寂しいので犬を飼う事を検討してみた
昔、確か小学五年生くらいの頃。
雨の日に子犬を拾った。
タオルで包んで、服の中に隠して家に連れ帰ったけど、速攻で親にバレたっけ……
その後……親の知り合いに、引き取ってもらって……
あの子、どうなったんだろう……
親に言われた言葉がいつまでも頭に残ってる。
「まだ、あんたには無理よ」
◇◆◇
皆様、ゴールデンウィーク……どうお過ごしでしょか。
私は、昼間からひたすら自宅マンションでゲーム三昧です。ハイ。現在もベットに寝転がりながら、テレビ画面を見つめています。
榊原 桜花 二十四歳。現在IT企業でOLヤッテマス。
独身一人暮らし。恋人など当然居ない。
そんな私のスマホには、先程から大学の先輩からのメールが届きまくっている。
彼氏と遊園地で遊んでいる様子の写メが……。
「またか……えーっと……リア充爆発しろ……っと」
適当に返信してスマホをベットに放り投げる。
そしてまたすぐにメール。おのれ、そんなに私のゲームライフが羨ましいのか、邪魔しおってからに。
シャメを拡大表示すると、先輩と彼氏が人気キャラクターの仮装しながら、満面の笑みで写っていた。
なるほど、私に喧嘩売ってるんだな……。
「そのキャラ、ラストに死にますよ……っと」
何がしたいんだ、一体……
私にデートを見せつけおって……
自然と目から汗が溢れて来る
「寂しくないもん……寂しくなんか……」
ヤバい、目から汗が止まらぬ……
ゲーム画面が汗で……滲む……
そしてシャメだけでは飽き足らず、先輩から電話が。
一体なんだ、何がしたいんだ……。
『おーい! 元気? あのね! 今すっごく楽しいから、ちょっと御裾分けしようと思っ』
問答無用で切る。
しかし再び着信。
『ちょっとー、なんで切るのー? 今からちょっと……』
「御裾分けなんて……いいですから……とりあえず一番怖いアトラクションを吐くまで乗り続けて……」
グズグズ鼻声で言い放つ私。
『は? ちょ、なんで泣いてんの? 大丈夫? 何かあった?』
いや、お前のせいだ……もう顔も見たくない……
『いや、あの……ちょ、ちょっと』
『なにー? どうしたのー? 真由美ちゃーん』
後ろで彼氏と思われる男の声が聞こえた。
もう私の事なんて気にせずに楽しんで来い、と言いつつ再び一方的に電話を切る。
「はぁ……リア充爆発しろ……」
呪文を唱えつつ、ベットで横になりながら……ひたすらゲーム。
ぁ、イカン……なんか……眠たくなってきた……。
凄い寂しくて怖い夢を見た。
誰も居ない暗い部屋で……一人で泣いている夢。
窓の外を見れば、楽しそうなカップルがイチャコラしてる。
「いいんだ……私にはゲームがあるから……」
そのままゲームの画面を付けると、先輩から送られて来たシャメが映し出された。
楽しそうに遊園地で遊ぶ先輩。
あぁ、凄い楽しそう。
私も……好きな人とこんな風に遊べたら……
『桜花……桜花……っ』
いや、寂しくなんてない……私にはゲームが……
『桜花……桜花ってば!』
なんだ……誰かが……呼んでる……
「桜花!」
ふぅお! な、なんだ?! 誰じゃ!
そのままベットから跳ね起きる私。目の前にはリア充先輩。
「わしじゃ」
ぁ、あれ、今遊園地に居たんじゃ……
「電話先で泣いてたから……心配になって帰ってきたの。またゲームやってたの?」
え、帰ってきたって……。
時間を確認すると、時刻は午後七時。ゴールデンタイムじゃないっすか。
パレードとか見なくていいの? っていうか彼氏は?
「あぁ、泣いてる後輩なんて放っておけとか言うから、捨ててきた」
うおぉい! 何してんのアンタ! この出会いは人生最高の恋だとか言ってたじゃん!
「あぁ、そうだっけ? まあ、そんな事いいわ」
言いつつ私の隣りに座って、肩を抱き寄せて来る先輩。
ふぉぉ、いい匂いする……シャンプー変えた?
「よしよし……ごめんね、泣いちゃうほど寂しいとは思わなくて……」
いや、泣いてなんかいないッス……目から汗出してただけですから……
「泣いてるじゃない。ねえ、アンタ彼氏とか作る気無いの?」
無いッス……私はゲームが全てですから……
「そんな痛い発言求めてないから。今日私泊まってくから。今夜は飲もうぜ」
ガサっとコンビニ袋を持ち上げる先輩。
中には酒とツマミが大量に入っていた。
「勝手に台所使うわよ。ぁ、アンタ先にシャワー浴びてきな。その間に軽く作っとくから」
ふむぅ……どうでもいいけど……貴方、私を慰めに来たん?
それはそれで頭に来るというか……
私、そんな同情要らないんだから!
「うっさいボケ。今日のアンタに拒否権無いから。従わないなら合コン無理やり引っ張ってくぞ」
ごめんなさい……。
そのまま言われたとおりにシャワー浴びつつ……リビングに戻ってくると、私の大好物である麻婆豆腐が……ふぉぉ、なんだ、この魅惑の香り……!
「じゃあ私もシャワー借りるわ。先に飲んでて。あ、着替えも借りるわよ」
どうぞ、と言いつつ、いただきますと手を合わせて……まず一口麻婆……むむ! 美味い!
もう私先輩と結婚する!
あぁ、やべえ……マジで美味え……ビールが進む……
そのまま一人で飲みつつ三十分後、すっぴんの先輩がパジャマ姿で出てきた。
「おまたー。今日あっついわね……エアコン入れていい?」
いいでござるよ。私も麻婆食ってたら暑くなってきたし。
「ほら、乾杯」
ん? おぅ、と先輩と乾杯し、そのまま350mlの缶ビールを飲み干す。
ふぁ、二本目行こう……麻婆美味いし……幸せでござる……。
「ねね、ちょっとコレみてよ」
ん? なんじゃ……と、先輩が見せてきたのは犬の動画。
なんだ、コレ……なんだっけ……モフモフの……
チャウチャウ?
「違う、ポメラニアンよ。私の元カレが送ってきたのよ。ポメポメ可愛いーっとか言いながら……」
ふーん。で?
「ヨリ戻したいって事でしょ? ポメラニアンで私を釣ろうとしてるのよ。どう思う?」
別に……いいんでない? 可愛いし、ポメポメ。
「そうなんだけどさ……あー、でも可愛いなー。元カレの部分だけ編集して消そうかな……」
マジか、元カレ可哀想。
たしかポメラニアンって……二十万前後するよな……。
「私も飼おうかな……ポメポメ……」
えぇ、先輩もう酔ってる……そんな動画一つで犬飼っちゃうの?
いい加減な気持ちで飼うと可哀想でござるよ。
「アンタ……犬の出産見た事ある?」
な、なにいきなり……
「よくさ、飼ってた犬が死んで……またすぐに犬飼う人の事を悪く言う人いるじゃん。前の犬の事、可哀想とか思わないのか、とかって」
あぁ、まあ……私も思うし……
「犬のお産見たら……そんな事言ってられなくなるわよ」
ど、どういう意味っすか。
「ほら、犬って一度に大体、五、六匹子供産むじゃない。里親も見つからない場合……どうなると思う?」
どうなるって……まあ、殺処分……
【注意:かなり極端な話です。しかし毎年約二万匹が殺処分されています】
「ペットショップで売れ残ったペットも……ブリーダーに引き取られたりするんだけど、どうしてもって時は殺されちゃうわけよ。だからって、どんどん飼えって訳じゃないけど……」
ふむぅ、しかし……何故に今そんなディープな話を……
「と、いう訳で……明日、見にいくわよ。ペットショップでポメポメを!」
ってー! あんた結局それか! 今の話の流れだったら保健所に行くべきだろ!
ネットで里親探してますって言うのも腐る程あるし!
「いいから! 別に今すぐ飼おうってわけじゃないわよ……ちょっと見学よ、見学」
なんのだ……と、そのまま日付が変わるまで飲み続ける。
犬……犬か……まあ、寂しいし……あぁ、でも……私犬とか……飼った事ないし……。
『まだ、あんたには無理よ』
◇◆◇
いつのまにかベットで寝ていた私。
先輩は何処に……と探してみると、ソファーで毛布を被って寝ていた。
むむ、もしかしてベットに寝かせてくれたの先輩?
やべぇ、惚れそうだ。まあ、そんな事はさておき……今何時だ……。
午前九時半
ふむぅ、どうしよ……あ、そういえば……犬見に行くんだっけ……。
先に歯磨いてよ……。
寝ている先輩に気を使いつつ、洗面所で歯磨き。
んー……このマンション、ペット可だけど……いざ飼うとなるとなぁ……
あれ、っていうか私飼う気マンマン……?
待て待て、冷静になれ……こんな超初心者に飼われる犬の気持ちも考えるんだ。
きっと……「他に飼い主居なかったのかよ」とか思われるに違いない……!
そのまま洗顔まで済まし、昨日の麻婆のお返しに朝食を作る。
フフ、といってもトーストに目玉焼きだが。
「おはよぉ……」
パンのいい匂いに釣られたのか、先輩も目を覚ましてくる。
挨拶を返しつつ、皿にトーストと目玉焼きを盛り付ける私。
「ぁ、おいしそう……ちょっと歯磨いてくるわ……」
いってらー、と言いつつテレビを付けてニュースを見ながらパンを齧る。
むむ、また高速道路で渋滞か。
もう帰省ラッシュ始まってるのか。
「あー、飲み過ぎたわ……ねえ、朝シャワー浴びていい?」
いいでござるよ。別に水道代気にしてないでござる。
一人暮らしだし……
そのまま朝食を終え、先輩と交代で私もシャワーを浴びる。
あー、なんだっけ……今日は犬見に行くのか……。
そんなこんなで、午前十一時。
親の御下がりのワンボックスカーでショッピングモールに。
うへぇ、流石ゴールデンウィーク……ひでぇ人……むっちゃ混んでる。
「さーってと……ペットショップは……あそこか」
ふむ、と店内MAPを見ながら歩く私と先輩。
ペットショップにも人が群がっていた。無双決めたら気持ちいだろうなぁ……
「そのゲーム脳なんとかしなさい。さてさて……ポメポメは居るかなぁ……」
ポメポメ……むむっ! 子犬の柴犬が……私を見つめて来る……!
うぅ、ごめんよ……でも君は可愛いから……きっと飼い主が……
とか考えていると、店員が女の子に抱っこさせていた。
おおぅ、抱っこ出来るのか。
先輩も抱っこしてみれば……?
「いやいや、そんな事したら飼いたくなっちゃうでしょ。ダメよ」
いやいや、アンタ何しに来たん。
ん? お、ポメラニアンの子犬居るじゃない。
えーっと……生後二か月……五十万円なり。
「え、えっと……アンタ、抱っこしてみたら?」
ちょっと待て。この人、私に押し付けてきた!
昨日あんだけ犬について熱弁してたのに!
う、うむぅ、でも抱っこしてみたいかも……
もふもふで可愛い……ツブラな瞳……
「抱っこしてみる? ぁ、すみませーん、この子抱っこできます?」
先輩が店員を呼びつける。
駆け寄ってきた店員。むむ、なんか好青年だな……私より年下だろうか。
「はい、大丈夫ですよ。じゃあこちらへどうぞ」
ハイ、とそのままテーブルに座らされて、一枚の紙に住所、氏名……年齢などを書く。
「はい、ありがとうございます。じゃあいくつか質問しますので、正直に答えてほしいワン」
わん……? わ、わん……
「まずは……何かペット飼われてますか?」
飼ってないッス
「ここに来る前に、他のペットショップに行かれました?」
行ってないッス
「動物アレルギーなど、お持ちでは無いですか?」
持ってないッス
「アルコール系の消毒液で消毒して頂きますが、そちらのアレルギーは大丈夫ですか?」
大丈夫っす
「スリーサイズ、好きな男性のタイプは?」
えっと、上から……
って、何聞いてん!
「冗談です。えーっと、じゃあ消毒していただきま……」
と、店員のお兄さんが消毒液を私の手の平に出そうとしたとき……
「ぁ、す、すみません……さっきのポメラニアン……購入されたみたいです……」
な、なにぃ! なんてタイミングで……
「ごめんなさい、他のワンちゃん抱っこされます?」
いや、いいです……と御断りしつつ、席を立つ私。
はぁ……ちょっと抱っこしたかった……。
いや、でも……飼う気ないのに抱っこするのも……どうかと思うし……まあいいか……。
「あの、お姉さん……その……メルアドとか……教えてもらっても……」
あ? 何言ってんだ、この店員……ナンパか!?
ナンパなのか?!
もちろんOKよ! 私寂しいから!
「ありがとうございますっ……また……今度連絡しますね」
うむ、まっておるぞ。っとそのまま、ポメポメを見ただけで終わった。
結局先輩も眺めてるだけだったし……何しに来たのか……。
「あー、可愛いなぁ……ぁ、抱っこ出来た?」
出来なかったッス。なんか先に飼う人が居て……。
「あらら。まあ元気だせよ!」
いや、元々アンタがポメポメ可愛いって言ってたから来ただけであって……。
別に私飼う気……あったかもしれんけど無いから……。
それから数時間、ショッピングモールを彷徨いつつ、遅めの昼食を食べて帰還。
先輩を駅まで送り、私も家に帰った。
急に寂しい。
先輩……今日も泊まっていけば良かったのに……
いっそここに住んでもいいのよ! って言っても……無理か……。
「はぁ……寂しい……」
思わず声に出るくらい寂しい。
彼氏は……正直いらん。
金が無くなりそうだし、メンドくさいし……
「犬か……でもなぁ……寂しいからって……飼われる犬が可哀想……」
私が飼った犬は不幸にならないだろうか……とか考えると……怖い
もしかしたら、すぐに死んじゃうかもしれない……
そうなったら……もう立ち直れぬ……。
そのまま再びシャワーを浴び、あまり腹も減ってないので夕飯はビールのみ。
食生活も偏ってるな……先輩が居ればなぁ……あの人料理も出来るし……。
と、その時メールの着信音が。
むむ、誰じゃ? と確認すると、ペットショップの店員からだった。
何々? えーっと……ポメラニアンの里親……知り合いが探してます……
良かったら、考えてみてください……?
い、いや……ちょっと待て……
完全に私が飼う事になってる! いや、店員さんからしてみたら当然か。
ど、どうしよう……確かに寂しい……でも飼う自信が無い……
実際なんの知識もないし……ネットで調べても……嘘かホントか分からないし……
一緒にポメラニアンの画像も送られてきていた。
真っ白のモフモフの子犬……可愛いけど……こういう犬って繊細そうだし……
それこそ私が飼ったら……すぐに死んじゃいそうで……
でも……寂しい……正直めちゃくちゃ欲しい……
でもポメポメはヌイグルミじゃないんだ……うぅうぅぅ
むむ、再びメール……今度はなんじゃ……
「よかったら今度、そちらにポメラニアンと一緒に、お邪魔しても良いですか?」
はい? な、なに言ってんの……この人……。
こっち一人暮らしの二十代前半よ!
いくら普段からゲーム三昧だからって! その辺りの危機感はちゃんと持ってるんだから!
えっと……お願いします……。
それから数日後、ペットショップの好青年とポメポメが自宅マンションに来た。
もしも? の時の為に、先輩にも同席してもらう。この人は完全にポメラニアン目的だが。
「お邪魔します……って、一人暮らしだったんですか……? え、いや、あの……なんかすいません……」
ぁ、照れた?
可愛い所あるじゃないか、好青年。
そのままリビングに通し、子犬専用の囲いのついたベットを取り出す好青年。
そして……待ちに待ったポメポメが……
出てきた……ゲージから……
怯えるように震えながら、恐る恐るベットへと降り立つ、真っ白なポメラニアン。
ふわふわの毛、くりくりの瞳、時折首を傾げながら「お前ダレ?」と見つめてくる。
「お姉さんの事ジっと見てますね」
むむ、そうなのか? 確かに目合いまくってるけど……。
先輩が羨ましそうに、私の肩を撫でて来る。
「いいなー……可愛いなー……たまに会いに来ていい?」
いや、飼うって決めたわけじゃ……
と、その時、ポメポメが震える体でベットの枠を乗り越え、私の膝に突撃してくる。
え、え?
そのまま膝の上に寝転がるポメポメ。
な、なんだ、これは……せ、戦略か?!
私に飼わせようとする……好青年の……
「初見でここまで気に入られるって、そうそう無いですよ。どうですか? お姉さん」
いや、だから私……飼い方とか全然分からないし……っ
「僕が伝授しましょう。分からない事は聞いてください」
うっ……いや、あの……予算的に……
「アンタ、あんないい会社に入ってて、しかも一人暮らしで……普段からゲーム三昧なんだから金溜まってるでしょ」
うっ……し、しかし……
言い訳が思いつかない。
も、もう飼うしかないのか……と思った時、ポメポメが私の膝から落ちそうに……
思わず手で抱きとめる。
ふぁっ……な、なんだ……この……感覚
なんか……怖い……
すぐに死んでしまいそうで……
『まだ、あんたには無理よ』
「お姉さん……なんで泣いてるんですか?」
え? な、泣いてなんか……ぁ、ホントだ、泣いてるわ、私……
なんで泣いてるんだろ……
あぁ、そうか……なんか……可愛いすぎて……
「アンタ、寂しい寂しい言ってたでしょ。いい加減素直になったら?」
素直にって……私はただ、この子を不幸にしてしまいそうで……
「いやぁ、間違いなく……この子は幸せになると思いますよ……お姉さん……凄く優しいから……」
や、優しくなんてないぞ!?
ダーク○ウルで侵入しまくってるし!
「だからそのゲーム脳なんとかしなさいよ。大丈夫よ、アンタなら」
そ、そうですか?
ほんとに大丈夫?
「大丈夫ですよ、実は僕の家近いので……何かあったらすぐに駆け付けれます」
うぅ、そうなのか……それは助かるけど……
で、でも……でも……
中々決心出来ない私にイラっとしたのか、ポメラニアンが私の親指に噛みついてくる。
勿論全然痛くない。甘噛み程度だ。
うぅ、可愛い……
「じゃあこうしましょう。お姉さん、一日だけ、この子と一緒に暮らしてみてください。明日のお昼頃にまた迎えに来ますから。その時に返事聞かせてください」
ふむ……まあいいけど……。
エサとかどうするの?
「もう用意しておきました。子犬の頃は、一回の量を少なくして……一日三回くらいあげてください。ウンチを見ながら調整するのが基本ですので。覚えておいてくださいね」
ふむぅ……了解した。
「あと、人間の食べ物は絶対に与えないでください。御菓子とか以ての外ですからね」
そ、そうなの?
結構あげてる人見るけど……
「子犬の時期から与えていると、好き嫌いが激しくなるコトもあるので……あとそれから……」
そのまま小一時間、ポメラニアンを飼う為の授業を受ける私。
あれ? これ、このまま飼う流れじゃ……
「こんな所ですかね。じゃあお姉さん。明日の昼にまた迎えに来ますので」
わかったでござる……。
そのまま好青年は去って行った。
いい子だなー……
「アンタ、やるじゃない。あの子完全にホの字よ」
ほのじ?
「アンタに惚れてるって事よ」
な、なななんだって?!
そんなバカな!
私に惚れる男子が此の世に居るのか?!
「どこまで自信ないのよ、アンタ……まあ、私も帰るから。大切にしてあげな」
う、うむ。
そのまま先輩も去っていき、ポメポメをひとまず専用ベットに戻す。
そのまま目線を合わせるように寝そべり、話しかけてみた。
「私と一緒に……暮らしてみる?」
首を傾げるポメポメ……あぁ、可愛い……
そうだ、エサ……あげたほうが良いのかな。
えっと……量を少な目に……一日三回だっけ……。
エサ入れに軽くドックフードらしき物を入れ、ポメポメの前に出してみる。
お、食べた……美味しそうに食べてる……
あぁ、なんか……見つめてたら……眠くなってきた。
『お姉さん、ありがとう。あの時助けてくれて……』
なんだっけ……それ……
『雨の日に……僕の事守ってくれたよね』
あぁ、そんな事……あったっけ……でも結局親にダメって言われて……
『でも嬉しかったよ。僕はいい飼い主に引き取られたから』
そうなんだ……良かった
『だから、今度はその子を幸せにしてあげてね。じゃあ、よろしく』
うん……頑張ってみるよ