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魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー  作者: ウィル・テネブリス
剣と魔法の世界のストレンジャー
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74 九尾の子たちと芋の怪異(4)


「左右の通路には部屋が幾つか、奥の栽培室にはお野菜いっぱい、んでもって外にも庭園兼栽培区画……内にも外にも住み心地が良さそうだな。ああもちろんあのバケモンにとっての意味だ」


 研究所の行く末をぶん投げられてから、俺は館内の壁を見上げてた。

 神経質な見取り図が、ここの方針やら理念についての一文と共に描かれてる。

 一目で分かったのは大部分があの新鮮な栽培室に持ってかれてることだ。

 エントランスの左右は業務上必要な部屋が繋がってる――仮眠室が無駄にデカい。


「……どちらに向かおうとも、栽培室への道のりがございますね……? あのお部屋を取り囲むように作られてるとお見受けします……」


 が、隣でみょいっと揺れる兎の白耳もある点に気づいてくれたらしい。

 左だろうが右だろうが奥の曲がり角でまた通路が伸びており、建物中央を陣取る栄養たっぷりなお部屋に通じてる。

 ガラス張りの道で、外から栽培室を眺められる仕組みか。つまり歩く植物の散歩コースでもある。


「右側にはお外へ通じる出入口があるみたい! ここから出て行ったんだろうね、あの歩くお芋さん……?」

「あの自由を謳歌する感じからして、間違いなくここから日光浴しにいった感じだ」

「なるほどねー……じゃがいもって光合成するのかな……?」

「さあ? 植物だし太陽光がおいしいんじゃないのか? ……今度リム様に聞いてみるか」


 身の丈とのサイズ比がおかしい大剣を担いだキャロルも、そこにジャガイモンスターの動きを見出してる。

 施設を右に曲がったところの突き当りが庭園と通じてた。

 ヘッドショット一発目をお見舞いしてくれたバケモンがいたのも頷ける、ここから出て行ったみたいだな。

 三人でそうやって"ポテトフィリド"のいる館内を確かめてると。


「……こっちにもいますね、二体ほど徘徊してました。それからところどころ扉が開いてますから、おそらく各部屋に入り込んでますよ」


 左側の通路からコノハがそろそろしつつ戻ってきた。

 お土産は「いっぱいいるかもしれない」って喜べない知らせだ。

 研究所の()()()()と照らすに、見てもらったそこには部屋がいろいろあるはずだが。


「確かそっちは研究室とか種子保管庫とか所長室があったよな。いくつ開いてた?」

「三つですね。最奥の左側は閉じてましたけど」

「じゃあ所長室は無事みたいだ。そんなところでわさわさして一体何してやがるんだ、あの芋ども……」

「そう言われるとこっちに来たりする気配はありませんでしたね……観葉植物のごとくわさわさしてましたよ」

「それか獲物でも待ち構えてるんじゃないか?」

「わたしたちを食べるようなお化けじゃないといいんですけど」


 狸系ロリいわく、三足歩行を知った芋の怪物が今なお跋扈してるようだ。

 ならその反対側、事務室、仮眠室、資料室だのと並ぶ右側はどうかというと。


「ご主人、さっきのミュータントが一匹増えてる。奥からまた来てるみたい」

「向こうでうろうろしてるよー……どうするの、みんな?」

「そっちもかよ。部屋は開いてたか?」

「ううん、ほとんど閉じてた」

「奥のお部屋が一つ空いてるぐらいだったよー?」

 

 扉の隙間を覗いた黒いわん娘と茶色い鳥ッ娘の報告そのものらしい。

 右に二匹、左に三匹ってところか。

 現状がこう分かれば、大剣担いだ青白ワンピースのお姉ちゃんは扉に向かい。


「じゃあこっちから行こう! これ以上お外に逃げられたら大変だし、また増える前に抑えておかないと!」


 殴り込む気満々のご様子でで元気に構え始めた。

 足を授かったじゃがいもは未知数、なんならその手ごわさもまだ知らず、そう考えると目に見えてリスクの少ない方がいいか。


「おっけー。あれっ、頭……っぽいところを落とせばいいんだよね?」

「そうですよピナねえさま。あのじゃがいも飛ばしてくる部分を跳ね飛ばせとのことです」

「シーちゃんさまは良く燃える、とおっしゃっていましたね……火のつくような手立ては控えましょう……」


 九尾院のロリどもも集い始めてる――俺もニクと扉に取りつくとして。


「……ちなみにあにさま、こんな時に聞くのもコノハ的にどうなんだと思うんですが」

「なんだ」

「お二人はどんなことができるんでしょうか? いえ、スキル構成的な意味で」


 コノハの気だるそうな顔が今更になって人の格好を気にしてきた。

 そいつが戦闘向けの和風衣装と逆手握りの小刀に対して、こちとら背中に突撃銃と弓、腰に自動拳銃とクナイ、マチェーテに銃剣である。


「俺は魔法と就活以外だったら何でもする男だ。投擲と忍術とかいろいろな」

「投擲に忍術……コノハと同じなのですね、意外です。わたしは刀剣に忍術がメインです、つまりニンジャということで」

「いち君、忍術使えたんか……!? 何かアーツは使えるの? ちなみにおねえちゃんは大剣使いだよ!」

「忍術はシャドウスティングにニンジャバニッシュ、投擲はラピッドスロウにピアシングスロウ、あとレッグパリィとか」

「ラピッドスロウって言ったら投擲80じゃないですか!? 忍術もコノハより高そうですね……けっこう使いこなしてる自信があったんですけど」

「訳ありでお前らとスキルシステムが違うけどな。何使える?」

「シャドウスティングとか、風刃の術とか、ピアシングスロウとかも使えますね。投擲武器はお金がかかるのであんまり使いたくないんですけど。ニクちゃんは見たまんま槍使いでしょうか?」

「うん、槍に慣れてるから。銃も使えるよ」

「なんかコノハたち、いい意味で白兵戦に特化したパーティになってますね……」

「いい具合じゃないか? 他の奴らは?」

「にーちゃんいろいろ使えたんだねー……ボクは戦闘術とキック!」

「わたくしは杖術と魔法でございます、防御魔法と氷魔法でみなさまをご支援いたしますので……」


 ピナも鋭い足先をひょいっと掲げて、ツキミもそっと杖を見せてきた――オーケー、俺たちはいいチームってことだ。

 ざっと確かめたところで扉に手をかけて。


「さて、最初はお姉ちゃんに譲っていいか?」


 歩くじゃがいも待ち構える向こうへと備えた。

 種族も年齢も超えた金髪ロリな姉はどやっと(平べったい)胸を突き出して。


「――おねえちゃんにお任せだよ! ついてきて、いち君!」


 それはもう得意げに、自分の等身そっくりの長さをした銀色を掲げてみせた。

 弟のストレンジャーも我が背に続けということらしい。ずいぶん小さなお姉ちゃんができてしまった気がする。

 アレク、今ならお前の気持ちがなんとなくわかる。こんな感じだったんだな。


「それじゃおねえちゃんファーストだ、ゴー!」


 大きな扉をそっと蹴とばした。

 通路のじゃがいもの姿が、足代わりの三本の幹でぐりっと振り向く!


『……RRRRTTTTTTTTTTTLLL!』

『RRRRTTTTTTTLL……!』


 敵の数は二つ、濃い緑の幹で立つ巨体からあの独特なクリック音がした。


「みんな! ツタに気を付けてね!」


 キャロルが一番に駆け込めば、当然向こうは待ち構えてたように口を開く。

 ばすばすっとじゃがいもが飛んでくるも、大剣で防ぎながら引き受けてくれた。

 流れた何発かが擲弾兵のアーマーにぼこぼこ衝撃が伝えてくるが。


『RTTTTTTTTTTTTTTTL――!』


 二人で間合いを詰めてもう間もなく、という頃だった。 

 でんぷん質の塊程度じゃ止まらないと分かったのか、太い胴にあった数本のツタがぎゅっと持ち上がる。

 すると先割れた緑色が想像以上の速さで打ち払ってきた――人の腕より太いしなりが視界に迫る。


「……残念だけどただの芋ばら撒くバケモンじゃなさそうだな!」


 そんな時、直感的に左手を掲げた。

 手刀を作る感じだ。まっすぐ横払いでやってくるツタに動きをあわせた。

 それが視界に覆いかぶさるという寸前、地面を踏んで大きく腕で払い返し。


 ばぢっ……!


 うまく決まった、圧し掛かる衝撃が手から外へと受け流れる。

 当たるはずのツタが左へ上へと逸れて不安定に飛んだ――これが【ガントレット・ブロック】のアーツだ。


『……RTTTTTTTTTT……!?』


 薙ぎ払いを不格好に逸らされたポテトリフィドが後ろにずるっとよろめく。

 そこへマチェーテ片手に詰めれば、別の一体から『手』が突き出されるも。


「こっちはおねえちゃんに任せて――たああああああああああああっ!」


 小柄な身体がくるりと割り込む。 

 そこから身体いっぱいを使った斬撃が、来る手を遮るように塞ぐ。

 混じったキャロルの完璧なタイミングが迫るそれを跳ね飛ばして、続けざまの二本目、三本目を受け止め払って塞ぎきる。

 見事に攻撃を全て防ぎやがった――これがお姉ちゃんか。


「どうもお姉ちゃん!」


 こっちは【ガントレット・ガード】でよろめく化け物が身構え直す瞬間だ。

 ぶぉっ……!と鈍い唸りを込めたツタが迫るが、間合いは俺のものだ。

 廊下に足から飛び込んだ、床の滑らかさの真上で空振りがむなしく影を落とした。


『RTTTTTTTTTTTTTTTL……!』 


 警戒を込めたようなクリック音がもう一本の太さですくい上げてきた。

 殴るように床を突いて跳ねて避けた、空振りがむなしく空を引っ掻いた。

 起きれば太い幹はすぐそこだ。眼前で頭上の球状が慌てて口を開くも。


「まずは一つ!」


 マチェーテを横合いに一閃、ロアベアほどじゃないが首下をぶった切る。

 硬いブレードに太いロープを切り裂くような低い触れ方がした。

 叩き込んだ得物もろとも脇を強引に駆け抜けて、幹をなぞるように押し通れば。


『RTTTTT――LLLLLLLLL』


 無駄にでかく咲き誇ったじゃがいもの花ごと、そいつの頭がごろっと落ちる。

 虚しいクリック音の終盤部分が奏でられて間もないうち、シーちゃんのアドバイス通りに残りの身体がごろっと転ぶ。


「こっちもひとーーーーつ!」


 あわせてキャロルも派手な一撃を喰らわせたところだ。

 攻撃手段を切り落とされたポテトリフィドの胴上をざっくり横斬りにして、大事な部分を失ったそれがぐらぐら倒れていく。

 姉弟揃っての同時撃破だ。ドヤっと笑顔な様子がハイタッチを求めてきた。


「やったねいち君、いえい♡」

「そっちもな、イエイ!」

「……仲良くしてる場合じゃありませんよ! 前から来てます!」


 と、そんなやり取りの最中にコノハが走り抜けた。

 ニンジャを称するだけあってニクよりも早く、すたたっと俺たちを横切ると。


『RTTTTTTTTTTTTTTTTLLLL……!』

『RTTTTTTTTTTTTTTTTT!!』

『RTTTTTTT-LLLLLLLLL!』


 ワーオ、突き当りから「うじゃうじゃ」がきてやがる。

 クリック音に導かれたか、それかやかましさに感づいたか、ポテトリフィドの緑色が何匹分も迫ってきた。

 通路を狭くするひしめきから歓迎の芋が飛んできた、装甲頼りで突き進む。


「――支援いたします。【アイシクル・ジャベリン】!」


 その時だ、背後からしっとりとした詠唱が追ってくる。

 ホームガード・スピアを思わせる長い氷のきらめきがそばを追い越した。


『――RTTTTTTTTTT……LLL……!?』


 ツキミの氷魔法が向こう側の一体の『頭』に命中だ。

 飛びかけのじゃがいもごと串刺しにされて、三本足がぐにゃりと折れた。

 続けざまにもう一発『アイシクル・ジャベリン!』と氷の槍が飛んできた、奥に集う緑の化け物がまた抜かれる。


「ん……これなら大丈夫だよね?」

「着弾ぐらいじゃ発火しないぞ、やっちまえ」


 追いついたニクが更に割り込む――突き出す『VZ85機関拳銃』片手に。


*papapapapapapapapapam!*


 程よい群れの形に九ミリの連射がばら撒かれた。 

 研究所に響く乾いた発砲音に向こうが崩れるも、大したダメージは見当たらない。

 いや、だからこそ好都合なのだ。銃撃のせいでそいつらは目に見えて戸惑ってる。


「いきなり銃ですか……!? ですがナイスです、いきますよ! 【風刃の術】!」


 横合いから回り込んだコノハが詰めるには絶好の機会だったからだ。

 ツタが届くぎりぎりまで踏み込むと、組んだ手の形とマナの消費エフェクトにあわせて急停止。

 何かを解き放ったみたいだ――敵の足元から透明感のある鋭い青が何本も現れ。


 ――ずしゅっ。


 舞いだしたそれがどこかのツタの太さを叩き落とした。

 うっすら青い無数の切れ味はまだまだ続く、そいつらのど真ん中で踊り回った。

 無防備な腕がはねられ、胴に深い切れ目を残し、暴れ回る刃が数え切れないほどの被害をもたらす。


【RR……TTTTTTTTTTTTTTT……!】


 発生源に一番近いやつなんて不幸だ、三等分だぞ?

 透き通る緑色をとろりとまき散らす大ぶりの輪切りの出来上がり。そんな術が使えるなんて羨ましい。


「総崩れですよ! ピナねえさま、どうぞ!」

「へへへー、もらっちゃうよー!」


 ガチ忍術で崩れたそこへばさっと誰かが羽を広げる――ピナの番だ。

 ハーピーの羽ばたきを披露すると、勢いの削がれた植物由来の化け物たちへと着地姿勢もろとも潜り込み。


「てええええええええええええええい……っ!」


 群れから伸びるツタを軽やかに避けて、その持ち主をずばっと爪先で斬り抉った。

 柔らかく持ち上がった片足にポテトフィリドが斜め切りだ、頭ごとずるっと半身が折れていく。


【RTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTL!】

【RTTTTTTTTTTTTTT……LLL!】

「おっとっと……あとおねがーい!」


 そこへ腕が落とされるも、元気な鳥ッ娘がばさばさっと後ろに飛んで回避。

 軽々避けて戻ってきた姿に代われば、忍術から免れたやつがツタを振り下ろす場面にぶちあたる。


「ニク、やれ!」

「分かった」


 反射的にマチェーテで払った。叩きつける動きに当たってざっくり叩き落とす。

 続く攻撃が幹から来るも手で払う――ぐっと踏み込み二撃をキックで弾けば。


「切ればいいんだよね……?」


 【ガントレット・ブロック】と【レッグパリィ】の合わせ技にニクがかけつけた。

 滑り込む足取りでポテトフィリドの頭を払い斬った――撃破だ。

 そこへ横から芋が飛んでくるが、わん娘の反射神経はひょいと避けたようだ。


「大したことないね……! いっくよおおおおおおおおおっ!」


 今度は小さな青白ワンピース姿が大剣掲げて戦場を駆け巡った。

 奥で寄り添うまで芋狙撃犯を追いかけて、身構える隙も与えず得物をぶん回す。

 体格差も厭わない回転斬りだが派手に突っ込んだ、数匹まとめて()()だ。


「おいおい……手負いとはいえまとめてやるかよ」


 暴れ回る小柄な姉につい見とれるも、そこに持ち上がる影を感じた。

 乱戦にこぎ着けた奴のツタだ、つい頭を下げると重たい迫力が脳天すれすれを空振りした。


「油断は禁物ですよあにさま!」


 そこにコノハのフォローが入る。

 二撃目に入ろうとするポテトフィリドの頭に、尖りの強い投げナイフが生えた。

 球体をぶち抜かれてじたばたツタが暴れるが、滑るような足さばきが忍者らしく避けて抜けた。

 そしてすれ違いざまに小刀で切り捨てた――内容物を散らして茎が崩れていく。


『RTTTTTTTTTTTTTTTTTL!』

「ふふん、まだまだですね……あっまずっ」


 そんなところにクリック音、一撃を見舞ったコノハにツタが落ちてきた。

 おかえしに踏み出てマチェーテで防いだ、狸耳の間が潰れる前に払って間引く。


「そっちもまだまだだな、これでチャラってことでいいな?」

「あ、ありがとうございます……慢心も禁物でしたね」

 

 食物繊維を叩き落とすと、またお手すきのやつが突き出てくる――左手で払ってブロック、勢いを返して三本足を崩し。


「やばいやつかと思ったけど、別に大したことないかもな……!」


 根元に刀身をざっくり叩き込んだ。茎の皮一枚を残して身体が折れた。

 念入りに植物性の生首を斬り払うと、じゃがいもの花ごとそいつの大事なものがごろっと落ちる。


「キャロル姉さまについていけるとは、流石いち様でございますね……【アイシクル・ジャベリン】!」


 ツキミの魔法もひんやりと押し出てきた、あまりもののポテトフィリドに直撃だ。

 一歩前に出たやつが上がりかけの腕ごと硬直した、どうも急に冷たくされると鈍くなるらしい。


「いまだー! もーーーらいっ!」


 そこを戦線をかき回してたピナが滑空して掻っ攫う。

 急にきれいな回し蹴りをぶち込んでダイナミックに伐採だ、さぞ無念そうに倒れた。


「よしっ! まずは右側は制圧だねっ!」


 これで一通りの緑色がばらばらになると、キャロルの声が明るく響いた。

 武器を下ろしてみれば、十は軽く超える化け物の残骸が転がってる始末だ。

 たぶん例の栽培室から流れてきたに違いない、けっこうな数が収穫されてる。


「……ヒロインの強さが身に染みたよ、なんてやつらだお前らは」

「ん。キャロルさま、すごく強いね……」

「だっておねえちゃんだからね! みんな、怪我はない?」

「のーだめーじ! 四匹やっつけたよキャロルねーちゃん!」

「この前のゴーレムに比べたら全然ですね。でもなんか油でコノハの剣がぬるぬるなんですけど……オリーブオイルの匂いが……」

「動きが単純ゆえ、支援しやすい相手でございましたね……」


 なのに九尾院の四人は顔色一つ変えない涼しいご様子だ。

 息の合った連携で敵を平らげて「まだ余裕」と呑気にしてるんだから、人間との差がよく浮かんでる。


「おねえちゃんについてこれるなんて嬉しいな~♡ えらいえらい♡」


 こうして相も変わらず姉を自称して「なでてあげる」と構える奴がいるぐらいに。

 ストレンジャーもまだまだみたいだ、屈んで大人しく撫でられることにした。


「アレク、お前こんなに大変だったんだな……」

「あれく……ってどちらさま? いち君のお友達かな?」

「今この境遇が当てはまるようなやつだ。お姉ちゃんいっぱいいるぞ」

「おねえちゃんがいっぱいおるんか……!? 負けてられないね! ニクちゃんもおいで~♡」

「何と張り合ってるんだお前は」


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