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50 馬鹿に危険物を与えるな

「あんたのアドバイスが頼りだ。それで?」

『いいか? まずお前が目にしてるであろうウォーカーはニシズミ社の『鉄鬼(テッキ)』っていうでっかい殿方だ。対人装備も充実しててまず正面から闘う相手じゃないことぐらい分かるな?』

「出来たらこんな報告してないだろうな」

『だからこそ狙うところは一つしかない、背中のハッチ下部に強制解放用のレバーがついてるんだ』


 階段を登って二階へたどり着くと、窓越しにあのウォーカーの胴体が見えた。

 ところが『そこだなァ!』と機体の重量感がずしりとこっちを向く。

 胸部を挟むように備え付けられた二問の機銃が――なるほど対人対策ばっちりってか!?


*dDODODODODODODODODODOMm!*


 地面にキスするつもりで伏せたが、頭上を抜けた五十口径の弾着が滅茶苦茶に叩きまわる。

 インテリアグッズまみれのおしゃれな店内が現代アート展示会場に早変わりだ。

 射程範囲から逃れないと。滅茶苦茶に荒らされるその場をごろごろ転がりながら、部屋の隅を目指していく。


「背中にレバー!? どうしてそんなもんがあるんだ!?」


 対人用の重機関銃がひとしきり部屋を掃討したところで、俺は這うような形で階段を目指した。

 どうにかもう一階分上に昇れば、ちょうど相手の頭上が見下ろせるはず。

 そしてスタルカーの言うレバー付きのハッチまでたどり着く最短ルートもあるってわけだ。

 しかし一体どうしてそんな丁重なものを背中につけたんだ、戦前の奴らは?


『そりゃ万が一出られなくなった時のための救助手段だからだろ』

「敵に乗っ取られる可能性もあるだろ!?」

『そのお言葉への返答はこうだ。稼働中の人型兵器の背中にしがみついて奪おうとする馬鹿が有史以来現れてなかったからだ』

「150年の間にやるやつはいなかったのか!?」

『んなことやる機会に恵まれてたまるか! つまりお前は人類初の試みをしようとしてるってわけだ、さぞいい名誉になるぞ! いけ!』


 そして無線からのご親切なアドバイスは終了。人類初の馬鹿という名誉をこの手に掴めだとさ。

 家具の間を芋虫みたいにずりずり進めば、道中で壁に空いた穴から向こうの様子が見えた。


『何がストレンジャーだ、舐めやがって! 俺たちの仕事を台無しにするクソ野郎が、ただじゃおかねえぞ!』


 ウォーカーはまだ誰かさんにご執心のようだ。 

 それに街の南から銃撃や爆音が重なり響いてる……テュマーが追いついたか。


『いちクン、奪うって言ってたけど……どうやってあれに乗るのかな?』


 肩の短剣と向こうの動きを探ってると、そう質問された。

 なに単純だ。あいつより高いところへいって飛び乗る、それだけなのだが。


「このままあいつの上から飛び乗ってやるつもりだ。ただまあ……」

『離れすぎてるよね……?』

「ああ、ちょっと遠いな」


 問題点は件のウォーカーが適度な距離を置いて攻撃してるところだ。

 例え屋上から助走込みで飛び降りたとしてもアスファルトに赤色を足す結果になるほどには離れてる。

 向こうだってうかつに近づくのがまずいと分かってるのか、それなら。


「だったら少し脅かしてやるか」


 ベルトからスモーク・クナイを何本か取り出した。

 適当な家具にぐっさりさしてピンを抜く。すると白い煙がもくもくと室内を満たしていくわけで。


『あぁ……!? なんだぁ? また逃げるってのかお前はァ!?』


 向こうは店からあふれ出す煙幕に多少は戸惑ったみたいだ。

 しかし肝心の俺はというとまだ煙の中だ。甘ったるい焦げ臭さの中で、壁に空いた穴からずっとウォーカーを見てる。

 両腕を覆うカバーに内蔵された二問のオートキャノンはたった一人の獲物を求めて上下に悩んでらっしゃるご様子。

 やがて搭乗者は機体の構えを解いて一歩引こうとするも。


「いるんだなこれが! こっちだ××××野郎!」


 ハイド短機関銃を抜いて立ち上がった。

 堂々と割れた窓から身を乗り出して、お悩み中のウォーカーの頭部に銃口を向けて。


*PapapapapapapapapakinK!*


 金属音混じりの銃声をこれでもかと響かせながら、センサーめがけて連射。

 さすがに効くわけがなかったのかむなしく弾かれる音だけが残っただが、『ひっ』と中の人が驚く効果はあった。


『て、てめえ……っ、馬鹿にしてんのか!? そんなもんウォーカーに効くわけねえだろッ!』


 ずしん、とこっちに近づく音がした。

 お怒りの巨体が迫って、またどどどどどどっ、と重機関銃をまき散らす。

 しかしもうこのパターンは見切った。部屋の隅に滑り込んでまた身を乗り出して、窓からセンサーに向かって威嚇射撃。

 当然そこにまた銃撃が向かうが煙の中を移動して――そうやって繰り返せば。


『ばっ、なっ、あっ、っ……おちょくりやがって、クソがぁぁぁッ! 俺を本気にさせたらどうなるか分かっちゃいないようだなァ!?』


 こっちからすればある意味命懸けだが、さんざんからかわれるように撃たれたあっちは不愉快極まりなかったんだろう。

 ずんずんと小走りにウォーカーが近づいてきて、お怒りのお気持ち表現が乗せられたアームがこっちに突っ込まれる。


「あいつ馬鹿か!? 俺一人に執着しすぎだろ!?」

『どうしていちクンにそこまでこだわるの……!? 早く逃げて! まずいよ!』


 人間には火力過多な砲身が二つもご来店だ。薄れる煙の中立ち上がって、階段向かって猛ダッシュ。


*zZ-Do-Do-Do-Do-Do-Do-Do-Dommm!


 すると店ごとぶち壊すつもりの爆発が建物を揺らがせた。

 鼓膜すらぶち破りそうな轟音と衝撃を背に急いで駆け上がる。

 オートキャノンによる店内清掃から逃れると、これまたお高そうなアンティーク家具だらけのフロアにたどり着く。


「……よし、いいタイミングだ」


 通りを見下ろせる窓へと近づけば、ちょうど真下にデカい頭部が良く見えた。

 機械の腕が店の中をぐちゃぐちゃとかき回して必死に人探し中だ。

 ただしアスファルトまでの距離は『落ちたら大事故』レベルにかけ離れていて、なんだったら標的の姿がやけに小さく見える。

 何が言いたいかって? 高いところ怖いってことだ!


「……ミコ、聞いてくれ」


 いや、でも今しかない。ここを逃したらもう全高6メートルほどのロボットには乗れない。

 今やらなきゃ夢をかなえる機会を一生損ねた上にくたばるだろう。

 俺は思い悩む暇もなく短機関銃を逆手に持って。


『こ、こんな時にどうしたの……!?』

「高いところ怖い!」

『――なんで今それ言うのッ!?』


 ……窓ガラスを盛大にぶち破った!

 そのままの勢いでフォート・モハヴィの街中へとダイナミックに退店した。

 落下感と共に、見下ろしていたあいつの姿が重力に従ってぐんぐん近づく。

 良い着地場所になってくれるはずのそれは、赤いセンサーでこっちを見上げるところで――


『――なっ、しまった!? あの馬鹿降りて……』


 やっと気づいた操縦手がずんずん退こうとするがもう手遅れだ。

 どうにか肩に着地した、靴底に硬い装甲の感触がびりっと伝わる。

 頭部パーツにしがみつきながらハッチを目指すが、ウォーカーがお客様を振り払おうと不安定な動きで後退していく。


『は、離れろクソォォォッ! 俺のウォーカーに乗るんじゃねええええッ!』


 中の人間も相当焦ってるご様子だ。背面の取っ手に捕まって、親切設計にあやかってハッチを辿る。


『いちクン! ハッチの下! レバーがあるよ!?』


 上下に開く装甲にたどり着いてミコの言葉通り探れば――あった、開閉部分の下側にオレンジのレバーが埋め込まれてる。

 掴んで思い切り捻じった。するとがしゅんと音を立ててハッチが上下に開き始めたので。


「ストレンジャーだ! 開けろオラァッ!」


 自動拳銃を抜きながら中にお邪魔した。

 すると複雑そうに見える計器が幾つも見えてきて、座席の上でそれとご対面していた男がこっちをゆっくりと向く。

 そこにいたのは若くて背の低い男だ。白いアーマーこそ着ているものの、なんだか一目見て頼りない顔立ちというか。


「あ、ど、どうも……。こ、降参っていったら見逃してくれる……?」


 さっきまでの威勢のいい声はどこへいったんだろう。

 ものすごくおどおどした有様で、この世のすべてをあきらめたような弱弱しい表情で両手を上げてきた。

 ついでに電源も切ったようだ。がくんと力を失ったウォーカーが背を落として、いよいよ本格的に降参を示してしまってる。


「……君、なんかさっきの声と違わない?」


 いや、それにしても声が全然違う。

 あの何度も聞かされた野太い声に反して、この中の人間の声はあまりにも貧弱すぎる。

 あっちが獰猛な犬の声なら、こっちはスズメかなんかの鳴き声程度だ。それも死にかけの。


「え、えーと……それは、拡声機能にボイスチェンジャーを乗せてたわけで……」


 そんな銃口を添えた疑問に、ちっちゃい男はおどおど答えてくれた。

 まさかあんなやかましい男がこんな弱そうな奴だったなんて――まあいいか、貸してくれるなら誰だって同じだ。


「作ってたのかよお前。まあいい、これ借りるぞ」

「えっ、あ、あの、このウォーカー、マニュアルもなしにいきなり操縦するのは無理なんじゃないかなと……」

「じゃあ教えてくれ。あと今それどころじゃないぞ。後ろからお前らが呼び寄せたテュマーうじゃうじゃ、ついでにムストとかいうやつ死んだ。お前らこのままだと終わるぞ」


 一応何か隠し持ってないか目力で疑ってみたが何も持ってないらしい。

 コクピット内は良く分からない計器がごちゃごちゃ並んでるぐらいだ。

 あるのは事実を聞かされて息を飲んでる野郎が一人だ。ということで「どけ」と席を譲ってもらった。


「む、ムストさんが……? そ、そんな……どうして……?」

「決着を望んでたからぶち殺してきた。今頃リーダー不在でみんなバラバラだろうな」


 後ろの僅かなスペースに男を捻じり込むと、俺はさっそくウォーカーの座席に腰をかけた。

 念願のロボットへの搭乗がこれで叶ったぞ! 人生のやりたいことリストの一つがまた埋まったわけだ。

 ただまあ、困ったことに手元に広がる無数の装置を一目見て「なにこれ」としか言いようがないのが現実である。


「……で、これどうやって動かすんだ?」


 いざそれらしくどっしり構えてみれば、視界の中で理解できるものはほんのわずかだ。

 操縦席の左右にある少し高めのひじ掛けめいた何か、いくつかのモニター、両足を収める骨折装具のようなもの、あとなんかよくわからんボタンとロマンがいっぱい。

 とりあえず腰かけてそこらをいじってみるもかちかちむなしい音がするだけ。

 なので自動拳銃をお供にまた首をかしげて見せた、「どうすんのこれ」と。


「こ、これはちゃんと起動手順が必要で……」


 今にもフルオープンのハッチから逃げ出しそうな奴はおどおどしながら近づいてきた。

 45口径で震える手がいじり始めると、がしゅっと背中でハッチが閉じた。

 そいつは右側のボタンを押したようだ。真っ暗な室内が唸って、目の前にモニターがせり出してくる。


【Nishizumi Corporation……】

【NISHIZUMI WALKER OS Ver.X.X.X】


 やがて薄緑色に染まった画面で桜の木とひと振りの刀が交わったロゴが表示された。

 OSが立ち上がっているところだ――しばらくお待ちください。


「カッコいいなこれ!?」

『喜んでる場合じゃないよいちクン……!?』


 肩の相棒の言う通りかもしれないが、いや、それにしたってこの胸躍る感じはただごとじゃない。

 後ろの親切な男はいきなりの女性の声にびくっとしていたものの、薄暗い密室の中で次の動作を教えてくれた。


「よ、よし、じゃあ次はリアクターとセンサーと……とにかく全部だ、スイッチを全部ONにして」


 ぷるぷるしてる指先は右側にある操縦桿あたりを示してる。

 手で探りながら見やると、その文字通りのスイッチがずらっとひとまとまりに並んでいた。

 画面は【ステータスチェック中……】という画面のままで止まってる。


「こうか?」


 かちかちと一つずつ指で倒してみた。


【リアクター起動中……起動準備完了】

【センサーチェック中……前方監視、側面監視、後方監視、全センサー正常】

【駆動システムチェック中……人工筋肉正常、アクチュエータ正常】

【バランサーチェック中……バランス保持異常なし】

【武器管制システムチェック中……トリガ同期確認完了、全武器システム正常】

【操縦チェック……ハンドトレースシステム、レッグコネクタ同期準備完了】

【全システム確認――ウォーカー・スタンバイ】


 モニター上のチェックが埋まった。画面内のゲージが溜まっていき、機械が静かに唸り始める。


「そう! そうするとチェックが埋まるから、全部OKになったらハッチ開閉ボタンの下側にあるスタートキーを押すんだ」


 後ろの男は興奮気味に伝えてきた。

 手元を一つひとつ指でなぞると、あった、咄嗟に手が伸びる場所に赤のボタンが控えめに点滅してる。

 そっと押した――機体の中にカタカタ音が響いて、周囲からモニターが幾つも寄って来る。

 燃料の残量、兵装の残弾、機体のバランスがどうこう、損傷がどうの、よくわからないがヨシ!


【リアクター起動、センサー起動、駆動システム起動、武器管制システム起動、操縦システム起動、全システム正常】


 健全な方の電子音声がそう俺たちに次げると、目の前の様々な計器に光が灯された。

 ごうん、と一際大きな音を立てて機体が揺れたかと思えば……ウォーカーはその名の通り、ようやく立ち上がったのだ。

 その証拠に、目と鼻の先にあるモニターにはくっきりと外の様子が映し出されてる。

 ロボットの高さから見渡せるのは砲弾でぐちゃぐちゃに破壊されたインテリアショップだ、こいつにはこう見えてたのか。


「こうだな!?」

「そうだ!」

「カッコいいなこれ!」

「分かるか!?」

「ああ!」

「よし次は移動だ! 操縦席の下に足を入れるスペースがあるだろ、こいつで移動を制御する! このレッグ・コネクタに両足を通してくれ!」

「こうか!?」

『何してるの、この人たち……』


 なんだかおもしろくなってきた。

 足元には両足をすっぽり取り込むようなメタリックな装置があった。

 そこに膝から下を預けるとすんなり心地よく入った。妙な圧迫感もない。


「そう! 自動で膝あたりまで固定されたら接続完了だ! この装置がギアと移動を兼ねてるんだ、コネクタごと前に押し出せば前進、後ろに引けば後退する! 底のペダルを両足で踏めば動くぞ!」

「こうだな!?」


 説明をなぞって両足を奥までぐいっと押し込んで、かかと裏に感じるペダルを踏みつけると――ごん、と前に進んだ。

 次は後ろへ引いて足先で踏んだ。すると後退、目前の風景が遠ざかっていく。


「なるほど、こいつで足を制御するんだな」

「その通り! 腕部の操作はハンドトレースでやるんだ! 操縦先の左右に両腕をセットするやつがあるだろ」


 分かってきたぞ。特等席の左右から伸びるそれを見た。

 エグゾアーマーの腕の骨格みたいなものが前に伸びており、そこに上腕外側を受け入れる溝があっる。

 先端にはグローブのような装着部分と、その手で握り込める位置に浮いた太いグリップがいかにもだ。

 手を通して腕も預ければ簡単にあてはまった。咄嗟の際もすぐ着脱できる仕組みだ。


「よし、よし! マニピュレータと繋がったな! それで腕の動きを操れる! 今のあんたの上半身の動きはウォーカーの上半身とある程度リンクしてるから忘れるなよ!」

「すげえなこれ! 直感的に動くんだな!」

「そうだろ!? すげえだろ! 機体の旋回は片足で横に押すんだ! 両足で押すと横歩きになる!」

『あの、早く行った方がいいと思います……』


 言われるがまま腕を持ち上げる、掌を閉じる。すると画面の中で巨大なアームが持ち上がり、閉じた。

 ハンドトレースをしっかり押し出せば握り拳が突き出た。カッコいいなこれ!

 足元の装置を片足の側面で蹴るようにすれば、ウォーカーはすぐに通りの奥へと舵を切ったようだが。


「オーケー覚えた、まあなんとかなるだろ……って」


 ちょうど向こうにホワイト・ウィークスどもがいた。車両と共にこっちまで来ているようだ。

 後ろの男は慌ててモニタの根元をあれこれいじると集音機能を立ち上げたようで。


『た、大変だ! テュマーの大群が南から来てやがるぞ!』


 視界内に映る誰かから怒鳴り声を拾った。

 必死に逃げる姿に重なるそのセリフに、親切な男も流石に青ざめてる。


「……そ、それじゃ、俺はこれで……」


 はっと我に戻ったかのように、いきなりハッチ開閉スイッチを押して自由を得てしまった。

 そいつは硝煙臭い大廃墟へとこそこそ逃げようとするものの。


『ばっ、馬鹿野郎!! お前裏切ったな!?』

『ストレンジャーの味方しやがって! 何考えてやがるんだクソオタク!』

『テメー! よくも裏切りやがったな!? ぶっ殺してやる!』


 不幸なことにこいつを温かく迎えるのは罵声と銃声だった。

 かかかん、と小気味いい着弾音も届いたところで、ちっちゃい男は何事もなかったかのように戻ってきた。


「……どうしよう……!」


 気の毒なのでハッチを閉じてやると、とたんに機体に銃撃が集まってくる。

 景色の中の敵たちもこっちに攻撃中だ。肝心の裏切者はひどく絶望してるらしいが。


「なんでお前あんなに嫌われてるんだ? いじめられてるんか……?」

「あんたのせいだよ!! ああくそ、拡声器いれっぱなしだった! 俺としたことが畜生……!」

「まあ仕方ないだろ。じゃあよろしく頼むぞ裏切者」


 可愛そうに。まあこいつも道連れにしてやろうか。

 俺はうまく足をさばいて、モニターに浮かぶ照準を南からの連中に向けた。

 ハンド・トレースにはトリガやスイッチが揃うグリップが『拳を握ればちょうど掴める』ように伸びている。これで面白いことになるはずだ。


「なあ、ところであいつら撃ちたいんだけど……どこいじればいいんだ?」


 トリガは数種類ある。良く分からないが一番上のやつを絞ってみた。

 するとどうだろう、左右からどどどどどんっ、と砲声が重々しく響く。

 白い姿がぼふっと弾けるのが見えた。戦車めがけて絞ると砲弾がずたずたに叩きのめしたみたいだ。


「もう撃ってる! もう撃ってるから!? とっ、トリガは装備した火器と同期してるんだ! 一番上が50㎜オートキャノン、二番目が固定機銃だからな!」

「なるほど、ここで撃つんだな――じゃあ行くぞ相棒! 一緒に脱出だ!」

「誰が相棒だ!? た、助けて……!?」


 大体のコツは掴めた。俺は人質兼肉盾兼相棒を連れて機体を旋回。

 その途中に廃車に隠れる白い連中が見えたので別のトリガを引く。今度は胴体の機銃がそいつらを弾き飛ばした。

 邪魔者がいなくなったところでギアを全速にしてペダルを踏んだ――目指すは北だ!


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