」

「あー、タケナカ先輩が今それについて説明してる。まあなんだ、白き巨人が出たってことは間違いなくあんなノリで新手が出るってお話」

「なるほど……確かにあんなインパクト強めなやつが出ましたからねえ、私もあれを皮切りにまた新しい種が出るんじゃないかって思っていましたよ」

「ミナミさんもちょうどそう言う考えがあったのか」

「そりゃ狩人ですし? 焚火を囲いながら空飛ぶ白き民でも出るんじゃないかなーとか考えてました」

「じゃあ明日から空も見張っといてくれ」

「抜かりなくどこまでも見てますよ。ところであのでっかいクロスボウはなんなんです?」

「落とし物があったから持ち主に返そうとしてるだけだ。後で撃つ?」

「ドワーフの計らいが目に見えてますねえ。ちょっと撃ってみたいです」 


 改造されたバリスタを見に行った誰かに「どうも」とボトルを掲げて見送った。

 そろそろタケナカ先輩の説明も『新手が出るかもしれない』という切り口が近づいてる。


「……いちクン? 何飲んでるのかな?」


 しゅわっとまた一口キメてると、向こうから桃色髪が踊るのが良く分かった。

 ミコが抜け出てきたみたいだ。一目で分かるほどに冒険の準備ができてる。


「ミナミさんが持ち帰ってくれた炭酸水だ。砦の地下で湧き出てたってさ、飲む?」

「炭酸水って湧くんだ……!? じゃ、じゃあ一口……?」

「けっこう強いぞ。ところでその格好は? ミセリコルディアでどっか行くのか?」


 相棒も出かけそうな雰囲気だが、一口飲んで「んふっ」と少し辛そうにしてから。


「えっと、わたしたちも探索に行ってこようと思うの。南側の地域って、まだ全然調査が進んでないみたいだし……」


 と、地図の写しをそこらに広げた。

 色々丁重に書き足された上でプリンターでコピーされた最新版だ。

 ここから南東や南西に廃墟だのがこまごまある――例の本拠地からは程遠い。


「見てくるついでに制圧してくれる感じか」

「うん。わたしたちもここの地理に慣れておきたいしね、それにもしかしたら他にも大きな敵の居場所があるかもしれないし」

「でも四人だけで大丈夫か? いや、お前らなら巨人一人ぐらいは楽にいけそうだけど……」


 問題なのはそこへ四人で押しかけて大丈夫かどうかだ。

 ミセリコルディアは確かに強いけど、白き民は数で物理的に訴える厄介な連中だ。


「その心配ならいらんぞイチ。今回は彼女たちが私たちに同行してくれる」


 こんな急な疑問にエルが挟まった、きりっと冒険の身なりが整ってる。


「なんかさー、この子と意気投合しちゃったんだよね団長たち。これが陽キャか、太陽みたいに明るい戦乙女パワーなんか……!?」

「ご心配なく、なんかセアリさんたち戦力増強してますから。見てください女性率マシマシですよいち君」

「セアリが不機嫌そうだけど気にしなくていいからね? みんな自分より胸おっきくてケツちっさくて嫉妬してるだけだから」

「誰がデカケツですかフランさん!? 殴りますよ尻で!?」


 その後ろに準備万端とばかりの格好が乳繰り合いながらついてくる。

 フランとセアリの取っ組み合いはひとまず忘れて、後ろで広がる白い翼に目が行くと。


「あーしたちがついてくよ~♡ みんなでミセリコルディアのお手伝いするから心配いらんし? お土産楽しみにしててねいっち!」

「……なぜかチアルのせいでミセリコルディアの皆さんと同行することになりました。いいんでしょうか、私たちで」


 明るくドヤるチアル……と、巻き添え食らった黒い狐耳の姉ちゃん率いる一団が混ぜこぜになってた。

 四名プラス六名の計十名という戦力だ、きれいなお姉ちゃんまみれである。


「白き民慣れした連中がご一緒か。賑やかだし頼もしいな」

「あはは……気づいたらみんなで行こうって話になっちゃったの。チアルさんがついてきてくれるって持ち掛けてくれて……」

「そいつらはここ最近で何度も実戦経験積みだ、いいんじゃないか?」

「それにあーし、空も飛べるからいろいろ便利っしょ? だからだいじょーぶ、みんなで力合わせればさいきょーじゃん?」

「……といっているが、実際この者たちはあの時の戦いで白き民を多数撃破していたからな。貴様の言う通り、実力がかなりあるのは確かだ」

「良かったねセアリ、そこのリーダーさん狐だよ? つまり同じイヌ科だね!」

「狼です! セアリさんを狐だと言いたいんですか!? なるほどいい度胸してますね!?」

「あははっ♪ みこたちおもしろー♡ いつもこうなん?」

「ちょっと撤回する、こいつら大丈夫なのか」

「だ、大丈夫です……たぶん」

「たぶんの次はきっとか? まあ、その、やばいと思ったら全力で逃げて俺たちに丸投げするんだぞ。ほんとに手が負えないときはすぐ駆けつけるからな」

「うん、何かあったらすぐ報告するから。いってくるね?」

「いってくるねいっち~♡ っしゃー、ヒロイン軍団出撃だー」


 チアルが加わりやかま……容器に彼女たちは冒険者らしく歩み始めた。

 最後に「うぇーいっ☆」といきなり陽気な戦乙女にハイタッチを求められた、ぱちっと返すと満足げだ。

 美少女顔の皆さまは南のゲートをくぐっていったようだ。


「俺たちも行って来るぞ。白き民たちの動きに相変わらず変化はないみてえだが、何もねえからって油断するなよ」

「ミセリコルディアの人達も来てるとか豪華だなー……それじゃイチ先輩、調査行ってきますね」

「新種の敵ですか、これ以上変なの出てほしくないですね……行ってきます」


 タケナカ先輩も出発だ、ホンダとハナコと他数名を加えて南方面へ進軍だ。

 他の連中も思いついた場所へ冒険しにいくのが見えた、手を振って見送った。

 これで拠点の冒険者も半分ほどだ、一仕事しに行った連中の後には――


「行っちまったなぁ、俺たちはどうすんだよ?」

「皆様お気をつけて~……うちら居残りっすね、拠点いじりっすか?」


 暇そうに絡んでくる幼馴染と、ちょこちょこ寄ってきたメイドだ。

 訓練場から「せぇい!」というノルベルトの掛け声も届いた、居残り組は好きにやってるみたいだな。


「ここ最近何かと外で戦いっぱなしだったからな。たまには息抜きでもどうだ?」


 なので炭酸水をすすめつつ、俺は射撃場を親指で示した。



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