126 第二次スティングの戦い(2)
友人からの質問が「これってどんな作品?」だったので
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その時だった、壁から叩きつけるような音がばちばち響く。
機銃だ、室内に積まれた土嚢が嫌な音を立てて散らばる――五十口径か。
そこに続けざまに砲声、塹壕と民家の間が黒く爆ぜた。
爆音が熱を伴って二階までやってくると、続く戦車たちが停まって砲を向けてきて。
「やっべ……!」
まずいと思って引く頃には手遅れだ、背後で壁が吹っ飛ぶ。
ひどい衝撃に撃たれて転ぶが耳は無事だ、アーマーが背中を守ってくれたらしい。
「イチ! 立ちな! それくらいでやられるわけないだろう!?」
すぐに起き上がると外骨格入りの老人が、平気な姿でもう一発射撃していた。
ニクも無事だ。エグゾアーマーの陰で耳を塞いで丸くなってる。
『いちクン!? ニクちゃん!? みんな大丈夫!?』
「ボスの言う通りだから心配するな! くそっ、遠慮ないなほんと!?」
「……耳がきーんってする」
見晴らしのいい一室でボスの依託射撃に付き添うと、また辺り一帯が爆発する。
郊外で戦闘不能になった仲間を盾に、戦車たちが砲撃し続けていた。
隣家も屋根を損ねるほど撃ち砕かれ、最前列の塹壕が砲弾の雨で釘付けだ。
「ひぃぃぃぃぃ……! に、逃げろ! やられちまう!」
「おっ、おい待ってくれ! おいてかないでくれ!」
「くそっ! 死んじまう! 撤退撤退撤退!」
機銃も待ち伏せが予想される場所にしつこく叩きつけてるようで、あぶりだされた義勇兵たちが逃げ出すのが見えた。
「逃げるな馬鹿野郎!」だとか声がしつつも、壊れかけの民家や無事な塹壕からロケット弾が飛んだ。
白煙が立ち込める一方で、物隠れする戦車たちにオレンジ色の爆発が散った。
即席の盾に守られて正しく命中したのはわずかだ、しかし攻撃の手が緩んだのは確かで。
「ったく、根性のない奴らだね!」
「うちらが特別なだけじゃないですかね!」
せめて逃げる背中ぐらいは保証してやろう、次の砲弾を込めた。
次の標的を探そうとするが単眼鏡がない、どこにあるかと探るが。
「あいつら当てて来やがったな! みんな無事か!?」
開放感が改善された扉の方からツーショットがやってきた。
手にはスコープ付きの小銃だ、ストックに『700$』と値札がついてる。
「全員まだ五体満足だよ!」
「オーケー安心した! ストレンジャー、こいつを使え!」
「値札ついてんぞ!?」
「そりゃ戦前の猟銃だからな! ゼロインはしといたぜ! 義勇兵の一部が混乱してる、どうにかしてくるから頑張って抑えてくれ!」
308口径弾入りの紙箱もろとも無茶を押し付けられてしまった。
いや都合がいい、体を小さく見せながら猟銃を構えて――照準を覗く。
味方の機銃や迫撃砲が景色を彩る中、砲を向けたまま西へ回る姿を発見。
「ボス、回り込もうとしてるやつがいます、西に移動中」
「確認した、私の目の前で横っ腹見せるなんていい度胸だ」
スコープ越しにその姿を捉えていると、横で対戦車小銃がまた唸る。
耳に悪い咆哮の先で抜け駆けを試みた一両が停まる、車体横をぶち抜かれてた。
開き切ったハッチから血まみれの兵士が出てくる、十字線にその姿を重ねた。
「砲塔に命中。敵兵出てきました、やります」
「落ち着いて確実に狙いな、当たればいい。首から下だ」
排莢と装填の音を聞かされながら、百五十ほど離れた相手の胸上を狙う。
そいつが背中を向けて飛び降りようとしたところにトリガを絞る。
銃が跳ねた、装填しつつ覗き直せば砲塔から転げ落ちる緑の姿があった。
続けて脱出を試みたもう一人が間近で固まったまま、ぼすっと頭が横から吹っ飛ぶ。
「サンディもついてるみたいですね」
「細かい仕事を任せてるのさ。車長がいたらぶち殺すように命令してある」
そこに外から砲声が二発、民家と穴に隠れていた戦車も発砲を開始する。
混乱に乗じて放った砲が命中した、残骸に隠れていた敵の砲塔が炎上、吹っ飛ぶ。
『一両撃破ァ! 初めての戦果だァ!』
『こちらやかましい一号車と二号車! わしらも砲撃を開始するぞ!』
引き付けた敵をたっぷりいたぶってくれるみたいだ、頼もしい。
無力化した戦車から次へ、後ろから戦車を盾に兵員輸送車が二両突っ込んでくる。
「南から戦車と同時に輸送車二両! 距離200!」
「他は下の奴らの管轄だ、車体正面左側のペリスコープを狙う」
先頭の盾を狙う。車体左、運転手がいるであろう場所に覗き窓がある。
そこで20㎜のおおざっぱな破裂音が響く。
スコープに映る光景の中、青い火花がそこに飛び散ったかと思えば……少し走って戦車が動きを止めた。
「命中、お見事ですボス。敵戦車停止、砲塔だけ動いてます」
追従していた輸送車もそれに気づいて足を緩めた、中からわらわら歩兵が現れる。
その様子に再び銃撃とロケット弾が飛ぶが、なかなか当たらず足止めするだけだ。
「動きが止まったぞ! 固まってやがる!」
「撃て撃て! まとめて吹っ飛ばせ!」
「フーッハッハッハ! 遠慮はいらんぞ、俺様からの贈り物だァ!」
その瞬間、外からガキンッと鈍い発射音が何発も上がった。
ノルベルト混じりの声からして迫撃砲の水平射撃だ、直接砲弾をぶち込まれた哀れな車両から爆炎が上がる。
ささやかな贈り物のせいで戦車は仲間ごと火に包まれて、やがて動きを止めた。
「ほんとに迫撃砲ぶち込みやがったよあいつら。楽しいったらありゃしないね」
「ひどい贈り物もあったもんですね、感動のあまりこんがり焼けてます」
しかし向こうからの攻撃はまだ止まない、どこからの砲撃でお隣の家から屋根が完全に撤去されてしまう。
謎の狙撃手を探しているのか、ここにもびしびしばしばし弾が叩き込まれる。
そろそろここも危なくなってきたが。
『こちらシエラだ! 稜線に隠れて攻撃してるやつがいやがる、こっちじゃ見えないからババァあたりがどうにかしろ!』
無線からルキウス軍曹のご指名が飛んできて、俺たちはすぐ敵を探る。
「了解、向こうに気づかれる前にもう何発か撃っとく!」
ボスが装填してるうちに、地形を頼りに猟銃で地形をまさぐった。
南西方向、後列で荒野の起伏を利用して砲塔だけを出すやつが――あいつだ!
しかももう一両が隣で好き放題にこちらを撃ってた。そのせいで塹壕の殆どが潰されてる。
「ボス、距離だいたい三百、南西寄りの丘に二両隠れてます」
「――さあて、こいつで貫通できるかね?」
ボスも確認して「ショットトラップだ」と言って構えた。
その言葉の意味はともかくやる気らしい、狙いを向けたまま結果を待つ。
そして発射。耳がびりびり痛むが、砲塔の懐が青く光って着弾したのが分かった。
……効いたんだろうか? だけど砲撃の手が止んだのは確かで。
「砲塔下部に命中。攻撃が止みました」
「なら貫通したってことだね、この距離で。どうなってんだいこいつの貫徹力」
「やったんですか」
「ああいう砲塔はいい感じに弾を受け流してくれるからね、逆に利用すれば逸れた弾を車体上部にお届けできるわけさ、ショットトラップって言うんだが……」
ボスの言葉通りに、撃たれた車両が後退していく。
逃すはずもなく更に装填、もう一発、履帯の一部が派手に弾けて座礁する。
異変に気付いた隣の戦車から車長が出てくる、距離は大体300、いけるか。
「車長を確認、やります」
「サンディの射線から外れてるね、やりな。ヘッドショットはなしだ」
距離をあわせて良く狙う――首元に十字を重ねて発砲。
ボルトを引いて見直せば、胸元を押さえて混乱した男が車内に引っ込んでいた。
「胸に命中、引っ込みました」
「やるじゃないか、狙撃の練習でもしてたのかい?」
「上手な人のまねをしただけです」
「一体どんな奴を真似してるのか見てみたいじゃないか」
そうやって手あたり次第戦車を二人で狙い撃ちにしてると、遠くで残りの戦車が急に爆発、炎上し始めた。
それに伴って別の砲声も――見れば、隠れていた戦車が動き出していて。
『二号車から報告! 残骸に隠れる敵を片付けてくるぞ! 歩兵どもは弾を温存しろ!』
『こちら一号車、戦車狩りだァ! 行ってくるぜェ!』
ひどく魔改造された戦車がカモフラージュを弾いて、装輪式の戦車が戦車砲で崩れた民家をぶち壊し、車列を横切っていく。
急に現れたそれにライヒランドの戦車が戸惑うのが目に見えた。
目先の地べたの敵か、突然現れた謎の戦車か、どちらを狙うか迷いを見せ。
『戦場で迷うなんざまだまだじゃなぁ! 一号車、後ろは任せるぞ!』
そのうちにも横に回り込まれて至近距離で発砲、脇腹を抜かれた戦車が高く炎上。
軽やかに通り抜け、先で立ち往生していた戦車に50㎜ロケットの束が一斉発射。
滅茶苦茶に撃ち込まれて砲塔がクビになった、空へ逃げた。
『うおおおおぉぉぉぉこの戦車コントロールくっそムズい!!!!』
反対では砲のおもみにふらつきつつ、身構える敵に装輪戦車が肉薄していた。
機銃も戦車砲もその姿を追いかけるのだが、信じられないスピードで全弾ミスだ。
その状態から、まるで横切るついでとばかりに主砲が低く鳴った。
斜めから射抜かれて戦闘不能に追い込んだようだ、反動で車体がぐらぐらだが。
「やるじゃないかいドワーフども、走りながら当てるとか人間業じゃないね」
『そりゃあドワーフじゃからなぁ!』
『こちら一号車! エルフ砲手が車酔いで吐いた! わしら離脱する!』
「……一両戦闘不能になってませんか、ボス」
「流石のエルフ様も文明の利器には耐えきれなかったみたいだね、後片付けしてくれただけありがたく思おうじゃないか」
目に見える分は片付いた。陣地へ戻る一両を見送りつつも戦場を見渡すと。
「ボス、第二陣が来てます」
猟銃の照準器から敵の姿が映る。
また遠くで横並びの戦車隊が土煙を上げながら走っていた。
さっきと違うのは、とこどころ戦車に歩兵がしがみついてることだ。
随伴する車両も多い、隙間から突出した装輪装甲車がこちらに睨みを利かせてる。
「さっきより多いじゃないかい、あいつら本腰を入れてきたかね?」
硝煙だらけの部屋の中で、ボスが対戦車小銃に弾を込めようとする。
しかし薬室を開けるとすさまじい熱気が立ち込めた。あまりの熱さに銃の姿が揺れるほどには。
それに弾を込めようとしたが「くそっ」とあきらめたらしく。
「はっ、確かに頑丈な銃だが発射時の熱まで気が回らなかったか。銃身がバーベキューできるぐらい温まってやがる」
口にしてることはなんとなくわかる、発射時の熱がこもりすぎてるんだ。
この様子だと機関部まで熱々だ、弾を込めようものなら20㎜の砲弾が炸裂したっておかしくない。
「撃てないってことですか。どうします? 水でもかけますか?」
「水筒ぐらいじゃ焼け石に水だよこいつは、ところであんた鼓膜は大丈夫かい」
「まだまだ元気です、ここに砲弾が落ちてこない限りは――」
確かに水筒いっぱいの水をぶっかけたところで、このクソデカ小銃を冷やしきれるかどうか怪しい。
異常加熱した銃身はそのままに、ひとまず荒野の様子を見るが。
*bBAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANGG!!!*
かすかに伝わる飛翔音、直後に目の前の光景に派手な爆発が上がる。
一度二度じゃなく、そこら中にどんどん砲撃が――迫撃砲だ!
『ほっ、砲撃されてる……!』
「あんたはほんと災いか何か招く体質なんだろうね! 二度と同じセリフ言うんじゃないよ!」
「それだけここに熱心ってことが分かったからいいじゃないですか!?」
しかも車列で停車したやつらが手当たり次第に砲撃を始めて、民家の一階がいよいよリフォーム最終段階だ。
それに乗じて遠くで停車した輸送車両から歩兵が降りる姿も見えた。
更に攻撃に備えて煙幕を放って、白煙を盾にじわじわと迫ってる。
勢いに任せて歩兵を満載した戦車も……ああとにかくクソほど来てやがる!
「うおおおおおおおこれやべーぞ走れ走れ走れ!」
「人間! おめーらも早くこい! こういう時は素直に撤退だ!」
「う、うわあああぁぁぁぁッ!? し、死ぬ! 死ぬってこんなの!」
「もう駄目だ逃げるぞ! 十分役目は果たせたんだ!」
「そうだ逃げろ逃げろ! ということでお先に失礼だ諸君!」
迫撃砲を担いだオークたちに率いられた義勇兵が塹壕から全力疾走している。
幸いなことに空っぽの塹壕にちょうど砲弾が落ちた。分隊一つ分命拾いだ。
『こちら二号車! 気づかれた上に砲弾が切れた! わしらも退くぞ!」
「よくやった! うちらも逃げるからあんたらも死ぬ前に補給してこい!」
ドワーフ戦車も後退した、かと思えばぎゅるっとドリフトをキめて街の奥へ全速前進していく。
「うひゃははははははははっ! 生身で走ってくるなんざ死にてえのかァ!」
「アーバクル、トリガーハッピーになってる場合じゃねえ! 引くぞ!」
「その馬鹿殴って大人しくさせなさい!」
「遊んでる場合じゃないのよこの機関銃馬鹿!」
近くの民家でしばらく機銃が敵を追い回してたが、ヒドラたちも逃げたようだ。
そこに部屋に着弾音、小銃弾が滅茶苦茶に撃ち込まれて人探しを始めていた。
『ひゃぁぁぁぁッ!?』
「……ご主人、逃げないと!」
「こんだけ派手にやりゃここまでしたくなるさ。逃げるよ、弾も忘れずにね」
「挑発成功ですね、じゃあ俺たちも撤退ってことで」
パイプランチャーをバックパックにくくり小銃のスリングもかけて残りの砲弾も持って……ボスは本当にいい荷物持ちを持ったと思う。
ロケット弾はニクに任せてさっさと部屋を飛び出すと。
「ボス! 撤退しなければならないようだな!」
爆発でところどころ損傷した廊下で、オーガの巨体とばったり遭遇した。
抱えた改造迫撃砲は今だ熱のある煙を吐いてる、よほど撃ちまくったんだろう。
「イチ様~、これ当たんないっす」
外骨格に匹敵する姿の後ろからロアベアも来た、こんな時にクソみたいな感想をよこすのはまあいいとしよう。
「ツーショットはどうしたんだい?」
「我々を迎えに来るそうだ、なので――」
爆音着弾音衝撃破片にまみれる中、ボスの問いにノルベルトがニヤっとする。
部屋を出てすぐ目前、崩れかけの壁に迫撃砲を向けると。
「近道を作るぞ!」
ごぉぉぉんっ、と砲の底で派手にぶんなぐりやがった。
さすがは81㎜級だけあって頑丈だ、崩れかけの壁ががらがら欠け崩れ。
「ようお客さん! お迎えに参りました、さあくたばる前にどうぞ!」
外の明るさが見えたと思えば、オーガ一人分の道の下で装甲車が止まっていた。
車高の高さを生かして「飛び乗れ」とばかりに尻を向けて停車しており。
「あんたはいつだっていいタイミングだ! シドの奴らはどうした!?」
「心配すんな、俺たちが最後だ! 見事な腕前だねボスは!」
「銃身が焼けすぎてしばらく撃てなくなっちまったよ! ほんとあいつらは恐ろしいもんばっか作るね!」
地上で待つ車体上面にエグゾアーマーが降り立った。
20㎜小銃の重みに車がぐらつくが、無事に足をつくとその場でしゃがみ込んだ。
さながら砲台ができたような形だ、乗り込めないから張り付いてるようだ。
「デカブツどもは悪いが車の上で大人しくしてくれ、いいな?」
「構わん、むしろ肉の盾になってやろうではないか!」
「私も盾になれっていうのかいブルートフォース!」
ノルベルトもどすんと降りた、流石力強そうな車なだけあって余裕そうだ。
後ろからはぎゅらぎゅらと履帯の音がする――もう近くにきてるか。
「ロアベア、これ持って先降りてろ」
「うちは荷物持ちじゃないっす」
「なんでもしてあげるから!」
だいぶ軽くなった木箱をメイドに押し付けて、パイプランチャーを抜いた。
「言質とったっす~」と軽やかに降りる姿は無視して振り返り。
『いちクン!? どうしたのいきなり!?』
「おいストレンジャー! 何してるんだい!」
「あー、ボス、こういう時は止めるなよ。きっとまたなんかやってくれるさ」
制止と信頼を受けながらも部屋に戻ると、郊外は軍事を思わせる緑で覆われていた。
煙幕を潜り抜け、陣地に弾を牽制で撃ちこみながらも迫る車両に歩兵。
終わりが見えぬほど後続部隊が横並びで進む様は、この世の終わりにすら見える。
「――制圧ッ! 防御陣地はもぬけの殻だ!」
「よし、いいぞ! ここを早急に確保して態勢を整える!」
そんな鋼鉄の群れの中からはみでてきた輸送車両が乗り込んでいた。
兵士が散らばり、現場を指揮しているであろう人間が天井から乗り出していた。
機銃を振って抜け目なく周囲を調べてたようだが、そのせいで目が合う。
「……なっ!? あ、あれは……擲弾兵!? なんでこんなところに……!?」
さすがにこんなところに擲弾兵様がいるなんて思わなかったようだ。
ためらいつつ固定機銃を持ち上げるもの――こっちは既に装填済みのランチャーだ。
「ようこそスティングへ! クソ野郎!」
*bBashm!!!!*
巡り合った相手に向かってぶっ放す。
50㎜ロケットが車体に命中、乗員ごと派手に内側から爆ぜた。
周りの歩兵たちが唖然とするだけの価値はあったらしく、そこに中指と満面の笑みをトッピングして。
「……はっ、はぁぁ……!? て、擲弾兵がいやがるぞ!?」
「た、隊長……!? 隊長が擲弾兵にやられちまったァ!?」
「なななななんでこんなところにいるんだよお前はァァァ!?」
「スティング流の挨拶だ、気に入ったか!? お前らも後でぶっ殺してやる!」
だいぶIQを落とした挑発を残してから、穴捲って全力で逃げた。
すぐ後ろで罵詈雑言とパニックがもたらされたあたり、効果はてきめんだ。
「……ご主人、やったね」
戻るとニクが待っててくれたみたいだ、尻尾を振ってついてきた。
「ストレンジャー、説教は後にするがよくやった。いい気味だ」
「フハハ、去り際におみまいしてやったようだな。良く殺した」
車体上でボスとノルベルトもそう評価してくれた、大成功だな。
ロケット弾一発ほど軽くなった身体で降り立って、後部ハッチから乗り込むと。
「それでは乗客の皆さま、次の戦線へ向かいます! シートベルトは忘れんなよ!」
左右の座席に座ると同時に車が走り出す。
ついでに外からぱぱぱぱぱっ、と射出音がする――煙幕か。
優秀なドライバーに任せて、俺たちは次の戦場へ移動した。
◇
返答
「漢字の読みを覚えるためのノート」
「兵器の試験場(スペイン内戦)」
「つばつけてるだけ」
「性癖ぶっこむだけの紙」




