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魔法の姫と世紀末世界のストレンジャー  作者: ウィル・テネブリス
Journey's End(たびのおわり)
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26 追い求めていたデイビッド・ダムへ(4)

 黒一色だったウェイストランドの夜空にオレンジ色が混ざり始めていた。

 吐く息が目に見えるほどの寒さの中、俺たちは駆けた。

 荒野の色と暗がりが織り交じった絶妙な色彩を辿って、ゆるやかな上り下りを繰り返す険しい地形をただ登る。


「……そろそろダムが見えるぞ、景色に合わせるように小さな動作で動け」


 小ぶりな山々の形を何度か超えたところでクラウディアの声が届く。

 濃く淹れたコーヒーを思わせる外套に身を包んだ輪郭が目の前にあった。

 まだ影の落ちる大地の形に見事に溶け込んでいて、音一つも立てずに先行してくれていた。


「ニク、近くに敵の匂いはするか?」


 カービンキットに組み込んだ自動拳銃を手に、俺もそっと足を運んだ。

 懐かしい感覚だ。ニルソンで土地勘をつけるために偵察をやらされていたころを思い出す。


「ん……山の方から匂いが流れて来てる。それ以外は大丈夫」


 次の斜面を登り切る頃、同じ色合いをした外套姿が追いついてきた。

 そこから聞こえるダウナーな話し方はじっと前方を伺ってる。

 全員で一度立ち止まって北東側を見下ろせば、あのダムがかすかな明るみに照らされ始めていた。


「今のところ敵との接触はなしね。ということはあいつらにとってあの山が防御の要なのかしら?」


 棒と弓を背負った女王様も荒地の暗がりに混じって現れた。全員ちゃんと揃ってるようだ。

 現在地はデイビッド・ダム・ロードの脇から続く小高い丘の上だ。

 その稜線を生かして斜面から顔を出して双眼鏡を覗いた。

 写真通りの小山が300mほど前方に見える――あったぞ、頂上あたりに陣地だ。


「みんな、報告だ。やっぱり山の上に陣地があったぞ、土嚢でしっかり固めてらっしゃる」


 はっきりとレンズ越しに確認できた。殺風景に盛り上がる地形の肌色にあわせて人工物が織り込まれてる。

 頂上からやや下りた先、南の道路と横合いの起伏の激しい土地も見張れるような場所だ。

 土嚢陣地がいつでも攻撃を加えられる「いかにも」な配置をしていた。


『こちらアキですぞ。難なく敵の懐までたどり着けましたなぁ』

『イチよ、こっちは奴らの死角についた。頭上から車の動く音が良く聞こえるぞ』

『案の定、駐車場側にいっぱいいらっしゃるみたいっすね? 道路の方からも敵の気配がするっすよ』


 別動隊からも無線が届いた。双眼鏡越しに東側を辿る。

 まずデイビッド・ダムの上を走る道路が確かにそこにあった。

 路上には箱形の大きな砂袋が並べられていて、合間合間に作られた銃眼が来るものを拒んでるようだ。

 廃材で作った有り合わせのバリケードが侵入しづらいように車の突入口を絞っており、そこに何人もの人間がうろついてる。


「現在、例の山から300mほど南にいるぞ。ダムの道路上に敵がいやがるな、十数名ぐらいか?」


 駐車場の方へ視線をずらしていくと、その道中には機関砲を積んだ戦闘車両。

 道を追いかけていくだけでも機銃つきの銃座がセットになったSUVが何台も停まってて、その上で見張る奴らもいた。

 そいつらの身なりは間違いなくブルヘッド絡みの傭兵だ。ただし神経質にあたりを見回して、それでいて落ち着かない様子というか。


『イチ、奴らのコンディションチェックといくぞ。そこから敵の体調はうかがえるか?』


 その姿にクリューサの通信が重なった。薬物による影響は間違いなさそうだ。


「ずっと肩に力入れてあちこち見張ってるな、でも集中できてないみたいだ。お前の言ってた薬のせいか?」

『戦闘用ドラッグの影響が著しいようだな。使い過ぎで神経が過敏になってる、俺の用意した処方箋はさぞ効くだろう』


 何人か不健康なことを確かめると、レンズでなぞる先に件の駐車場があった。

 トラックやらの大きな車両が集まっていた。まだ残ったダムの施設に寄り添うようにテントが幾つも立ってる。

 ここから大体600mほどか。数人ほどが武器を手に周りを見張ってる点からだいぶ寝静まってるんだろう。


「駐車場にはトラックとか大き目の奴がいっぱいだな。既存の建物の周りにテント張って暮らしてるみたいだ、見張りも数名いる」

『やはりダムに居座っておられましたか。ということは我々は朝駆けする機会を得ているわけですな』


 そこから斜面をなぞって降りたところでアキの声がした。

 ところどころが欠けたダムの全体図、その側面の底を見ると――いた。

 外套を被った三名が外壁のそばで弱い朝焼けに照らされてた。


「お前らも確認した。すぐ上で見張ってるやつがいるから気を付けろ」

『柵が邪魔ですな。ロアベア殿、少々お願いしてもよろしいですかな?』

『了解っす~、ぱぱっと斬っちゃうっすよ』


 向こうは何時でもやれるか。となるとあいつらの活躍は俺たち次第か。


「聞いたなみんな。ノルベルトたちは配置についたらしい、俺たちも一仕事始めるぞ」


 カービンのハンドルを引いて弾をチェック、薬室に1、延長弾倉に19だ。

 消音器の具合も確かめて前を向いた。この丘を下って次に見えた小山を上った先、敵の監視所がある。


「陽が昇る前に制圧だ。横から登って奇襲しよう、行くぞ」


 行動開始だ。ダークエルフが外套を躍らせるように小走りに降りていく。

 暗みのある大地に溶け込んだ姿がしたたっと軽やかに進むのを見て、俺たちもそれなりに続いた。

 ニルソンの山々とそっくりな、あの乾いた山肌の質感が足に伝わった。

 今では沢山の武器と荷物を担いで涼しい顔で走破できるし、新調した靴は厳しい環境にあわせた上等なものだ。


「クラウディアちゃんは流石ダークエルフといったところだけど、あなたも中々ねいっちゃん、こんな地形なのに堅実に動けてるわ」


 ……それでも規格外なのはいっぱいいる。一歩先を素早くゆく女王様だ。

 もっと本気を出せばあっという間に踏破しそうな余裕さで話しかけてきた。


「俺たちプレッパーズで山岳での動き方をずっと訓練させられてたからな。その成果ってやつだ」

「ん、そうだね。みんなでお散歩できて楽しかった」

「お前まさか散歩気分でご一緒してらっしゃった?」

「二人とも元気な子ね。ところでミコちゃんどうしたの? 静かだけれども」

『が、がくがくしてて気持ち悪いです……』

「酔ってるってさ。息苦しいだろうけどもう少し我慢してくれ」


 肩の相棒は外套に覆われた挙句にこの振動だ、気持ち悪そうにしてる。

 わん娘ともども駆け下り、景色に溶け込みつつ山に構える敵の懐へ迫った。

 そのふもとに触れる頃にはクラウディアが横の斜面を上がってた。俺たちも追って登る。


「……上からたばこの匂いがする」


 だが監視所目指して山肌を踏んでいる最中、ニクが突然そう口にした。

 状況的に一服してるやつがいるという証だ。カービンに手をかける。


「イチ、私は後ろから回り込むぞ。横からお見舞いしてやれ」

「もちろん静かにだな?」

「未来永劫静かにさせてやるぞ。行ってくる」


 外套をまとったクラウディアもクロスボウを抱えて裏に回り込んでいった。

 間もなく頂上だ。身体を小さく見せるように登り切ると、ダムの様子がよく見下ろせた。

 けれどもその向こうから「ざっ」と足音が伝わった。ここから降りた先にある陣地からだ。


『くそが、定時連絡に誰も出ないぞ』

『返答がないだって? 何かあったのか?』

『さっきから無線開きっぱなしのままいびきが聞こえてやがる、いつからそんな口の利き方があったのか後で問い詰めてやる』

『向こうの連中は居眠りしてるのか? 何処で見張ってるんだ、まさかテントの中で横たわっちゃいないだろうな?』

『バレない場所でこそこそやってるか、しれっと寝床に混じってるかのどっちかだ。どっちにしたって迷惑なだけだ』

『まあ気持ちは分からなくもないがな。ここに逃げてきてからずっとこれだ、いつどこで誰が見張ろうが追手も来なけりゃ変化もない荒野を眺めるだけの簡単なお仕事なんだからな』


 男の声も二人分響いた。屈んで見下ろせば四角い陣地がそこにある。

 六人ほどの傭兵崩れが織りなす世帯が、登り始めた朝日に少しずつ照らされてた。

 全員気だるく南を眺めてる。一人は寝てるし、また一人はタバコと共にぼんやりダムに向いたままで。


『最近の心配事はこうだ、レンジャーはこのまま追ってくるかどうかってな』

『いずれは俺たちをぶち殺しにくるだろうな。何せあの地獄から来たような北部部隊の管轄内だぞ?』

『そのことだが、南の方でファクトリーの方へ行った同僚が結構いたよな?』

『ああ、レンジャーにお尋ね者にされてから命からがら逃げたらしいな。あいつら「ファクトリーを奪う」とかほざいてなかったか?』

『一昨日あっちから戦闘の音が聞こえてただろ? 多分そいつだと思うんだが』

『あれか、マジでやりやがったんだなあいつらって思ってたよ』

『だが途絶えるのが早すぎだ。すっかり静かだってことはやられたんだろうな』

『……まさかレンジャーどもが追いかけてきたのか?』

『俺が心配してるのはまさにそれだ。だからみんな気が立ってるのさ、俺だって不安で眠れねえよ』

『おいうるさいぞお前ら、せめて明るい話題でも話してろ』

『タバコがまずくなるような景気の悪い話をするな。あとこの寝てる馬鹿は何様のつもりだ?』

『向こうだって一人居眠りしてるんだ、ちょうどいいだろうさ』


 誰一人こっちには気づいていなかった。副流煙混じりの低迷した空気がそこにあるだけだ。

 盗み聞きする分にはこいつらがブルヘッドから逃げ出した連中なのは間違いなさそうだ。

 しかし装備はけっこう立派なものだ。壁の『下』の銃器や防具、迫撃砲も揃って装備だけはしっかりしてる。


『それよりどうするつもりかね、持ち出した物資も来週には尽きる頃だぞ』

『食事の配給も目に見えて減ってるしな。まさか俺たちのリーダー殿は人間を食えとかおっしゃらないよな?』

『しかもだ、俺たちの今の境遇を考えてみろよ? あのクソ社長が死に損なったせいで俺たちはお尋ね者、チップはあっても誰一人まともに取引してくれないんだぞ?』

『ホワイト・ウィークスのパクりどものせいだろうな、あいつらが好き放題やったせいで俺たちまでとばっちり喰らっちまってる』

『あの死神の賞金に目がくらんだ馬鹿どものせいだろ? 街中で派手に暴れたおかげですっかりラーベ社絡みの傭兵は悪者呼ばわりだ』

『おいお前ら、それいったら一番の原因はあのストレンジャーだろ? あいつさえいなけりゃ俺たちはこんな転落人生を楽しまずに済んだんだぞ?』

『そりゃ言えてる。『下』じゃそれなりに豊かに暮らしてたのに今じゃこのザマだ、あいつのせいで一体何人の傭兵がこんな目に会ってると思う?』


 それから口から出てくる言葉もだ。ストレンジャーとは絶対に仲良くなれない人種だってことが判明した。

 女王様が「人気ものね」とくすくすしてる。顔で嬉しくないことを表しつつカービンを構えた。


『確かにラーベ社の金払いで何でもやったさ。拉致に放火に拷問に暗殺、それが北じゃ普通だったんだぞ? ところがあいつが来てから変わっちまったんだ、俺たちの普通は全部ぶっこわ――』


 リングサイトに土嚢近くでお話し中の男の顔を収める。

 その後ろでクロスボウを持ち上げるクラウディアが見えた。頃合いか。


「3――2――1」


 数えた。三つ数えてトリガを引く。


*PHT!*


 ばしゅっと潰れた銃声。抱え込んだ反動と真逆の方向で男が仰け反り転ぶ。

 そばにいた仲間がタバコを落として後ずさった。すかさず胸めがけて連射。


「――あっ、まさかしまっ!?」


 二人目が「ひぐっ」と引きつった声で苦しむのと同時に、残りが遅れて身構える。

 しかしこっちに気づいた傭兵崩れの顔に太矢が生えた。驚き顔のまま死んだ。

 続く奇襲に残りは大慌てだ。二人が俺に自動小銃のトリガを絞ろうとするのだが。


「うわっ、えっ、嘘だろ……!? 来やがった!?」

「こいつまさか追手いや、てっ、敵襲――」

「うるさい。静かにして」


 ニクが跳躍していた。犬の脚力で斜面からひとっ飛びして、じゃぎっと展開した槍もろとも落ちていく。

 落下地点にいた元傭兵が完全廃業するのはやむを得ない話だった。顎下まで貫かれて、ごぎっと音を断末魔に転がった。

 突き殺される大惨事に「ひぇぇ」と傭兵が尻もちをつく。だがその顔に矢が生えた。


「来やがった……!? なんの冗談だ、マジで俺たちころしに」


 最悪の寝起きをする羽目になった最後の一人も同様だ。逃げ出そうとした背に矢が突き立てられる。

 心臓の急な刺激に「ほぉっ」と空気を漏らして死んだ。その犯人は当然。


「こういう見張りって半数以上がだれちゃうと大体こうなるのよね。いっちゃんも気を付けるのよ?」


 山の頂で凛々しく弓を構えた女王様だ。ありがとう、でも逆レイプしたことは許さないぞ。

 クラウディアがクロスボウを手に周囲を探ってくれたみたいだ。問題ないと頷いて伝えてきた。


「肝に銘じときます。こちら山の陣地分捕りチーム、敵の監視所を潰したぞ」

『おお、やったのだな。静かに済ませたようだな』

『そっちはどんな具合だったんすかね、うち気になるっす~』

『まずは第一が済んだようですな。見事なものですぞ』


 俺たちは死体をどけて周囲を探った。

 目だったものと言えば軽機関銃やら自動小銃、そしてさっき見かけた迫撃砲か。

 あたりにはケースに入った砲弾が幾つもあった。砲身やら太さから見るに60㎜クラスか。


「編成は六人、機関銃と迫撃砲が南に向けられてたらしいな。向かってきたやつはこいつでお出迎えするつもりだったか」


 迫撃砲に手をかけた。今まで使ってきた81㎜と比べると「抱えて撃てそう」なほど小さく感じる。

 プレートに支えられた砲尾は間違いなく南のどこかを狙ってるようだが。


「お前にそんなものを渡すなんて判断を見誤ったようだな?」

「分かってくれたか?」

「当り前だろう、お前はそういうのを使ってこそだ」


 クラウディアは真っ先に理解してくれたらしい。

 迫撃砲に手をかけてきた。俺も一緒に掴んでぐぐっと本体を東へ向ける。


「なるほど、敵の武器は奪って使うなんて常識よね?」

「ちょっと照準合わせるから砲弾集めてくれ。ケースに入ってる」


 女王様も俺のしたいことを理解したようで、周囲に転がる砲弾を拾い始めた。

 その間にバックパックから専用の照準器を取り付けた。スイッチを「60㎜」にセットして砲身に固定。

 迫撃砲の光学照準器を駐車場まであわせていると。


「ふっ、さっそくこいつの出番がきたみたいだな」


 朝日が差し込みかける中、ダークエルフががばっと外套を脱いだ。

 グレネード弾用のポケットつきのベルトが下向きに弾頭を見せびらかしていた。

 そして単発式の発射機――以前俺も使った『TS9』を取り出して、弾を込めてドヤ顔だ。


「発射のタイミングは俺の指示に従ってくれ」

「了解だぞリーダー。いつでもこい」


 クリューサの用意したお薬をばら撒いてやろう。俺たちも外套を脱いだ。


「聞け、いい場所と武器を分捕った。駐車場にお目覚めのサプライズお見舞いするからそこから動くなよ」


 早朝の目覚ましを食らわせてやる準備は着々と整った。

 双眼鏡で一度状況を確かめると、ダム上の道路にいる敵はまだ気づいてないようだ。

 駐車場には相変わらずトラックとテントが複雑な狭さを作ってたが、まだ誰かがお目覚めになる気配もない。


『イチ様ぁ、うちらに飛んでこないっすよね~?』


 砲口の向きと角度を微調整すればそんな不安そうなメイドの声がした。

 ある意味あいつらの頭上に落とすようなもんだ。少し考えて敵のやや奥に落ちるように設定した。


「駐車場の奥に向けた、初弾次第で調整して連射する。撃ち切っても敵が動くまで辛抱してくれ」

『期待しているぞイチよ。なあに、一発ぐらいこちらに誤射しても死なんぞ俺様は』

『じゃあいざというときはノル様を盾にするっす!』

『私の魔法もお忘れずに、それでは良い目覚ましをお願いします』

「了解。ニク、先端の安全ピン抜いて突っ込んでくれ」

「ん、わかった」


 承諾も得た。ニクに「装填」と目で合図した。

 足元の60㎜砲弾を拾ったわんこの手が砲口にすっと尾翼を流し込み。


*BAMMkink!*


 金属音を交えた砲声が鳴った。砲身の先から一瞬、何かが飛び出ていくのが見えた。

 いきなりの音にダム上にいた傭兵崩れも気づくはずだ。双眼鏡を片手に第二射に備える。


「発射したぞ。気を付けろよお前ら」


 背負ってたライフルグレネード弾やらも下ろして着弾を待つ――しばらくすると。


 ――ぼんっ!


 遠くでそんな爆音が鳴った。駐車場のやや奥あたりで万能火薬の爆炎がそこそこに立ってる。

 これなら仲間の頭上に落とすことはないだろう。しかるべき照準に定めてから。


「よし、全弾ぶちかますぞ」

「ん、どんどんいっちゃうね」

『……いちクン、すっかり迫撃砲の使い方に慣れちゃってるね』


 愛犬に砲弾を次々と装填してもらった。ばきんばきんばきんとリズミカルな砲撃が続く。

 さすがに向こうも気づいたようだ。双眼鏡の中でテントから飛び出す沢山の人間が確認できた。

 しかしお目覚めの60㎜は止まらない。発射した分のそれがぼんぼんと小刻みな爆発を刻んで、仮住まいごとあたりを吹き飛ばす。


「こちらイチ、拾い物の砲弾を持ち主に帰してやったぞ。そっちの様子はどうだ?」


 時間差で落ちてくる砲弾に阿鼻叫喚だ。どうにか逃れた奴らがこじんまりした発電所の中にたまらず逃げていく。

 それに混じって、道路からごろごろと車が稼働する音が耳に届いた。

 五十口径の銃声もだ。山肌にばちばちと着弾して、爆撃犯を突き止めたことが嫌でも分かった。


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