第03話 なろう樹海の暗闘 前編 -古参兵による新兵教育-
<< ここは弾丸や砲弾が飛び交うなろう樹海の戦場 >>
この戦場には毎日幾百人もの新参者が、意気揚々と現れては遥か遠く、神々しくそびえ立つバベルの塔の頂きに登らんとして挑んでいる。
しかしそのほとんどはその塔の足元まで辿り着くこともなく、残弾尽きて死亡するという過酷な戦場。
そんななろう樹海の戦場の片隅で、ある一人の古参兵が誰にも見つかることなく戦っていた。
◆◇◇◇◇◇
彼はなろうの古参兵。
約10年前からなろうの戦場に潜伏しているが、未だに一度も被弾したことがない最底辺作者だ。
多くの参戦者はいつかバベルの塔に登れる日を夢見て、自作品の評価ポイントに一喜一憂しているところだが彼は違う。
逆に、未だ「0PT 0ブクマ」であることを誇っているのだ!
1,490,221人(2019.03.06時点)が参加するなろう樹海の戦場で、未だ誰にも見つからず戦いを続けていられるのは奇跡的と言えるだろう。
陰の者の戦いには始まりも終わりもない。なろう樹海の最深部でじっと誰にも見つからず這いつくばって過ごすことがこの古参兵の戦い方なのだ。
しかしある日、この古参兵は上から新兵教育を押し付けられてしまった。
◇◆◇◇◇◇
軍曹の階級を持つは古参兵は上から押し付けられた5人の新兵たちと合流する。
軍曹 「お前ら! ちゃんと検索タグは外しただろうな!」
新兵達「「「「「 はい!!! 」」」」」
新兵達は威勢よく返事をした。
スコ岡
セバ山
ジミ林
ネコ峰
ソト原
この5名は戦歴こそ短いが未だ被弾経験のない前途ある若者たちだ。
多くの新兵がバベルの塔の頂きを目指す中、あえて修羅の道を極めんとすることを志願する、変わり者の集まり。
軍曹はこの新兵たちを連れて『その他ジャンルヶ原』に潜伏することにした。
◇◇◆◇◇◇
なろう樹海を突き進む一行。遠くには『ジャンル別ランキングタワー』が見えていた。
それを若干羨ましそうに眺める新兵たち……。
軍曹 「羨ましいと思うか?」
軍曹はたまたま隣にいたセバ山に尋ねた。
セバ山「……いえ」
軍曹 「正直に言え。未練があるんだろ?」
セバ山「…………」
このセバ山も最初はアニメ化された有名なろう産作品に吸引され、この戦場にたどり着いた口。そして自分もいずれはそうなりたいと思って志願届けを出し、なろう樹海の戦いに参加し始めたのだ。
しかしなろうの戦場における過酷な戦闘、ランキングシステムによる格差の促進施策などの実態を知って嫌気が差し、セバ山はバベルの塔を目指すのをやめたのだった。
軍曹 「俺もかつては塔へ登ることを目指していた時もあったな」
セバ山「軍曹も?」
軍曹 「ああ、バベルの塔は無理でも過疎ジャンルのジャンル別ランキングタワーならなんとかなるんじゃないかと思っていた時期もあったんだ」
軍曹 「だがポイントに囚われ自分を見失う亡者たちを見てやめた……。ポイントで評価されることを受け入れることは、他人に自分の人生を委ねる様なものだ……」
軍曹 「そんな生き方はクソだっ!俺はポイント0のままでいいっ!!ポイント0のままでいいから気高く生きて、あくまでも自分の書きたい物だけを書く!!」
一同 「「「「「 …………。 」」」」」
決意に満ちた軍曹の言葉に、新兵達は何も言うことができなかった。
◇
そして「その他ジャンルヶ原」に到着した一行は仕込みを終え、塹壕の中に身を潜めてにわかスコッパーたちの襲撃に備えた。
◇◇◇◆◇◇
23:59
軍曹「いよいよだ……」
もうじき訪れる緊張の瞬間。
……。
……。
0:00
軍曹 「始まったぞ! 新着リストスコッパーたちの巡回だ! 伏せろ! 頭を隠せ!」
ネコ峰「軍曹! 俺の作品が新着リストの1ページ目に載ってしまっていますっ!」
軍曹 「なんだと!? なんて運の悪い奴だ!」
どうやらネコ峰の投稿作品がたまたま新着リストの前の方に載ってしまったらしい。
予約投稿機能を使うことで同じ時刻に投稿が行えるが、その中で何番目に表示されるかはランダムであるため仕方が無い。こればかりは運なのだ。
軍曹 「耐えろっ! じきに『1分ズラし投稿者』たちの作品が新着リストを押し流してくれるはずだ!」
そうだ、0時の予約投稿が終わった直後の0:01に作品を投稿することで新着リストの先頭ページに少しでも長く表示させる戦術を取る作者たちは数多く存在する。
また更にその1分ズラし投稿者の戦術を見越して2分ズラし投稿者や5分ズラし投稿者なども存在するのだ。
なろうの主戦場から遠く離れた「その他ジャンルヶ原」にも流れ弾の様な弾丸が飛び交っていた。
◇◇◇◇◆◇
30分後。
軍曹 「ふう、誰もまだ被弾していないみたいだな」
一行は各自の『投稿済み小説-管理ページ』を開き、未だ0ptであることを確認する。
弾丸は飛んできていたが、あくまでも重要なのは被弾である。
ここからは持久戦だ。
◇◇◇◇◇◆
【 事件1:因果応報『スコップする奴はスコップされる』 】
予約投稿から時間が経ち、弾丸も落ち着いた深夜のなろう樹海。このまま何もなく過ぎるかと思われた。が、しかし軍曹が異変に気づいた。
軍曹 「んっ? スコ岡にだけやたら弾丸が飛んできているな」
確かにスコ岡に向かって飛んでくる弾丸だけ減らない。
軍曹 「スコ岡、何か心当たりはあるか?」
スコ岡「いや特には……」
スコ岡「そういえばさっき初めて他作者さんの作品にレビューを投稿しました」
軍曹 「馬鹿野郎!それが原因だ!」
一同 「「「「「なぜですか?」」」」」
なぜレビューを投稿してはいけないのか、新兵たちの中に理解している者はいなかった。
軍曹 「いいか、よく聞け新兵どもっ」
軍曹 「投稿したレビューは『小説を読もう!』のトップページ右下の『みんなの新着レビュー!』に掲載されるんだ!」
スコ岡「そっ、それは確かにそうですが、それの何かいけないことなんですか?」
軍曹 「優秀なスコッパーさんはここのレビューを読むときに、レビューされている作品を読むだけではなく、レビュー投稿者の作品もチェックすることが多いんだ!」
スコ岡「なんと!」
軍曹 「レビューというのは他人の作品をスコップする行為だ。スコッパーさんにとって他のスコッパーがどういう活動をしているか、気にならないはずがないだろ!」
そうだ。他人の作品に『レビューを書く』という行為は陰の者たちにとってあまりにも危険な行為なのだ。これは『感想を書く』という行為も同様だ。少なくともレビューや感想を書かれた作者は、それを書いた相手の作品を見に来ることは確実なのだから。
レビューを書くという判断ミスをおかしたスコ岡に弾丸が殺到する(と言っても所詮30pvぐらいだが)
しかし、その中の一発の弾がスコ岡に命中してしまった。
一同 「「「「「 スコ岡!! 」」」」」
スコ岡、昇天。
<< 今回の教訓 >>
スコップする奴はスコップされる! 他人の作品にレビューや感想は書いてはいけない!
続くっ!
なおこのエッセイはブックマーク・ポイント評価など大歓迎させていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたしますm(_ _)m