第07話 なろう樹海の暗闘 後編② -新兵たちの決意とポイント亡者との遭遇-
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なろう樹海最深部の洞窟内での平穏な日々は一ヶ月が経過し、ネコ峰以外のセバ山とソト原は独り立ちする事となった。
知られざる軍曹の悲劇の回想によって『お気入り登録』の危険性を知った新兵たちであったが……?
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セバ山「今まで大変お世話になりましたっ!!」
ソト原「本当にありがとうございましたっ!!」
別れ際、歴戦の古参兵である軍曹に対し何度も頭を下げ、何度も感謝の言葉を口にするセバ山とソト原。
軍曹 「ああ、達者でな。」
感傷的な新兵二人とは対照的に、軍曹の反応は実にあっさりしたものだった。軍曹は洞窟の入り口まで二人を見送ると一緒に見送りに出てきたネコ峰を残し、さっさと洞窟内に引っ込んでしまったのだ。流れ弾に被弾するのを恐れたのだろうか。
ソト原・セバ山「軍曹…」
そのことを少し寂しげに感じるソト原とセバ山。
だがしかしそれも仕方がない。ここは主戦場から遠く離れているといってもやはり戦場。なろう樹海の戦場に休憩などないのだから。
◆◇◇◇◇
【 新兵たちの決意 】
ネコ峰「ところで、軍曹は『お気に入り登録』はダメだって言っていたけど、お前らはどう思う?」
二人が去る前、ネコ峰が問いかけた。
セバ山「うーん……」
ソト原「うーん、正直どうだろう……」
新兵たちは悩んだ。『お気に入り登録機能』はなろう運営様がわざわざ用意してくださっている便利機能。これを使うと非常に便利である事は間違いないのだから……。
特にこれからは琵琶湖の総面積より広いなろう樹海で、それぞれバラバラになる新兵たちはお気に入り登録でもしていないと、もう二度と出会うこともないかもしれないのだ。
それに三人の新兵達はお互いに修羅の道を極めんとする最底辺作者同士なので、お互いの作品をブックマークすることが出来ない。なぜならブックマークを行うことは相手を銃撃することになるからだ。
だがお気に入り登録を使えばお互いの『活動報告』や『新着小説』をタイムリーに把握できるようになる上、被弾もしない。いいことずくめに思えるが……。
一同 「「「 ………… 」」」
……。
そして、最初に口を開いたのはネコ峰だった。
◇◆◇◇◇
ネコ峰「俺は……、お気に入り登録を使った方がいいと思う。いや、使いたいと思うッ!!」
それは決意に満ちた言葉だった。
そしてそれに頷き同調する他の二人っ!
あれほど世話になった軍曹の悲劇の回想を知った上で、あえてそれに反する選択を行う!
それは、この新兵たちが、歴戦の古参兵とは違う道を歩み始めた瞬間だったのかもしれない。
◇◇◆◇◇
< -side- セバ山・ソト原 >
結局お互いに『お気に入り登録』をしてネコ峰と別れた二人。洞窟を旅立ち新たな潜伏場所を探すため、なろう樹海の道無き道を歩む。
セバ山「ソト原はこれから何処に行く予定なんだ?」
ソト原「ああ、俺はしばらくは最初にいた『その他〔その他〕ヶ原』に潜伏しようと思う。あそこはなんでもアリだからな」
セバ山「そうか、俺は『エッセイ〔その他〕渓谷』に篭ろうと思っている」
ソト原「ならしばらくはお隣さんだな」
セバ山「ああ」
そうである。なろう樹海の地理関係は『小説を読もう!』サイトのランキング表示画面と同じとなっているため「エッセイ渓谷」と「その他ジャンルヶ原」はお隣さん同士なのだ。
また『その他ジャンル』はなろう樹海の中でもだいぶ下の方にスクロールしないと見つけることができないぐらいの僻地に所在しているので、あまり人も来ず、修羅の道を目指す最底辺作者の潜伏場所にはうってつけとなっているのであった。
◇◇◇◆◇
【 哀れ、ポイント亡者との遭遇 】
そんな所を歩いている二人の前に、ゾンビの様な虚ろな目をして樹海をさまよう亡者が現れた。
セバ山「あれはっ……、たぶんポイント亡者だ!!」
ポイ亡『あう〜〜、ポイント、ポイントが欲しい〜〜』
ソト原「うわああぁ……」
自我を失ってなお評価ポイントを求める哀れなポイント亡者……。
その存在について、以前に軍曹から話には聞いていたが、実際にその姿を目の当たりにした新兵たちはドン引きしてしまった。
―――――――― ポイント亡者 ――――――――
それはなろう樹海の戦場が生んだ悲劇の被害者であり、同時に加害者でもある。
評価ポイントを得ることの快感が忘れられず当初の志を失い、評価ポイントを求めることだけを目的に戦場を彷徨うという存在。まさに陰の者の逆を行く存在なのだ。
ポイント亡者は主に以下の二点で迷惑な存在とされる。
① 過疎ジャンルにおいて真面目に戦っている戦士たちに迷惑をかける(あえて修羅の道を行く者は別だが)
② そして頻繁に自作品をエタらせる。
ポイ亡『ポイント〜、ポイんっ、ポイんっ〜』
◇
①については言うまでも無いがあえて説明すると、読者人口が少ないジャンルではごくわずかな評価ポイントでも日刊ジャンル別ランキング上位に載ることができるためである。
また、なろう樹海のランキング表示システムでは各ジャンル別ランキングの5位までがランキング一覧に表示されるため、5位以内に入れば読者の目につきやすくアクセス数も増えるため自然とブクマ・評価ポイントが集まってくるのだ。
しかし、これは諸刃の剣ッ!
逆に言えば6位以下に落ちてしまえば、アクセス数がガクッと減るため得られるポイントが減る。ポイ亡はそのことを常に恐れ続ける事となるのだ……。
ポイ亡『ポイ、ポイント〜、ポイ、ポイんっ、れ、レビューもほしい〜〜』
◇
そして②については、あまり知られていない事かもしれないがポイ亡は次々と連載を開始する。連載が増えれば増えるほど得られるポイントが増えるからだ。
しかし、同時に人気が出なかった連載を大量にエタらせる。なぜならポイントが得られないからである。
これはエタらせた連載を評価またはブックマークし、その続きを待っている読者の期待に反する非常に迷惑な行いといえるのだ……。
ポイ亡『ポ、ポ、、、ポイん。』
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セバ山「…………。」
ソト原「…………。」
なろう樹海の戦場はやはり過酷。被弾はやはり危険なのだ。
この哀れなポイント亡者との遭遇によって、セバ山とソト原はあらためて気高く修羅の道を歩んでゆく決意を固めたのだった。
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<< 今回の教訓 >>
ポイント亡者になってはいけない。やはり被弾は危険なのだ。
続くっ!
(ポイんっ、ポイんっポイんっ、ポイんっポイんっ……)