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92 どけ、さもなくば死があるぞ。


*VOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOMMMMM!*


 昼飯時に相応しくないミニガンの回転率が頭上を貫く。

 しかし妙なことに気づいた。これだけ派手にぶっ放してるくせに、誰一人当たっちゃいないんだぞ?


「いきなり攻撃されるのはいつも通りだが、今のところ負傷者ゼロか」

「なんだ当たってないじゃないか。これだけ派手なのにへたくそな連中だな」


 だから分かるやつは冷静なご様子だ。

 クリューサは「やれやれ」顔で見上げてるし、クラウディアに至っては板チョコかじってるぐらいだ。


『なんか遠くからぶおーって聞こえるんすけどなんなんすかねこれ~』

『北の方から異音がするぞ、もしや戦いか?』


 「大したことない銃撃」と分かれば、ロアベアとノルベルトから無線が届く。

 感づいてくれたのか。レストランの飾り物が砕けていく様子の下、俺は呑気に耳のデバイスを抑えた。


『状況報告、エミリオたちと再会したら刺客もセットでついてきたぞ』

『さっそく向こうが食いついてきたところだぜ。ついでにこの事情に詳しい奴らも確保した、適当に蹴散らしながら南まで後退するから支援してくれ。北の境界線近くのエリダノス通りだ』

『はーいこちらエルフども。あんたのところの従業員と移動中よ、建築物が多いから移動が楽ねここ』

『なんじゃもう来とるんか。わしら仕事中だから行けん、吸血鬼の姉ちゃん頼んだ」

『我いま西側の病院にいるぞ! 少し待て!』

『いやなんで病院いんのよあんた!?』

『"さんぷる"をくれれば血液をくれると言ってたのだ! すぐゆくぞ!』

『敵が来たということだな、ならば我々も向かうぞ』

『買い物中だったんすけどねえ、あひひひっ♡』

『――君たち、何かひと騒ぎあるようだが、このチャンネルを使う時は情報を確実に伝達するために余計な発言は遠慮してくれたまえ。いいね?』

『ハハ、さっそくやってやがるな。オイラもちょっと見に行くか』


 ……無線がごちゃごちゃになったが、みんな駆けつけてくれるみたいだ。

 店が破壊されつ中、デュオと一緒に「いつ弾切れるんだ?」と顔を合わせてると。


「あなたって友達がいっぱいで賑やかね?」


 こんな状況だが、近くで同じく耳にしていたであろうヴィラがくすっと笑った。

 エミリオは必死に身を丸めてるが、彼女さんはずいぶん肝がすわってらっしゃる。


「ファンタジーな連中だ、後で会うか?」

「是非お会いしたいわ。紹介してくれる?」

「はは、愉快な連中だぞ? どうせだしヴァルハラ・ビルディングに来ねえかお二人さん? この様子じゃおたくらのお家も狙われてるだろうな」

「あら、いいの? でも困ったわね、うちには仕事に使う道具がまだ残ってて……」

「後で俺たちが回収してやるさ、家賃とかの心配もいらないぜ?」

「今はそんなこと言ってる場合かなあ君たちは!?」

『エミリオさん、いつもこうですからどうか慣れてください……』


 何やら緊張感が薄れてきた。銃声をバックにお引越しの話まで発展してる。

 空気を掠る音、叩き割る衝撃から五十口径か。でも誰一人当たっちゃいない。


「銃撃されてるのに余裕そうだなお前らは!?」

「こんだけクソ正直にやってくれる連中に目付けられてたなんて俺たちも出世したな!?」


 外からの威力と轟音がまだまだ店内を煽るが、スタルカーの坊主頭とサムは銃声以上の怒鳴り声で物申してる。

 付き添いのスカベンジャーたちも食材を盾に這いつくばってるが、こうして全員が無事なのがおかしいのだ。


「そりゃなあ、射角足りてないもんな」


 銃火の中、デュオは二挺の拳銃を握ったままのんびりそう口にした。

 その通りだ。確かに派手だが、床にまで射線が届いちゃいない。

 どう頑張ってもこの掃射はレストランの客席リフォームぐらいにしかならないのだ。

 そうなると俺たちに当たることは恐らくないわけだが。


「ということは、この攻撃は私たちを縫い留めるためかもしれませんわね?」


 店の破片が飛び散る中、リム様が散らばった食材をこそこそ集めていた。

 その言葉の通りだ。あくまでこれは下準備、本領はこれから投入される何かという可能性はデカい。


「それか単純に向こうが素人って可能性はないのか?」


 そして俺は倒れた男と伏せるニクの間で手持ちの武器を確認。

 手元にあるのは45口径、色とりどりのクナイ、後は銃剣に喋る短剣ぐらいだ。

 工具でもあればカンガンなり爆弾なり作ってやるつもりだが、今ある手札は「ないよりマシ」って程度か。


「ここまでやっておいて素人だって!? ていうか君たちもうちょっと危機感持とうよ!?」

「諦めろエミリオ、こいつらそういう人種だ! 期待する相手を間違えてんぞ!」


 ミニガンが途切れる頃を待つ最中、エミリオの甲高い声とスタルカー・リーダーの諦めの効いた言葉が立つ頃だ。。

 がらっ……とミニガンのストップ音が聞こえた。弾切れだ。

 攻撃が止んだ。仰向けに転がるデュオと目を合わせてからクナイを抜く。


「反撃のお時間だぞ社長、やっていいな?」

「お先にどうぞ! そう言ってくれるのを待ってたぜ」

「じゃあお先に失礼」


 手のひらの上でくるりと回して投擲に備えた。そっと起き上がる。

 すぐに店外で横っ腹を見せつける装甲車が目に付く。

 通りが銃座から漂う硝煙の白さに染まる中、そこに人の姿が続々降りていて。


「いけ、いけ! 奴らを逃すな、確実に始末しろ!」

「指示があるまでグレネードは使うな、前進!」


 都市らしい格好にアーマーやリグを重ねた連中が配置につこうと動く頃だった。

 拳銃にや短機関銃を手にしたやつらをを展開してる――いいタイミングだ。


「いらっしゃいませお客様! こいつが今日のおすすめだ!」


 そこにリングを引いて身を乗り出す。装甲車近くにいた男がぎょっと戸惑う。

 狙いは車両。六輪のタイヤと装甲の隙間、距離はそこそこ――クナイを投擲!

 【ピアシング・スロウ】だ。離れた重みが遠くでカンッと確かな金属音を奏でた。


「すっ……ストレンジャーだッ! 出やがったぞォ!」


 同時にそいつらの視線と銃口がようやくはっきりと向けられる。

 すぐに引っ込む。ぱぱぱぱぱっと小口径の銃撃が「はずれ」を撃ち抜くが。


*BAAAAAAAAAAAAAAAM!*


 店の外で鈍い爆発が起きた。くぐもった爆音にとうっすらとした熱も感じた。

 自動拳銃と共にまた身を出せば、火の柱を上げる装甲車と、逃げ遅れた連中が炙られるのが良く見えて。


「あっああっああああああああぁぁ!? 熱っ、熱い! 誰かぁぁぁぁ……!」

「火、火が、火がァァァァッ! 熱いィィィィィッ! 痛いィィィッ!」

「おっ落ち着け消火だ! 誰か火を――くそっ何が起きやがった!?」


 特大の火種を得た刺客どもが燃え広がっていた。すぐにベリーウェルダンだ。

 燃える仲間に慌てふためく奴らでいっぱいだ。起き上がったデュオと一緒に銃口を向ける。


「応戦しろお前ら! 今がチャンスだ!」

「いつ見てもエグイなぁお前は。さあようこそ傭兵諸君! 幾ら支払われてるか知らないが死んでくれ!」


 トリガを引いた。ばばばっと三連射撃。

 跳ねる銃口の先、不意を打たれた誰かが仰向けに転ぶ。

 隣で二挺の拳銃がリズムを刻んで、寄り集まった連中を追い払っていく。


「今度は一体何をしたんだ君!? なんか爆発したよ!?」

「それどころじゃねえだろ! 撃て!」

「魔法でも使ったんじゃないのか? ったく、巻き込みやがって!」


 そこにエミリオやスタルカーの二人も混じった、壊れたテーブルを盾に銃撃。

 手持ちの頼りない拳銃を目につく限り撃ったようだ。タイミングが良かったのか、何名かバタバタ倒れる。


「ご主人! 後ろ!」


 と、ニクの声が挟まった。厨房の方からも来たか。

 物陰越しに振り向けば数名の男たちが確かにいた。

 室内向けの装備を片手に、そしてもう片方で『取っ手』みたいな何かを握っていて。


「どうなってる!? 車両がぶっ壊されてるぞ!」

「構うな! こいつらの制圧を優先しろ!」


 そいつらめがけて反射的にトリガを絞る寸前だった。

 傭兵たちは『取っ手』を握りしめた。すると青味のかかった半透明な膜が広がる。

 身体の前面をふわっと覆うような――ミコの魔法を思わせるアレが出てきたのだ。


「なっ――なんだあれ!? 魔法か!?」


 良く分からないが撃つしかない。トリガを引いてありったけをぶちこむ。


*Bababababababam!*


 喰らえ、45口径の連射だ。

 ところがだ、目を疑うような出来事が銃口の先で起きた。

 膜のようなそれはばぢばぢと火花のようなものを立てて、ちょうど人様のぶっ放した弾丸の数だけ波立つ。

 向こうは少しよろめいただけだった。すぐに片手持ちの短機関銃やらが持ち上がり。


*Papapapapapapapapam!*


 応酬の連射がこっちを襲う。慌てて引っ込んだ。

 どうなってんだ? 魔法か? いや、魔法だったらぶち抜いてるはずだ。

 まさかあの膜(・・・)が防御してるのか? ひとまず弾倉を交換、スライドを戻すも。


「おいなんだあれ!? 魔法かなんかか!?」

『ま、魔法……!? でもマナが出てないし……!?』


 またぱんぱんと小刻みな速射が人数分向けられた。引っ込んだ。

 向こうはあの謎の膜に守られてどんどん迫ってきてる。ありゃ一体なんなんだ?


「シールド・デバイス!? 豪華な装備ね!?」


 代わりのフォローが入った、エミリオの彼女だ。

 散弾銃と共に身を出して射撃、ばぢっと弾が弾かれる音が聞こえた。

 何発かお見舞いしたがすぐに連射が響いて、けっきょく大慌てで戻ってきたが。


「なんだよそのシールドって!?」

「知らないの? ブルヘッドでたまに使われる道具よ、着弾をそらすシールドを展開するの」

「そんなハイテクグッズあるなんて聞いてないぞ!?」

『あれって機械なの……!? 攻撃が弾かれちゃってるよ!?』


 くそっ、銃弾をはじく技術なんてあったのか。

 銃だけ覗かせて撃ちまくるが――足並みと銃撃が近づく、効いちゃいない。


「んなもん使ってくるなんてマジじゃねーか、笑っちまうぜ!」


 入店を試みる連中に応戦していたデュオも戻ってきたようだ。

 外から追加の車両が駆けつけていた。その分だけの銃撃もやってきて、客席にあった即席の盾がどんどん損なわれていく。


「お前の言うように本気らしいな、あいつらも使ってるぞ」



 そういってるうちに、とうとう正面から押し掛ける部隊も見えてきた。

 しかも『シールド』とやらを手にした連中だ。クリューサが打ち込んだ二発が火花に変換されるのが嫌でも伝わった。


「あれは魔術か!? この世界も侮れないな!」


 クラウディアのハンドクロスボウも見事に逸らされたようだ。

 着弾の衝撃に難儀しつつ、そいつらは銃を片手にじりじり迫っており。


「じゃあどうすればいいんだ!? 何か弱点とかないのか!?」


 正面の傭兵めがけて撃った。数発分の45口径がばぢぢっとかき消される。

 そこにお返しの銃撃が狙ってくる。引っ込めば退路の方からも敵が来てやがる。


「イチ、お前そういえば肉弾戦は好きだな!?」


 そんなところへかかるデュオのアドバイスは「近づいてやれ」だ。

 ああそういうことかよ。俺は銃剣を抜いてニクを顔をあわせる。


「近づいてぶっ殺せって話か?」

「あいつは対応できんのは銃弾ぐらいのスピードさ、つまりそれより遅いものならどうだ?」

「要するに弾以外だったら効くんだな? 行くぞ」

「ん。右は任せて」


 よくわかった。自動拳銃を左手に、右手に銃剣を握って駆けだす。

 愛犬と一緒にずさっと通路に乗り出すと、ちょうど銃を向けたまま迫る姿と鉢合わせる。


「なっ――つ、突っ込んできやがった!?」


 その先頭、左側で慎重に歩いていた奴に突っ込む。

 手にする短機関銃が膜の裏からぱぱぱぱっと放たれるが、身をよじって飛び込む。

 外れた銃口が壁を叩きまくる。銃身を手で払ってそいつの懐へたどり着き。


「よお、こいつは防げるか?」


 突き出す膜の中へと飛び込んだ。ふわっと押し戻されるような温かさを感じた。

 逆手構えの銃剣を後ずさる男の首元に叩き込む。引きちぎるとびくっと崩れた。


「……銃以外は効かない?」


 そこにニクが壁を蹴って、敵の横合いから飛び掛かる。


「なんだこいつらっ……あ、うわぁぁぁっ!?」


 そしてわんこパーカーの格好が相手を押し倒す。

 もがくそれが滅茶苦茶に銃をぶっ放すが、その首をぐさりと犬の手が突く。 

 ぶぢっと裂かれる音がした。負けじと俺も次の得物へ走り込む。


「おふぅぅ……!? あが、ばっ……!?」

「みゅ、ミュータント……!? どうなってんだこいつら……!?」


 死んだ仲間にトリガを迷わせる男を発見、そこへタックルをかます。

 全力で壁に叩きつけると「ぐへっ」と苦し気に短機関銃が落とす。そいつは咄嗟に腰のナイフまで手が伸びたようだが。


「なるほどな、何でも防げるわけじゃないんだな?」


 ――ざぐっ。


 心臓あたりに思い切り銃剣を捻じり込んだ。ショックで身体が強張る。

 刃先が食い込んだ男はぶるぶる震えながら力が抜けた、一名ダウン。


「あぁっ……おぅ……!?」

「わ、あぁ……!? く、くんなっ、くそっ!」


 苦し気に倒れるそいつから手を離す、生き残りが腰を抜かしながら引いていた。

 片手の切り詰めた突撃銃が今にも弾をまき散らそうとちらつくも。


「なるほど、あくまで飛び道具に効くだけか。なら問題はないな」


 俺たちの間を褐色の肌が通り抜けていく――短剣を握ったクラウディアだった。

 いきなり現れたその格好に「来るな!」という制止つきの銃撃があたりを襲った。


「……あっぶな……!? 伏せろニク!」


 ちょうどいいところにシールドがあった。そこにニクと一緒に飛び込む。

 ばぢばぢと目の前が弾ける、波を打つ。火花の熱さと弾着の感触だけが伝わった。

 膜の感触に驚いてると、見当はずれの連射があっという間に弾を食いつくす。


「ち……畜生! 来るな、ぶっころし……」


 むなしくも役目を果たせなかった得物に変わり、そいつは拳銃を抜こうとするも


「これで裏口は確保だ! みんなついてこい!」


 会心の一撃。ダークエルフの身体が膜越しの身体を貫く。

 地面に押し倒されて二つのナイフで脇腹と首元を一刺し、言葉通りに安全確保だ。


「逃がすかよぉ! くたばれクソどもがぁ!」


 そこに厨房の方から別の傭兵が現れた。

 明らかに重そうな機関銃を手に、扉を蹴り破っての派手なご登場だ。


「うるせえ、死ね!」


 すかさず俺は足元の短機関銃を拾った。さっきの男のものだ。

 重々しい銃身が向かうのと同時に投擲。手から離れたけっこうな重みがぐしゃっとそいつの顔面を潰した。


「おあ゛……!? い、いでえぇぇ……あぁぁぁぁぁッ!?」

「お見事ストレンジャー。せっかくだしシールド・デバイスは頂いちゃいなさい」


 と、そんなところにヴィラが追い抜いてきた。

 いきなりフォアエンドをしごきながらの連続射撃が決まる。

 よろめく機関銃男が1、2、3と見事に三度も煽られて、奥の壁にぐしゃっと潰れる。


「エミリオのやつもいい彼女を手に入れたと思う」

「あら、ありがとう。私がいないと死にそうなのよねあの人」


 弾をちゃこちゃこ込め直す様子に感謝しつつ、俺は倒れた男から機関銃を分捕った。

 5.56㎜のドラム弾倉が突っ込んである。拝借してやろう。


「この様子だと裏口にもいらっしゃるだろうな!」

「まずい、まずいぞ! どんどん来てやがる!」


 獲物を確かめてると、客席の方から仲間たちが後退してきた。

 スタルカーの二人は手当たり次第に銃をぶち込んではいるが、シールドがことごとく弾いてるのが目にも耳にも伝わってくる。

 弾切れで交戦不可能なやつも多い。今やできることは買い物袋を抱えてリム様の周りに集うぐらいで。


「皆さま~! ごはんの材料を守ってくださいまし~!」

「今そんな心配してる場合か!?」

『食材気にしてる場合じゃないよねりむサマ!?』

「しょうがねえだろ弾がもうねえんだよ!」

「弾避け変わりみたいなもんだ! すき好んで飯の材料運んでるわけじゃないぞ!?」


 くそっ、仕方がないか。

 俺は「いけ」と通路に陣取りながら、もう戦えない連中を先に進ませた。

 全員が厨房へ押し込まれたところで――見えた。シールドに守られた連中だ。


「魔法みたいなことしやがって! おら、来やがれッ!」


 時間稼ぎだ。逃げ道まで引きつつ、機関銃を腰だめにトリガを絞る。


*Papapapapapapapapapapapapam!*


 5.56㎜の連射だ、室内で使うには凶悪なそれをとにかくばら撒く。

 薄白い膜がゆらゆら弾をはじくのが嫌に見える。

 しかし衝撃は伝わっていて、明らかに敵は足をよろめかせていた。

 だったら反撃できないほどにぶち込むだけだ。あるだけ弾をぶっ放す。


「うあ゛ぁぁぁっ……!?」


 そんなところ、弾をたっぷり頂いた男からシールドの姿が消える。

 もれなく腹に弾も食らったらしい。なるほど、防ぐにも限度があるってわけか。

 しつこくぶち込もうとするもカチっと弾切れ――得物を敵にぶん投げて逃げるが。


「どけっ! フラグ投下!」


 ……不吉な知らせが追いかけてきた。

 謎の技術で身を守る集団が退けば、そこから野球ボール程のサイズが飛んで――


『い、いちクン!?  手榴弾! 逃げて!?』


 手榴弾がきた。いい腕してやがる、まっすぐ俺の方にきやがった。

 ミコも裏返った声でそう叫ぶも、対してこっちは驚きようもない。


「あいつらも馬鹿だな、さっさとそう言うの使えばいいものを」


 少し後ろに引いた。とんでくるそれを見据えて、右足をわずかに構える。

 左足を軸に半身に力を込めてぎゅりっと片足を打ち出す。そう、ちょうど飛んでくる形めがけてだ。

 あの不思議な感覚がした。【アーツ】発動の淡々としたあの感じだった。

 そのまましなるような蹴りでそいつを一撃。すこん、と軽い音で返っていく。


「――おいなんでこっちに……た、退避ィィィィッ!」


 急いでその場を離れた。すると悲鳴まもなく、背後で逃げ場のない爆発が響く。

 【レッグパリィ】を決めてやった。まさか最初の相手が手榴弾なんてな。


『お、お見事……』

「アーツのおかげだ。覚えておいて正解だったな」


 ついでに廊下に転がってる『取っ手』のようなものを拾った。

 厨房の中からニクが「ご主人?」と心配していた。大丈夫だと撫でてやった。



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