第1章 1幕
短いですがはじまりはじまり!
すれ違いに見た彼女の黒い瞳はとても神秘的だった。
米にするか、パンにするか。それが(家計的な)問題だ。
腹が減っては戦は出来ない。先人はよく言った。
今日までの残り生活費から考えて、今度のバイト給料日まで使える金額に頭を抱えながら腹を鳴らす。
オレ -達朗-は貧乏男子大学生。
親は早いうちに他界。頼れる親戚も居らず日々大学の講義にバイトに明け暮れる毎日だ。
如何にして毎日満腹になるかを考えて生きる日々。
スマホで〝満腹レシピ〟なんかを検索しながら家までの帰路についていた。
時に夜の12時になろうとしていた。
「やっぱりモヤシかな?」
なんて呟きながら夜道を歩く。
今は答える人は誰もいない。
いつもは大学では友達とつるみ、バイトではバイト仲間と一緒だ。寂しくはない。
もう大学生だし?子どもじゃねえし?
…でも誰も待ってない家に帰るのはいつもなんかちょっと寂しい気がしたのは生温い夜風のせいだろうか?
自問自答の中、無事我が家(1ルーム)に着くとバイトで疲れた身体を労わるようにベッドに身を沈める。
「疲れた~」
今日もよく働いた証拠だ。
とりあえず冷蔵庫にある冷や飯をレンジで温めてメシにして風呂入って寝る!
それを目的にさあ動かん!とした時
滅多にならない我が家の呼び鈴がピンポーンと鳴った。
時に12時半になろうとしていた。
めんどくさい。
その一言に尽きる。
一人暮らしに心当たりのない呼び鈴なんて大抵めんどくさい用事だろう。
しかしオレは何故か玄関のドアの前に立った。
覗き穴から外を伺う。
そこには前髪で顔半分を隠してるが綺麗な黒髪黒瞳の小柄な黒ずくめの女が立っていた。
全く知らない女だ。
オレはちょっと女に見惚れつつも何処か不思議な雰囲気を醸し出す女にドアから身を引いた。
と次々の瞬間ドアが真っ二つに裂けた。
悲鳴も出なかった。
ただオレは近づいてくる女を見つめた。
息は忘れた。
女の手には黒い木刀が握られていた。
女は真っ二つに裂けたドアを踏み退け、オレの前に立った。もちろん土足だ。
オレはただ見てるしか出来なかった。
女が黒い木刀を振り上げる。
オレここまでなのかな?
せめて彼女欲しかったな。
なんて考えながら女の黒い片方の瞳を見つめた。
「伏せて下さい」
彼女はオレに言った。
伏せろ?
オレは慌ててその場に伏せた。
「そのままでいて下さい」
彼女は優しい口調で言うとオレの後ろに黒い木刀を振り下ろした。
その時、隣をすれ違いに見た彼女の黒い瞳はとても神秘的だった。
黒い木刀が「切った」場所にはいつからいたのか黒い影がいたらしく、紙をナイフで切った様な乾いた音が鳴り、黒い影は悲鳴も挙げずに真っ二つになり、空気に溶けた。
黒ずくめの小柄な彼女-蘭-との出会いである。
続きにちゃんと彼女を紹介します!
読んで下さりありがとうございます!