第11話 なろう樹海の暗闘 -教えてオリ子さん! 禁断の初晒し体験に挑まんとする軍曹③-
先に言っておきますが、ここではあくまでもガチ専門家であるオリ子さんが作品分析を行う際の手法を書いていますので、一般的な魔界の掲示板の多数を占める『ただ自分の感じた感想を書く』的な作品分析ではありませんのでご了承ください。
あくまでも『科学的アプローチ』を用いた方法を検討しています。
<< 前回までのあらすじ >>
突然なろう樹海最深部の洞窟に現れたオリ子さんはなろう作品分析専門家だった。
そこでネコ峰の新兵教育一貫と銃撃はしないという制限ルールの中で軍曹はオリ子さんに、自身の代表作である『夢のカオリ』の作品分析を行ってもらうことになった……のだが、……大丈夫なのか!?
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<< 第09話の続きっ! >>
オリ子「じゃあ軍曹さん、まずどんな風に作品を分析してほしいか希望を述べてちょうだい」
ネコ峰「えっ?晒しはどんな風に分析してほしいのか予め希望できるのですか?」
オリ子「そうよ」
そうなのである。あまり知られていない事かもしれないが、晒しを行う際にはどのような分析を行って欲しいのかを予め希望する事ができるのである。
なので作品分析はして欲しいが、あまり精神的なダメージは負いたくないなどと都合の良いこと考える戦士の場合などは、あらかじめその希望を伝えればいいのだ。
オリ子「ただ甘口コメントを希望したとしても、辛口コメントが返ってくる可能性は十分にあるから、その点は覚悟しておきなさい」
それもそうなのだ。今回の場合は制限ルールの中で行われる晒し体験なので、作品分析を行うのはあくまでオリ子さん一人だけであるのだが、実際の魔界の掲示板では不特定多数の在野のなろう作品分析官たちが、それぞれ自由に作品分析を行うため、必ずしも戦士側の希望が通る訳ではないのだ。現実は厳しい。
◆◇◇◇◇◇
軍曹 「もちろん、無制限でお願いします!!」
オリ子「分かったわ」
軍曹っ!!!
やはりっ!!この漢っ!!!
あえて修羅の道を極めんとする漢の中の漢の中の漢なのか!!!
その生き様っ!! 尊敬はするっ!!
尊敬はするがっ!!
本当に大丈夫なのだろうか……。
◇◆◇◇◇◇
【 『なろう作品分析』の特徴 】
オリ子「作品分析を行う前に、なろう作品分析が一般書籍の分析と異なる点を説明しておくわね」
ネコ峰「はい!」
オリ子「なろう作品分析の場合、なろう樹海における戦歴記録を合わせて作品分析を行うことが出来ることが特徴よ」
ネコ峰「戦歴記録……、ですか。自分は正直あまり戦歴記録に詳しくないのですが、一体どの様なものがあるのでしょうか?」
そうなのだ。新兵であるネコ峰は戦歴記録としてアクセス解析を見ることぐらいしか知らない。なぜなら修羅の道を極めんと歩んできたネコ峰には評価ポイントやブクマはそもそも0であることが当然なので、それを知ろうとする機会すらなかったのだ。
オリ子「戦歴記録の代表的なものとしてはPV数・ユニークアクセス数・評価ポイント数・ブックマーク数などが挙げられるわ」
オリ子「そしてこれらのデータの特徴は、時間ごとの推移を細かく見ることが出来るという点よ」
ネコ峰「細かく見れると何か良いことがあるんでしょうか?」
オリ子「いい質問ね。じゃあ説明してあげるわ。ここからはちょっと難しくなるから分からなかったら読み飛ばしなさい」
ネコ峰「はいっ!」
――難しいと思ったら読み飛ばしなさいっ!――――
『データ』には『質的データ』と『量的データ』の2つ種類があるわ。
質的データは例えば『面白さ』とか『くだらなさ』などの要するに人によって捉え方が変わる『感じ方』によるデータね。
一方、量的データは『PV数』『評価ポイント』など、誰がいつどう見ても変わらないデータのことよ。
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質的データを比べるのはとても難しいことなの。
例えば『A作品』と『B作品』があった場合、その『どちらがより面白いか』を『感じ方に依存する質的データ』だけを使って科学的根拠に基づいて比べるのはとても難しいことだわ。やろうとしている人はいるけど。
一方で、A作品とB作品の『PV数』や『評価ポイント』や比較することは非常に簡単よ。誰でも出来る。いますぐやればいいと思うわ。
◇◇◇◆◇◇
ただ、あくまでも作品の『面白さ』を表したい場合は、『質的データ』を何らかの方法で『量的データ』に変換するか、
または、『複数のデータを合わせて使う』ことで、データ同士の弱点を相互に補完することで結果の妥当性を保証するための科学的な根拠を上げることが出来るわ。
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『質的データ』を何らかの方法で『量的データ』に変換する方法については、『あっちいけさん』という上級軍曹さんが投稿している以下の作品が参考になるわ。
『拾ったスコップで採掘日誌 ―本気の作品募集中―』
https://ncode.syosetu.com/n1132fg/
この作品では『面白さ』『モチベーション』『ストレス』という3つの質的データを、数字化して『話数』ごとに表示していてとても興味深いわ。
―――――――― 一時中断 ―――――――――――
作)ちょっと待ってっオリ子さん! 無断の他人の作品紹介はまずいのでは!?
オリ子「別にいいんじゃない。けなしている訳ではないんだし」
作)そ、そうですかっ、、、
――――――――― 再開 ――――――――――――
この程度の『自分の感覚だけ』に依存した作品分析は再現性は低く、客観性も無いからね。まあでも魔文系大学生の卒業論文としてなら十分通用するレベルではあると思うわ。
―――――――― 一時中断 ―――――――――――
作)やめてくださいっオリ子さん!!まずいです!!
オリ子「うるさいわね、あっちいってなさい!!」
作)はっはい、、、(ま、まさかこれがやりたかっただけ、、なのでは、、)
――――――――― 再開 ――――――――――――
そこで先程言った『複数のデータ』を合わせて検討する方法を使う方法を取ればいいのよ。
あっちいけさんに一つアドバイスするとしたら、心拍計を使って『自分の感じ方』と『心拍数の変化』を合わせて作品分析を行うといいわ。
心拍計はどこにでも安く売っているし、簡単にエクセルにデータを持っていけるからとても便利よ。
『話数ごと』の『読み始めた時刻・読み終わった時刻』を記録しておけば、その時の自分の心拍数がどうだったのかということが分かるのよ。
あと心拍数に影響する要素は様々あるから出来るだけ静かな部屋で、同じ時間帯・同じ状況でログを取るとさらにいいでしょうね。
もしお金に余裕があるのならサーモグラフィーを導入して、感情の変化による影響が分かりやすく出る『顔面の画像をキャプチャ』したり、さらに脳波を測ったりしてもいいかもしれないわね。
ちなみに心拍計を使う方法は『本しゃぶり』さんという方が『映画鑑賞』を対象として行っていることだから参考になると思うわ。*1
あと、ユチュブル大陸のRTA走者さんたちがよく画面端にハートマークの表示を載せていることからも分かるように、心拍数を感情の表現あるは分析の一部として使うのは普通に行われていて、別に珍しくないことよ。
それをなろう作品分析の際にも使うべきというだけの話よ。
<<長くなりそうなので一時中略>>
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まさかのガチ理系的な作品分析手法を説明し始めてしまったオリ子さん……。
科学的ではありそうだけど……大丈夫なのか……?
しかも勝手に上から目線で他人の作品にアドバイスまでしてしまうというオリ子さんの自由っぷり……。
これは軍曹の代表作『夢のカオリ』の作品分析においても心配が増してしまうところだが……。
(というか、前話のいかにも意味ありげな『卑怯の極み』はもしかしてフィクションではなかったりするのだろうか……、そんなはずは無い……とは思うが。)
<<次回 なろう樹海は『人類と文学の関係性を根底から変えてしまう可能性を秘めた大規模人体実験場』だったことが発覚!?>>
続くっ!
内容一部追記しました(2019.03.12)↓
ユチュブル大陸さんたちがよく画面端にハートマークの表示を載せていることからも分かるように、心拍数を感情の表現あるは分析の一部として使うのは普通に行われていて、別に珍しくないことよ。
それをなろう作品分析の際にも使うべきというだけの話よ。
*1 参考
『本しゃぶり 骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ』:HatenaBlog




