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魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー  作者: ウィル・テネブリス
魔法の姫とファンタジー世界暮らしの余所者たち
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18 浄化の魔女レージェス

 この世を巡るどっかの川から戻ると人気がほんのり満ちてた。

 地図を開いて話し合う一団。監視塔から周囲を見張る誰か。たった今北側のゲートから発つ六人一組。

 どうもここアサイラムを拠点とした上で冒険者が働きだしたみたいだ。

 俺たちはハウジング・テーブル周りにたむろするドワーフ三人に絡んでいて。


「……なるほどのう? つまりその『はうじんぐ』でここに通っとる電力を配線なしで好きに扱えて、ここの水絡みの問題を解決する手段も一瞬で組み立てられるとな?」

「んで、西側に川があったわけじゃな。お主の言う『らいふしすてむ』を設けてそこにつなげようかって話じゃが、そりゃつまり配管だとかもそいつで出来ちまうんかの……?」

「お前、神さんに片足突っ込んでないか……? いや羨ましいな、俺たちがそれ使えたら寝る間も惜しんですげえの作っちまうぞ……」


 広場にある作り立ての街灯の下であれこれ話し合ってた。

 遠隔操作で白い光をちかちかさせればドワーフ的にうらやましそうだ。


「タカアキが言うにはP-DIY・ライフシステムっていう浄水とか温水とか下水処理とか一度にできるっていう……なんかこう、すごくてデカいやつを作ればそうだ。そのために水源と接続する必要があるんだ」

「おう、この半分神様になってるやつの手で配管やらも自由自在にいじれるみてえだぞ。そうなると専用の設備を作って水を取り入れたり、排水先としてお隣で元気に流れてる川と繋がる必要があるわけだ」

「そして俺たちが行きついた先が「そこまでしていいのか」っていう報告と連絡と相談だな」


 それらを踏まえて現状を報告すると、爺さんたちはハウジングの便利さに(やっぱり羨ましそうに)唸って。


「すごいのう、ハウジングとやら。そこまで出来ちまうなら全部任せたいんじゃが……お前さん、下水処理とかそう言うのについては理解はあるかの?」

「あるわけねーだろあんなクソ物件作るような奴だぞ俺」

「じゃよなあ……でもまあ、わしらもちょうど水回りどうすっかなとか相談しとったんじゃよ」

「配管作業をどうやろうかって悩んでたんじゃがな、この様子じゃと全部解決しとらんか? すげえわハウジング」

「つまりだ、俺たち開拓チームは川の水使おうがご自由にってお偉いさんたちから保証されてるんだよな。別にやっちまってもいいと思うぜ? むしろどんなもんか超見てえ」

「うむ、わしもすげえ見たい」

「そのくっそ便利そうな機械ってどんなもんか気になるばかりじゃよ、つーことで別に置いても構わんぞ」

「じゃあやっちゃっていいんだな? でもこういうの初めてだからフォローしてくれると助かる」

「なあに、お爺ちゃんに任せんか。いやしかし便利すぎんじゃろ、ほんとうらやましい……」


 この世の水資源をいただいても別に「オーケーむしろやれ」で満場一致だ。

 と、その前にだ。ここで活動してる冒険者の様子について確認しとこうか。


「ところで質問。冒険者たちのご調子は?」

「ここアサイラムを拠点にいろいろやってもらっとる。主に危険なもんやら目ぼしいものはないかの偵察じゃな」

「ざっと見る限り周辺に人里がないからの。こうも都市から遠ざかっとるといよいよ魔物とかも普通に跋扈するもんじゃし、できる奴にはそういうのがおったら事前に討伐するように頼んどる」

「そしてここに留まって拠点を守ってもらうついでに、ステーションから送られる物資を運ぶ肉体労働も任せてるぜ。冒険者さまさまだ」

「……ほんとに開拓してるって感じだな」

「やっと気づいたか? 各ギルドも手を貸して来とるんじゃし、これもうわしらの匙加減なんよ」


 三人の張りきり具合から察するに一日4000メルタのために頑張ってるそうだ。

 現にこうして監視塔を見上げれば、居残ったベレー帽のエルフが拠点の目として周囲を見張ってた。

 北のゲートからはけっこうな数が発ったみたいだ――そういえば気になった履帯の跡もそのままだ。


「それからクラングルまでの距離を測りに行ったってやつがいたな」

「うむ、狩人のミナミってやつとディセンバーがフランメリアの自然を楽しんどるところじゃよ」

「ミナミさんかよ。ところであの履帯が走った跡はどうしたんだ? 戦車にしては幅が小さいけど」


 ついでにその疑問もぶつけてみれば、なぜだか返ってきたのは関心の表情だ。

 答え合わせも実に単純なもので、スパタ爺さんはタブレットを取り出すと。


「お前さん『ハックソウ』は覚えとるな? あれをツーショット……いやデュオの奴から餞別でもらったんじゃが、あいつめ粋な計らいをしてくれてのう」


 まさに最近撮影したような画像を見せてくれた。

 ここの道路の途切れあたりで、戦車の足回りを持った頑丈そうな車がばらばらの状態から組み立てられてた。

 続く二枚目、笑顔で映るディセンバーとドワーフの後ろであの『ハックソウ』が出来上がっていて。


「あやつがいとも簡単に分解、組み立てができるように設計してくれたもんでな。じゃから一度バラバラにしてEVカートで運んだわけじゃよ」

「そしてここに運んだらまた組み直して完成って寸法だ。ありゃいい車だ」


 続くドワーフ二人の説明で謎解きの完成だ。

 デュオが付け足してくれた機能性のおかげでここまで運べたらしい。


「こっちの世界まで世話焼いてくれたみたいだな、あの社長め」

「いい友達持ったじゃないのお前さん。未開の地がまだ多いフランメリアじゃああいう走破性の高い車は大活躍じゃよ、ありがたく使わせてもらっとる」

「あやつの目も届かんからこうして言うがの、やっぱりお主らが去って寂しそうじゃったぞ。よっぽど気の合う友に巡り合えたんじゃろうなあ……」

「俺たちフランメリア人が向こうの連中とうまくやれたのも、デュオのやつがたびたび計らってくれたからさ。もしこっちの世界に来ることがありゃ、ドワーフ一族総出でもてなしてやりたいぐらいの人柄だ」


 もう一度だけゲートの方を見た。

 剣と魔法のファンタジー世界でもあの車両は大活躍か。


「あんたらが揃ってそう言うとあの楽しそうな顔が死ぬほど懐かしいよ」


 これでひとまずは現状は把握できた。

 頑張ってる冒険者たちの後ろ盾になれるよう頑張れってことだ。

 脳裏に過るあいつのニヤつく顔に「そうか」と言葉が出るのも仕方ないさ。仕事の続きだ、空き地を探そう。


「そういえばデュオも壁の外を開拓するとウェイストランドに触れ回っておったのう、奇しくもお前さんも同じことしとるわけじゃ」

「言われてみればそうだな……だったら俺も頑張らないとな」

「うむ、あの社長も居残り組といろいろやっとるじゃろう。わしらも負けとらんことをここに刻んでやろうじゃないの」


 そうか、そうだったな。

 デュオもブルヘッド・シティの外に手を付けるとか楽し気に言ってたもんだ。

 この世界でそれなりが経ってしまった今、向こうは今頃どうなってるのやら。

 いろいろと考えを交えつつ、西側の土地の広さに建築に相応しい土地を探すも。


「……そして私はアバタールちゃんのそっくりさんが活躍してると聞いて駆け付けた【浄化の魔女レージェス】よ。ここは清らかさが足りてないみたいね」


 背後から低く濁った声がようやく混じってくる。

 そこらを見て回ってた青白い魔女がなまめかしい長身でつっ立ってる。

 話しに混じりたがる姿に気づくとばゆん、と頭に柔らか重たいものを感じた。


「……でな? ちょうどさっきここらの水回りどうするかって悩みから、どこぞの魔女の力があればとかぼやいてたんじゃが……マジで現れおったぞ」

「なんでこんなとこに浄化の魔女レージェスがおるんじゃ、まさか誰か呼んだ? お主か? それともリーリム?」

「まさかここも承認欲求クソババァに目付けられちまったのか……?」


 共に歩く爺さんたちが揃いも揃って嫌な顔だった。

 無駄にデカい胸を預けて来るブルーな魔女を露骨に嫌がる点からして、相当の訳が籠ってそうだ。


「こちらの人様の頭の上におっぱい乗っける失礼なやつがリーリム様の妹らしいな。ちなみに呼んだのは俺じゃないぞ、振り向いたら木陰で幽霊みたいにこっちガン見してた。なんなのこいつ」

「ほんとドワーフたちは失礼ね。私はこの土地を拓いていると耳にして気になっただけよ、あわよくばここも浄化の魔女の縄張りにしたいのだけれど構わないかしら」


 どゆん。

 追撃がきた。頭上で頭部二つ分ほどの大きさが勝手にしゃべってる。

 振り返って「やめろ」と一瞥するとして、この胸も態度も厚い人憑きゴーストを振りほどこうとすれば。


「――レージェスちゃんがいればこのあたりのお水問題は全て解決ですわよ? これでアサイラムも快適待ったなしですの、勝ちましたわお芋畑増やしてきます」


 鍬を担いだリム様が一言付け足しにきた、これ以上畑を作るな馬鹿野郎。

 でもこいつが水に纏わるお偉い魔女なのは間違いないはずだ。

 しょうがなく向き合えばそいつは胸をばいんばいん揺らして。


「いかにも私がフランメリアを清らかにする魔女レージェスよ。この世の中が私の浄化した水で回ってる以上、ここも我が庭として成り立ってもらうわ。構わないかしら」


 なんだかずいぶんぐいぐい押しつけがましかった。

 リム様と同じ感覚だ、あっちが芋押し付け魔ならこっちも相応のものだと思う。


「で、俺はこの人とどう付き合えばいいんだ? なんかさっきから背中に憑りついてるんだけど」

「そこの魔女こそが汚泥すら水に変える力の持ち主じゃよ。フランメリアの水のほとんどが飲めるぐらいきれいなのはそいつのおかげじゃ」

「わしらの里も坑廃水でまくりじゃったが、浄化の技術でここ何十年と綺麗なもんじゃからなあ……ただまあ、くっそ面倒なやつじゃから気を付けろ」

「向こうから来てくれたのは嬉しいけどよ……行く先々で承認欲求のままに自分の手柄を主張するもんだから感謝半分、もう半分は面倒くさがられてるようなやつだ。しかも距離感詰めるのが超下手だからコミュニケーションが一方通行極まりねえ」


 とりあえずドワーフの目つきにはクソ面倒くさそうな視線が備わってる。

 こう評価されるほど良し悪しを一対一でミックスしたようなお人柄らしいが、本人はどう言われようが知らんとばかりで。


「……アバタールちゃん、お姉ちゃんたちのところにまた来てくれたのね?」


 黒く濁った切れ目でじいっ、とこっちを見てきた。

 面と向かえばこの世に未練を持った幽霊さながらだが、なんだか嬉しそうな雰囲気を感じる。

 きっと俺のことを懐かしがってるんだろう。


「レージェス様だったか。俺のことはどこまで知ってる?」


 俺は見上げた。

 人の動きの一手一手を見逃さないぐらい粘っこい目線だったけど、最初は驚き、次には喜び、終いに悲しむような複雑さで。


「アバタールちゃんの化身が現れたってみんな口を揃えてたわ。またみんなを明るくしようとフランメリアに戻ってきてくれたんでしょう……?」


 きっと未来の俺とやらを見出したんだろう、青白い手がこっちに伸びる。

 ぺとっと頬に触れると、ひんやりした手触りがおそるおそるになぞってきた。


「そうか。じゃあここではっきりさせるけど、あんたが知ってるアバタールは未来の俺だ。だったらここにいらっしゃるのは誰か分かるよな?」

「……いいえ、分かるわ。あなたは私の知ってる可愛いアバタールちゃんよ」


 今まで知った魔女二人みたいに安堵してる――手に触れてやった。

 けっきょく導き出した答えは懐かしさだったみたいだ。見上げる先の表情はにったり緩んでる。


「どうだかな。誰が言ったか馬鹿律儀に帰ってきた親不孝者らしいぞ」


 そこにつけ込んでいつぞやギザ歯の誰かに言われたことを返してみると、レージェス様とやらは少し驚いてた。

 思い当たる節ありって感じだ。次第に小さく笑って。


「くす……♡ リーゼルお姉さまが言いそうなセリフね?」

「そこまで想像がつくならほんとにあの人のご家族みたいだな」

「だったら、やっぱりあなたはアバタールちゃんよ。その言い回しといい、私たち魔女への接し方といい、間違いなくあの子だもの」

「いいや、残念だけどモドキだ。でもそいつとちょっとバトンタッチしてこっちまできた、面倒ごとと一緒にな」

「そういうところもそっくりよ。こんな私と面と向かってくれてとっても嬉しいわ」

「そっちだってリム様やリーゼル様とそっくりだ。俺も会えて嬉しいよ」


 すぐに俺たちは打ち解けられた。

 なんたって今まで知った魔女たちとそっくりな部分があったからだ。

 すると段々、黒色強めな瞳も誰かそっくりに潤んで。


「……ただいま、って言ってくれるかしら?」


 だ、そうだ。少し屈んで視線をあわせながらお願いしてきた。

 ふと視線を感じて目を横にやればリム様が静かに見張ってた。ダメイドも。


「いいのか?」

「お願い、私に言ってちょうだい」

「分かった。ただいま」


 なのでお望み通りのご挨拶を済ませた。

 未来の俺とどんな関りがあったのやら、レージェス様はじわっと涙を浮かべた。


「お帰りなさい、坊や。律儀に応じてくれるなんて、あなたはきっとあの子なのでしょうね」


 ぼゆん。

 本当に距離感下手くそに抱きしめられた。凶器同然の乳肉にお先真っ暗だ。

 ローブいっぱいに浮かんだ重量感が命の危機を押し付けてきた、いい匂いがするとかあったかいじゃない、単純に苦しい。

 アバタールもこんな目にあったんだろうな。腰をべちべち叩いて「もうけっこう」と離れてもらった。


「その子とやらもこんな質量のあるご挨拶をされてたみたいだな。とりあえず次のステップだ、呼び方をアバタールちゃん以外に設定してくれ」

「アバタールちゃんって呼んじゃダメ?」

「アバタールが心機一転してると思って変えてくれないか? 俺の名前は「イチ」だ」


 そのついで、呼び方も変えてもらうことにした。

 どんよりずっしり大きな身体は割と素直に「イチ……イチ……」と人様の名前を受けてくれたみたいで。


「……分かったわ、イチちゃんでいいかしら?」

「ワーオ、今日で呼び名が七つも増えた。それでよろしく」

「あなたのお願いなら何でも聞いてあげる、よろしくねイチちゃん。今日からまたいっぱい甘やかしてあげるからね……?」

「おい、ほんとこいつ距離感おかしいぞ」


 無事に三人目の魔女と縁を持つことができた。

 スパタ爺さんどもに向き直ると、まるで呪いの地に両足突っ込んだ奴を見るような顔が揃ってたが。


「……リム様の妹さんって言われると確かに納得できる部分があるよな。どうもこいつの幼馴染です」


 隣で魔女との邂逅鑑賞に勤しんでたタカアキがようやく首を突っ込んできた。

 しかしレージェス様は意外そうに目を見開いてて。


「タカアキって……もしかしてあの子が言ってた、亡くなった幼馴染のことかしら……?」


 アバタール越しに幼馴染のことを知ってる驚き方だった。

 このサングラス顔がくたばったことも存じてるような感じだ。

 これにはさすがに二人して「マジかよ」と顔をあわせたが。


「良く知ってるみたいだな。幼馴染くたばったって話もしてた?」

「いやあ、こりゃしてるだろうな。一応言っとくと死亡ルート免れた幼馴染のタカアキです、どうぞよろしく」


 仲良く肩を組んでまで健在であること、それから両足が地についてることも表現しておいた。

 するとどんより系な魔女様はくすっと安心したように笑ってくれた。


「……そう、あの子の言ってた「面倒見のいい幼馴染」のタカアキ君なのね」

「お前のハチの巣エンド伝わってるみたいだぞタカアキ」

「残念だったな、今はまだ人間の営みに必要な穴しか開いてねえぞ」

「こっちは頭に穴開けられたけどな」

「そりゃ気の毒に、もしかして俺の分肩代わりしてくれた?」

「お前が生きてる理由が分かったぞ、そういうことか」

「これで貸し借りゼロだったみてえだ。てことでご覧の通り仲良くやってます」

「二人して身体に穴開けられてるなんてひどい共通点持ったもんだな俺たち」

「人の風通し良くしてくる親切な奴らはみんな返り討ちにしてやるぜ」

「その結果がご一緒に知らぬ土地の開拓だ。なんて人生だ」


 もっと面白くしてやろう。二人で馬鹿なことを言い合っておいた。

 効果は抜群みたいだ。陰気極まりない顔がくすぐったさそうに目を細めて。


「……くすっ♪ 今度はお友達も連れて楽しそうにやってるみたいね? なんだか私、すごく嬉しいわ」


 ずいぶん温かい笑みを浮かべた気がした。

 まあすぐに元の青白い造形に戻ったが、初めて見た時よりいい印象を感じる。

 それはさておきだ。俺はPDA越しに建築画面を立ち上げて。


「で、レージェス様はなんていうかその……水をきれいにできる特技をお持ちみたいだな? 是非ここで活かしてほしいんだけど」


 建てようとしていた【P-DIY・ライフシステム】の姿を遠くに浮かばせて、いよいよ水回りの問題に取り掛かろうとすると……。


「ええ、あなたのためならこの魔女レージェスはなんでもしてあげる。とりあえずここにどう水道を設けるのか教えてくれるかしら? 一通り建物は見たけれど、どこに浄化の法をかけるか大体の見当はもう考えあるわ」


 かなり食い気味に話を進めてきた。ずっっっしり胸を押し当ててきながら。

 距離感はともかく目はマジだ。仕事に取り掛かるような意気込みがある。


「俺も把握しきれてないんだけど、どうも不思議な力で配管ができて、ついでに浄水だの下水処理だのができる装置を作れるんだ。で、そいつでここの水の通りをどうにかしようとしてたわけだ――もちろんフランメリアの環境に優しくな」

「ふむ……だからあなたたちは水源を探してたのね。でもあそこまでここを繋げられるの? けっこう遠いのだけれども」

「情けないことに手探りだ。それでも手伝ってくれると助かるよ」


 正直に現状「不明多し」を答えるとレージェス様はずいぶん好意的な頷きだ。

 やがて東の森の方を見れば納得したような素振りで。


「ドワーフどももいるしどうにかなるでしょう。分かったわ、ちょっと川の方を調べてくるからそっちでできることをしてて頂戴」


 えらく気合の入った様子で、そっちの方へとずんずん歩いていった。

 胸も尻も揺らす後ろ姿がなんだかご機嫌に見える。


「……こりゃ驚いたな、あんないつもどんより根暗な浄化の魔女が元気になっとるぞ」

「わしらが知っとるアバタールってさ、あいつに抱きしめられるたびに窒息死しかけとったんじゃよな。お前さんも成長したなぁ……」

「あの他人に認められねえとゴネる魔女をああまでコントロールできるなんて、やっぱお前はすげえよイチ。アバタールの名があるのは伊達じゃねえな」


 そんな背中にスパタ爺さんたちは唖然としてた。いろいろあったんだな。

 近くを探り回ると都合のいい場所があった。西の金網前にちょうどよくライフシステム一つ分の空きがある。


「まるで前の俺が苦労してたみたいな言い方だな」

「気にくわないもん全部水に変えるような歩く災害みたいなもんじゃったよな」

「ああ、アバタールのやつに言い説かれてよーやく少し改善したぐらいにな。ちょうど今ので完璧になったんじゃないかの」

「でも気を付けろよイチ、お前に気を許したってことは今後隙あらば距離感おかしいまま接しにくんぞ。戸締り気を付けろよ」

「距離感おかしく襲ってくる奴ならウェイストランドで予習済みだぞ、忘れたか?」

「わははは、言うようになったなあ。さて、さっそくその『ライフシステム』とやらを見せてもらおうかの?」


 楽しそうなドワーフをそばに【掘削】を選択して、緑生い茂る地面をじゃりっと掘った。



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