第06話 なろう樹海の暗闘 後編① -お気に入り登録、ダメっ絶対!-
<< 前回のあらすじ >>
なろう樹海最深部の洞窟に到着した一行。
新兵たちは軍曹から指導を受け、なろうの戦場での戦歴確認方法や軍曹の正々堂々とした戦い方を学んだ。
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なろう樹海最深部の洞窟に到着して以降、軍曹と三人の新兵たちはしばらく平穏な日々を過ごしていた。
軍曹たちの前回投稿は、その投稿日から時間が経てば経つほど、新着リストの遥か後方に押しやられ、もはや辿る事も難しい程なろう樹海の奥の奥のどこかに行ってしまったのだ。こうなるともう常人の目に付くことはない。
それでもたまに『小説を読もう!』の検索方面から飛んでくる流れ弾はあったが、それも日に日に減ってきいた。
なぜなら目立ちやすい『検索タグ』や『タイトル』『あらすじ』を付けていない軍曹たちの投稿は、並のフィルター検索では探し当てることが出来ないからだ。
◆◇◇◇◇
そんな平穏な潜伏生活の中でも、軍曹たちは地道に創作活動を続けていた。
どこかマイペースなネコ峰はたまに思いったかのようにノートPCに向かい、ヒューマンドラマ物を途中まで書いてはまた放置するという流れを繰り返し、
推敲が大好きなセバ山は『執筆中小説一覧』にエッセイを書き溜め、毎日それを読み返しては修正することを繰り返し、
これからあえて危険なファンタジー物の執筆に挑もうとしているソト原は、日々そのプロットを練っていた。
なお歴戦の古参兵である軍曹は既に6万9千字に渡る『設定集⑨キョートの建築物(公共施設)上』を書きあげ、次の戦いに向けた準備を整えていた。
そして1か月経ったある日、軍曹は新兵たちを一堂に集めた。
◇◆◇◇◇
軍曹 「お前たち、そろそろ独り立ちの時期だ。この洞窟を出て他の場所へ行け!」
一同 「「「 えっ!!! 」」」
突然の解散命令、新兵たちは戸惑いを隠せない。
セバ山「な、なぜですか! 軍曹! 俺たちにはまだ軍曹に教わりたい事がたくさんあります!」
ネコ峰「そうです!」
確かにそうだろう。新兵たちが不安に思うのも仕方がない。なろう樹海の戦場は過酷を極めるのだ。軍曹のサポート無しでこれからどうやって戦ってゆけというのだろうか。
軍曹 「群れるとスコッパーさんに見つかりやすくなるんだよ」
軍曹 「最近は流れ弾も減ってきたし、もう大丈夫だろう。次の戦いからは自分たちだけで頑張れ」
新兵たちを突き放すような軍曹の言葉だ。しかし、これも戦場の現実なのだ。いつまでも軍曹に頼っては、……いられない。
ネコ峰「けど……、俺に向かって飛んでくる弾は減っていませんっ……、だからもう暫くここに居させてください!」
そうなのだ。不思議な事になぜかネコ峰に向かって飛んでくる弾丸だけは毎日必ず一定数あって、それは前回戦闘の後からもほぼ変わっていないのだ。
それはおそらく『小説を読もう!』の検索方面から飛んできている弾だろうということだけは分かっていたが、その具体的な理由は経験豊富な古参兵である軍曹でも分からなかったのだ。
軍曹 「じゃあ、ネコ峰はしばらく残ってよしっ。セバ山とソト原は今日中にここから出て行くように!」
セバ山・ソト原「「 えー そんな…… 」」
こうしてネコ峰ひとりを残し、一足先にセバ山とソト原は独り立ちする事になったのであった。
◇◇◆◇◇
セバ山「お前ら、別れる前にお互いに『お気に入り登録』しておこうぜ」
ネコ峰「お気に入り登録? ああ、確かにそういうのがある事は知ってたけど使った事なかったな。お気に入り登録すると何か便利な事があるのか?」
なろう運営が樹海で戦う参戦者のために用意してくれている『お気に入り登録機能』だが使っている者は意外と少ない。ネコ峰がその便利さを知らないのも当然と言える。
セバ山「お気に入り登録とは要するに投稿者をフォローする機能らしい」
セバ山「この機能を使うとフォローした相手の『活動報告』や『新着小説』がタイムリーに見れるから便利らしいぜっ!」
なお、セバ山もまだ実際に使った事はない。何故なら基本的に陰に潜み、孤独な戦いを続ける最底辺作者達にはほぼ使う機会がない機能だからだ。
だが、新兵たちのその会話を耳にした軍曹は突然大声を発した!
軍曹 「ダメだお前ら!!『お気に入り登録』は絶対に使ったらダメだ!!」
◇◇◇◆◇
【 『お気に入り登録』ダメ!! ゼッタイっ!! 】
セバ山「軍曹! 一体何故お気に入り登録を使ってはダメなのでしょうか??」
軍曹 「お気に入り登録は危険だからだっ!」
新兵達「「「 ??? 」」」
なろう運営様が用意してくださっている便利機能の一つであるお気に入り登録の一体何が危険なのだろうか? 新兵たちは戸惑った。
軍曹 「俺もかつてお前らみたいに新兵だった時があった……。その時に起きた事なのだが……」
―――――――― 軍曹の回想 ―――――――――
なろう樹海に潜み、あえて修羅の道を極めんとする五人の若武者たち。その中のひとりが若い頃の軍曹(以下、若軍曹)だった。
レキ丸「いつか俺たちがこっそり戦場に出してる作品が誰かに見つかって、それがバベルの塔のてっぺんの作品より面白いって事がバレたら、ポイント至上主義のなろう樹海はひっくりかえるだろうな!(わはは」
若軍曹「それは最高に痛快だろうな!(わはは」
一同 「「「 わははは 」」」
『レキ丸は俺たちのリーダー的なとてもいいやつだった』
『俺たち五人はそれぞれ作品の方向性は違っていたが、いつか修羅の道を極めんとする夢だけは同じだったのだ』
『やがてお前たちと同じように、俺たちにも別れの時がやってきた……』
レキ丸「俺たちズッ友だよなっ!」
一同 「「「「 おうっ!! 」」」」
そして数ヶ月後……
若軍曹「ん? これはっ!! レキ丸の作品が"歴史ジャンルタワー"のてっぺんになってる!!」
『共に修羅の道を極めんとしていたレキ丸が被弾、いや被弾どころじゃなくロケットで大気圏外まで打ち上げられていたのだ』
『それは若干物悲しい事件だった……。しかし、それはそれはでレキ丸の実力が世に認められたという事。いや、世の中がレキ丸にやっと追いついたという事だと思って俺は納得した』
『だが、事件はそれだけでは終わらなかったのだ』
若軍曹「ホラ谷も!? コメ田も!? パニ松まで!!」
『なんと、レキ丸の被弾をきっかけに、俺以外の三人の戦友達は次々と被弾。その作品は次々と世に認められ、それぞれジャンル別ランキングタワーの上位に登ることなってしまったのだ……』
若軍曹「これは……、一体なぜ!?」
『調べてみたところ、レキ丸は他の三人をお気に入り登録していた。おそらく他の三人はそこからスコッパーさんに辿られてしまったのだろう』
『当時の俺は知らなかった、優秀なスコッパーさんは小説を読もう!検索からだけではなく、面白い作品を書いている作者の”作者マイページ”から、その作者が"お気に入り登録"している作者を辿ってくるということをっ!!』
―――――――― 回想おわり ―――――――――
軍曹 「なぜか俺だけはレキ丸をはじめ、他の戦友達にお気に入りユーザー登録されていなかったから助かったが、万が一登録されていたら確実に被弾していただろう」
一同 「「「 …… 」」」
軍曹 「いいかお前達!よく覚えておけ!スコッパーさんが使うのは検索だけではないっ」
軍曹 「スコッパーさんは『面白い話を書いている人は面白い人をフォローしているに違いない』と考え、人と人のつながりを辿って作品をかぎつけてくるのだ!!」
軍曹「これはブックマークについても同じ事が言えるからな!!」
一同 「「「 ……はい。 」」」
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<< 今回の教訓 >>
お気に入り登録は危険だから使うな! ブックマークもな!
スコッパーさんはユーザー同士のつながりを逆手にとって面白い作品をスコップしてくるから気をつけろ!
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続くっ!
なお軍曹自身はお気に入り登録機能を使った事がないので知らないみたいですが、お気に入り登録はブックマークと同様にフォローしているユーザーを第三者に非表示にする事が可能です。
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