第04話 なろう樹海の暗闘 中編 -ジャンル別スコッパーと恐怖の応援ブクマ-
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なろう樹海の深部「その他ジャンルヶ原」に潜伏し、陰の戦いを続ける軍曹と五人の新兵たち。
しかし、新兵の一人であるスコ岡は他人の作品にレビューを書いてしまったことがきっかけで、スコッパーに補足され被弾してしまった。
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軍曹 「スコ岡のやろう……。昇天しちまいやがった……」
あまりにもあっけないスコ岡の脱落に戸惑いを隠せない軍曹と新兵たち。
ジミ林「でも俺はスコ岡の他人の作品を読むという姿勢……、嫌いじゃなかったですっ」
スコ岡の真面目さに同情を禁じ得ないジミ林。
確かに、なろうの戦場には他作者の活動をまったく見ようとせず、あくまでも孤高を貫く底辺作者たちも数多くいる。
その中で、スコ岡は他人の作品を読み、またレビューまで書くという積極的な活動を行なっていたのだ。皮肉なことにその事によって被弾してしまったのだが……。
被弾したスコ岡はもう二度と最底辺作者に戻ることはできないのだ……。
なんとも言えない微妙な空気が、なろう樹海で陰の戦いを続ける参戦者たちを包んでいた。
◆◇◇
そんな時、軍曹と新兵が潜伏している『その他〔その他〕ヶ原』の上空に1機のヘリコプターが近づいてきた。
ネコ峰「軍曹! ヘリが近づいてきます! 一体なんでしょうか?」
軍曹 「あれは、おそらく『ジャンル別スコッパー』が操作するヘリコプターだ」
ネコ峰「ジャンル別スコッパー?」
ネコ峰が知らないのも無理はない。この手の知識は新兵たちが事前に習った教本には載っていない実戦の知識だったからだ。
軍曹 「スコッパーさんにもいくつかの種類がある」
軍曹 「そのなかで『ジャンル別スコッパー』と呼ばれるスコッパーは特定のジャンルを対象として、更新された作品を探すスコッパーさんたちのことだ」
ネコ峰「なるほど、そうだったんですね」
軍曹 「ジャンル別スコッパーには気をつけろ。特に過疎ジャンルをうろつくスコッパーさんは基本的に新着を全部確認していく網羅型のスコッピングスタイルだからな」
ネコ峰「えっ、全部ですか!?」
ネコ峰が驚くのも仕方がない。例えば最大手ジャンルの『ハイファンタジー〔ファンタジー〕』などであれば一日に1500~2000作品もの投稿が行われるためいくら熟練のジャンル別スコッパーといえども、その全ての投稿内容を確認することは不可能に近いのだから。
しかし、軍曹達が現在潜伏中の『その他〔その他〕』ジャンルであれば、その新着は一日に100作品程度。すべての投稿内容を確認する事も不可能ではない……。
だから過疎ジャンルに投稿した作品は必ず、ジャンル別スコッパーの誰かに読まれてしまうのだっ!!
やがて、ジャンル別スコッパーのサーチライトは「その他〔その他〕ヶ原」を塗りつぶすように、そして軍曹と新兵たちの投稿を舐めるように照らしていく……。
◇◆◇
【 事件2:恐怖の『応援ブクマ』 】
軍曹 「くっ、おかしいぞっ、いつもならすぐにジャンル別スコッパーヘリは去っていくはずっ!」
軍曹 「これは……、おそらく誰かの『作品一覧』を熟読されている可能性が高いっ!」
上空でホバリングを続けるジャンル別スコッパーヘリはなかなか去って行かず、そのサーチライトは軍曹達が潜伏しているなろう樹海を照らし続けていた。
明らかに危険な徴候だ!
軍曹 「誰だ、誰の作品が読まれているんだ!?」
その時、
一発の銃声が「その他〔その他〕ヶ原」に鳴り響いた。
……。
一同 「「「「 ジミ林!!! 」」」」
◇◇◆
スコッパーの放った銃弾に倒れた二人目の犠牲者はジミ林だった。
ソト原「なぜ、よりによってジミ林が……?」
ネコ峰「ジミ林の作品はどれこれも、内容も文法も無茶苦茶な混沌系小説ばかりだったはず……。スコッパーさんはなんでそんなクソ小説にブクマを?」
新兵たちの中でもまさかという思いだった。
なぜならジミ林はその努力家な性格こそ仲間内でも評価されていたが、こと作品の出来に関してはまさに底辺の底辺をいく、陰の存在だと考えられていたからだ。
軍曹 「この感じは……。おそらく『応援ブクマ』だろう……」
ソト原「応援ブクマ? 軍曹、『応援ブクマ』とは一体なんですか?」
軍曹 「応援ブクマとはその名の通り、応援の意を込めたスコッパーさんからのブクマだ」
軍曹 「ジミ林の作品がたまたま目についたスコッパーさんは、ジミ林の『作者マイページ』をたどりそこで目にしたのだろう、内容は無茶苦茶だが地道に継続して投稿を続けていたジミ林の作品一覧をなっ!」
ソト原「でも、ジミ林の混沌小説はポイント評価にはとても値するとは思えませんが……」
軍曹 「だから応援ブクマだ。ポイント評価と違って『ブックマークに追加』は心理的ハードルが低く行える。非公開にチェックを入れれば誰かに見られることも無いしな」
ソト原「作品の質はともかく、ジミ林の頑張りはスコッパーさんに見つかってしまったということですね……」
軍曹 「ああ……」
セバ山「確かに、ジミ林は文章力は最底辺だったものの、文字数や投稿数は多かったですけど……、こんな別れ方をするなんてっ、くっ!」
なろう樹海を吹きすさむ無常の風。一同は切なさを感じていた。
<< 今回の教訓 >>
過疎ジャンル投稿でも誰かは必ず見ている! どんな投稿も必ず見られているから油断するな!
―― ここまでの犠牲者 ――
スコ岡 他人の作品をスコップしたことで自分もスコップされ被弾
ジミ林 文章力は無かったが地道に投稿を続けていたため応援ブクマに被弾
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そんなっ……ジミ林までもが……っ、、、