52 夜間警備の依頼(1)
午後三時を超えて、俺たちは依頼の説明を受けにいった。
クラングルの南部で『見ているぞ』とばかりに、わざわざ鉄柵まで囲わせたレンガ造りの二階建て建物だ。
持ち主は街の衛兵だ、武術に長けたトカゲ系お姉さまが活躍する職場らしい。
しかしここ最近はそんな彼女たちの活躍も薄まるほどに立て込んでうるとか。
その事情に触れるべく、詰所の広場に一個小隊大程の数が揃った。
冒険者が集まると、衛兵と商業ギルドの組員が依頼の背景を話してくれた。
"クラングルはかつてないほど賑わっている"――これが現状だし原因だ。
唐突に来た旅人たちがフランメリアに落ち着いてはや半年ほど、都市は外からきた刺激によって栄えていた。
その影響も落ち着いたかと思いきや、先月あたりの『転移者帰還イベント』が起きるとまた国中が大騒ぎに。
そしてクラングルは特にその影響を受け取っているようだった。
ところがここで一つ問題があった。
人が増えて栄えれば、同じくして都市の面倒ごとも増えるのである。
そこで衛兵の活動を支援するクランが設立された。
その名も衛兵支援組織【イーリアス】で、彼女たちと街の平和を守ってこれで無事解決――じゃないからこうなった。
街の賑やかさにあやかってあちこちで不審な人物が目撃された。
例えば、いきなり街中で白き民について説き始める奇妙な集団。
例えば、夜な夜な人前にいきなり現れては裸体を見せる人物。
例えば、道行く人に支離滅裂で卑猥な発言を高々に伝えて去るやつ。
夜が来ると街の秩序に中指おったてるがごとく振る舞う変人が、理性というまごうの檻から解き放たれているのだ。
クソみたいな催し物が相次げば、市のお偉いさんが腹を立てるのも仕方ない。
せっかく繁栄の真っただ中にある街に汚物があったら台無しである。
そこで最近活躍しているという冒険者に「これだ」と目をつけたらしい。
衛兵や支援組織の面々と共に夜の街をねり歩いて、監視が行き届いてるアピールをしろとのことだ。
よくて不審者をけん制し、あわよくば捕まえる。それがこの依頼だ。
不審者スポーンの頃合いに合わせてタイムリミットは午前二時まで。
コンセプトは「寝ない悪い子には寝ない良い子をぶつけろ」である。
報酬は4000メルタ。不審者を確保、収容、ムショ送りにすればボーナスだ。
◇
招集された俺たちが4000メルタですることはこうだ。
首のシートを見せつけつつ衛兵たちと市内を練り歩き続ける、以上。
「…………こんなしょうもない理由で集められたのか、私たちは」
そんな背景だが、街の肌寒さにため息交じりの悩ましい声が上がった。
名前はエルヴィーネ、通称エル。結んだ栗色の髪と爬虫類らしい瞳がきりっとしたミセリコルディアの戦士担当。
厚着からはみ出す緑のトカゲのしっぽは不機嫌真っただ中で。
「まさか団長もさ、変態不審者の抑止力になれっていう理由で集められてるとは思わなかったよ……ほんとしょうもないや……」
「私もこの街には時々物申したい時があったが今日は一際ひどいじゃないか。というかなんだ、怪奇極まりないメッセージを残す不審者とは」
「……これからそう言うの目の当たりにしちゃうってことだよね団長たち」
白い息をたっぷり漏らしつつ、どこか遠くを見るお姉さんもまた一人。
夜でも温かみを感じる赤い髪色の下では、よく喋る顔が冒険者の仕事の選べなさを悔いているところだ。
竜らしい尾はげんなりだ。ミセリコルディア団長担当、フランもいる。
「いち君もいますし大丈夫ですよ。セアリさんとニクちゃんの嗅覚もあれば、今宵エンカウントする変質者なんてボーナス同然です」
「セアリってさあ、夜元気だよね……」
「ふっ……セアリさんは夜に強いのですよ、不審者だろうと臨時収入のために捕まえて見せますよ」
「夜行性のメスなんだねつまり」
「誰が夜行性のメスですかコラ」
夜の暗がりに元気な夜行性のメス――じゃなく、青色髪のワーウルフもだ。
ドヤ顔に定評のある人柄は暗い世界でのお仕事に興奮気味である。
こうして態度もケツもデカい狼系女子のセアリも尻尾をぱたぱたさせる中。
「……わたし、お仕事でも変なのとは会いたくないです……」
「ミコ、貴様は何かあったらすぐ私たちの後ろに隠れるんだぞ。いいな?」
「団長も会いたくないけどしょうがないよね……やばい時はイチ君のバイオレンスに期待しよっか」
「大丈夫ですよミコさん、そういう時は人じゃなくメルタが歩いてると思えばいいのですから」
その後ろ、賑やかさの消えるクラングルの街並みに不安げにする相棒がいた。
うさぎ耳の立つ上着で暖を取りつつも、一段の後ろでとぼとぼ足が進んでない。
その名もミコ。依頼の説明に終始困惑してた『ミセリコルディア』のマスターで。
「――怪しいやつは撃っていいんだよな?」
「ダメに決まってるだろう馬鹿者!?」
「遠慮のなさを生かす場面じゃないからね!? イチ君今日も攻撃的だね!?」
「なんでこの人ためらいもなく銃持ち出してくるんですかね……」
「絶対ダメだよいちクン!?」
そんな面々の傍ら、俺は『夜間警備の依頼』に同行していた。
依頼者から「威厳出して」という切実な願いでジャンプスーツに擲弾兵のアーマーを重ねた今、なぜかこうして散弾銃を携えてる。
てっきり12ゲージの制圧力が必要なやべーやつのがいると思ったらこれだ。
「……ん、知ってる匂いがする」
それから横でべったりしながら鼻をすんすんさせるわん娘もだ。
フードも被ったダウナー顔はこういう時頼りだ、犬の嗅覚があれば変人のきな臭さもすぐ掴むだろう。
「依頼の説明で知ってる顔がいっぱい集まってて、さてどんな仕事かって思ったら俺たち総出で不審者への対応だぞ? 変態って表現がつくほうのな。そりゃ住民も迷惑するわ馬鹿野郎」
「ああ、説明中にタケナカたちもひどく困惑していたな……」
「団長、ミセリコルディアが呼び出されて大変な事態なのかなって思った……」
「大変っていうか変態です。しかも途中で帰れる雰囲気じゃありませんでしたし」
「みんな渋々引き受けてたよね……衛兵さんたちも切実にお願いしてきたし、断れなかったもん……」
仕事のひどさは今後延々語り継ぐとして、ミコたちを越して向こうを見た。
詰所から通じる石畳をまっすぐ北へ進んでいるところだ。
このまま進めば中央の公園に向かっていく着く道のりだったか。
「……で、まず俺たちはまっすぐリーゼル様の屋敷の方へと突き進むと。タケナカ先輩たちは南側から東の冒険者ギルド支部方面に向けて横断していくらしいな」
説明を聞いた後は(微妙な空気のまま)冒険者たちで話し合ったわけだ。
どう巡回するか? そうタケナカ先輩が話を持ち掛けたのである。
何十と集まった俺たちは衛兵の巡回ルートとの兼ね合いで南側からスタート、端から端まで広がっていくローラー作戦を選んだ。
今頃、いつもの顔ぶれは小分けになってクラングルを探ってるはずだ。
「うん、タケナカさんはホンダ君とハナコちゃんを連れて北東へ進むって言ってたね? ってことは、一度中央公園で合流するかも?」
「中央公園か……まさかこんな形で夜にお邪魔しに行くなんてな」
「わたしも依頼で立ち寄ることになるとは思いませんでした……」
中央公園とは都市のど真ん中に位置する一際大きな広場のことだ。
散歩やパンの配達で通りかかることがあったけれども、今回はずいぶん不名誉な形で足を運ぶことになりそうだ。
「……ところで不審者の匂いってどんな感じなんですかね」
「……ん、うさんくさい?」
「ニクちゃんうまい……じゃなくてですね、一応知ってる人の匂いはセアリさんばっちり記憶してるんですけれども」
セアリとニクの嗅覚的には、今のところ道中に異変はないらしい。
だったら俺たちにできる最善は目と耳を凝らして地道に探ることだ。
「……っていうかさ、こんなにぞろぞろ押し掛けたら流石の不審者も引っ込んじゃうんじゃないかな。冒険心と一緒に」
途中の路地やらを探っていると、フランが異変のない光景に暇そうだった。
でもそれいいはずだ。市がこうして『冒険者派遣します』と広めて、街を困らせるやつらの腰が引けてるなら正解だ。
「でも抑止力にはなってるだろ。冒険者もお前らの相手になるぞってな」
「そして次からは貴様らを見る目が増えるぞ、と印象付けるわけか」
「しかも不審者を捕まえたら報奨金がでるんだろ? 今頃不審者も首に金かけられてスリル満点じゃないか?」
そしてエルの口ぶり通りに「君を見てる」と言えるような人種が増える。
要するに俺たちはこうして、今日昼過ぎから正式に不審者の敵になったのだ。
「実際高価てきめんじゃないですか? だってセアリさんたち、特にトラブルもなくここまで来ちゃいましたから」
「そうだね……今のところは異常なし、かな?」
そう考えて間もなく、セアリとミコの言葉通りに事が進んだ。
歩道と並木で形度られる中央公園の佇まいがあっけなく見えていた。
ところどころの照明は都市の暗闇をかえってどんよりさせているようだ。
「……あとはお祓いが必要なタイプの不審者が出ないといいんだけどな。夜に来るとホラースポットじゃねえかここ」
「ん、暗いと不気味」
毎朝ニクと通う散歩ルートは、夜に飲まれて幽霊でも現れそうな空気だ。
更に言うなら不審者がまぎれるにはうってつけだろう。
「確かに薄気味悪いな。普段はあれほど人で賑わってるというのに、なんだこの静けさは……?」
「不審者っていうかお化け出そう……団長怖いです」
「心霊関係は申し訳ないですけどセアリさんNGです。ミコさんのセイクリッド・ウェーブで退治してもらいましょう」
「お、お化けは流石に出ないよね……? でも、クラングルだと出――」
「おい、幽霊の話するな」
「ご主人、誰か来る」
『……おい、まさかお前らか?』
みんなで公園にホラーな想像を掻き立てていると、不意の声が挟まった。
六人でばっと振り返れば、通りの方から坊主頭が見えてくるところだ。
「あっ……イチ先輩にミコ先輩! ど、どうでした……?」
「合流しちゃいましたね。こっちは特に異常なしだったんですけど」
「ご覧の通りこいつら連れて北東歩いてたが、不審者の「ふ」すらなしだ。そっちはどうだ?」
後ろにホンダとハナコの地味な顔立ちが二つあって安心した。
良かった、お化けじゃなくてタケナカ先輩たちと合流できたか。
「公園の不気味さに盛り上がってたところだ。異常なし」
「あれからまっすぐ進んできたんですけど、特に何も見当たらずにここまで来ちゃいました……」
ウサギ耳がみょいみょいしてるミコと「問題なし」をアピールした。
「そっちも異常なしか。しかし夜の公園ってのは昼間とえらい違いだな。ホラー映画が作れそうなんだが」
「タケナカ先輩……今から俺たち、ここも見回らないとだめなんですか……?」
「お化けと不審者が両方出てきそうですね……」
三人とも退屈そうにやってきたってことは、南側は安全なんだろう。
ということはこれから何かが起こる可能性があるな。そう注意を先へ払うと。
『うおおおおーーーーーーーーー! 不審者ぁぁぁーーーーーーーーーー!』
夜の公園の上空で不審な声が走る。
全員分の視線が持ち上がったのは言うまでもない。
見上げれば頭上で銀髪と鎧が煌めいて、白い羽がばさばさしている。
「夜に羽生えたやつが飛んでたら不審者カウントしたほうがいいか?」
「いちクン、あれ衛兵支援クランのマスターさんだからね!?」
「こら、不審者呼ばわりするな貴様。しかし何事かと思えばイーリアスのやつか」
あれは衛兵たちを支援しているクランのマスターだ。
前に下半身露出罪の人間を逮捕してもらったからよく覚えている。
行く末を見守っていると、タケナカ先輩が「待て」と俺たちを制してきた。
「キリガヤ達から報告だ。ミナミさんと一緒に不審者を捕まえたらしい」
怪訝な顔でメッセージを見ている――さっそく出たか。
「出やがったな。ていうかミナミさんも来てたのか?」
「つ、捕まったんだ……?」
「狩人ギルドからも何人か来てるからな。えーと……【妙なやつが白き民を崇めよという張り紙をそこら中に貼りまくっていた】だそうだ。二人でふんじばったとさ」
「カルト系の不審者か。そいつらツイてるな、俺だったら強めに捕まえてた」
「ほんとにいたんだね……」
「キリガヤ先輩たち、捕まえちゃったんだな……」
「あの人無駄に行動力あるしね、こういう時強い気がする……」
耳にしたホンダとハナコも「マジで出たよ」といいたげだが。
「引っ込むどころか逆に堂々としてるようだな。まったく何が楽しいのやら」
「あちゃー出ちゃったかー……団長たちもそろそろエンカウントするんじゃなーい?」
「何事もなくと思ったんですけどガチですねこれ……気をつけましょう、油断するとほんとにおいでなさいますよこれ」
「う、うん……みんな、気を引き締めようね? なんだかわたしも何か起こりそうな気がしてきたし……」
へんてこな依頼に面食らってたミセリコルディアもすぐに仕事モードだ。
『……む? 貴官らは確か……』
と、そこにまた知らない声だ。
どこか覚えのあるびしっとした女の子のものだ。
するとホンダが「ひっ!?」と声を上げたのでつられてみれば。
「あれ? お前は――」
「ん……あの時の軍曹さま?」
俺とニクがよく覚えている人柄だった。
軍帽を乗せた黒髪ロングの女の子がきりっとした顔でいる――蜘蛛の下半身がカサカサしていたが。
「イチにミセリコルディアの者たちか。というかなんだ、軍曹さまとは」
アラクネの『軍曹』殿だった。
深く羽織ったコートの中で腕を組んで、ホンダの表情に少し不機嫌だ。
見た感じひとりで街の東を横断してきた感じか、夜の寒さに難儀してる。
「こ、こんにちは……? い、いちクン、この子とはお知り合いなのかな……?」
「私は『駆逐隊』の指揮官であるシディアンだ。貴官のことはよく存じてるぞ、ミセリコルデ殿」
「駆逐隊って……もしかして、あのすごく強い子たちがいるクラン? 錬金術師の事件の時も活躍してたっていう……」
「貴官らほどではないがな。こうして会えて光栄だ、よろしく頼む」
蜘蛛ッ娘は軍帽を整えて、ミコを見るなり握手しにきた。
相棒はクモが苦手だったはずだ、アラニエさんみたいな――と思ったが普通に握手している。
「こうして合流したってことは軍曹殿もお仕事か?」
「ぐ、軍曹って……?」
「ミセリコルデ殿、そいつとは少々任務を共にした仲でな。ご覧の通り私は小銭稼ぎでここにいるだけだ、他の奴らは「健康に悪い」だとかですやすや眠るようなのばかりだからな」
どうも軍曹は「まったくあいつらめ」と文句をつけて単身で来たらしい。
「そうだったのか。そっちは何か変なの見かけたか?」
「衛兵たちの動きにあわせて高所から監視していたが、南側には異常は見受けられなかったな」
「知り合いが不審者捕まえたってさ。白き民崇めてる変なのがいけないことしてたらしい」
「本当に現れたか。となると、これから先そのような手合いが間違いなく続くだろうな」
「今まさにそんな話してたところだ」
でも職務態度は本気だ、背のクロスボウにいつでも手が伸びそうだ。
「……イチ、貴様は本当に顔が広いな。あの駆逐隊と知り合いだったとは」
「これがあのクランのマスターだったんだ……団長、黒髪なアラクネって聞いたからもっとこーお姉さんなイメージがあったんだけど……ただのロリだった」
「駆逐隊ってちっこくて強い子でいっぱいのところでしたよね? やっぱり取り仕切ってる人もロリだったんですね」
「そこの竜族と犬、貴官らは私を侮辱してるのか」
「は? セアリさんは狼ですけど?」
「ロリ言うな馬鹿者ども!? ミセリコルディアの馬鹿二人が申し訳ない、シディアン殿……!」
「は? 団長馬鹿だって言うの? やんのか? やんのか?」
「は? やるんですかエルさん? いいでしょう明日闘技場でインナー食い込ませてやりますからね?」
「……ふふっ、賑やかなのはいいけどみんなやめようね? 特にフランさんとセアリさん」
「うわっミコが怖い!?」
「ひぃ!? 最近ミコさんが怖いです! いち君のせいか!?」
「…………貴官らは噂にたがわず愉快な連中のようだな」
ミセリコルディアの面々は黒髪ロリなクモ娘を不機嫌にしている。
騒ぎ立てる二名がミコの笑顔で大人しくされたところまで眺めると。
「……イチ、お前は老若男女問わず縁を結ぶ趣味でもあるのか?」
「知り合いいっぱいですよねこの人……」
「ほんとそうだよね、そのうち変質者とも仲良くなりそう……っていうかホンダ、あとでシディアンさんにちゃんと謝っておいた方がいいよ?」
「まだ聞いたら驚くような奴と縁があるぞ。それとハナコが最近きつい」
「もう俺は、お前が魔王だとかと仲良くなってようが驚かんからな」
「ほんと~?」
「おい、なんだその心当たりあるような言い方は」
タケナカチームはこっちのつながりに驚いてるみたいだ。
女王様なんて知った日にはショックで誰か死ぬかもしれない。
ともあれ、集う面々が仕事もほっぽり出してわいわいやっていると。
「……誰かこっちに来る」
ぼそ、とダウナーなわん娘が声が横切った。
じと顔が向かうのは公園の暗がりだ、全員の意識がそこへ身構えるも。
『……! ……!』
その誰かは実にあっけなく、そしておぼつかない足取りで現れた。
夜寒さに負けない分厚いコートを着た長身がゆらゆら向かってくる。
そいつは二本角の生えた銀髪の下を隠して、くぐもった息遣いだった。
「……おいおい、だからってホントに来るかよ」
「い、いちクン……あ、あの人なんなんだろう……」
「あれも知り合いに見えるか? 残念だけどああいうのは俺初めて」
というか、そいつはガスマスクで顔を覆っていたのだ。
この世界らしからぬ、どっかで拾ったであろうそれでおめかししている。
コートの下は裸足が、暗がりに混じりそうな青色の肌は人外娘の証だ。
もっと踏み込めば服装には胸のふくらみが浮かんだり、後ろで悪魔的な尻尾がうねってるのだ。
『……! ……!』
そいつは判断に困る俺たちを見ると、マスク越しの息遣いを荒くしてきた。
更に近づく。もうニ十歩、十歩、そわそわした青肌の足が迫ってくる――!




