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この世界でいう勇者になるそうです

主人公ちょっとおバカかも。

ライリーという人に見張られ、槍を構えられながら城の中に入ると、教会にいる神父のような格好をしたお爺さんが走ってきた。

ものすごく顔色が悪い。かなりご長寿みたいだ。



「ライリー様!ライリー様!その方に、槍を向けては、なりませぬ!」



「神官殿?……なぜですか?」



おしいっ。神父じゃなくて神官だったか。

味方かな?この爺さん。



「その方は……その方は勇者の素質がありましゅ!」



あ、噛んだ。

ドンマイ、爺さん。



「……勇、者?……あ、あの、伝説の?……え、あ、お、王様、王様!キサマも、あ、ちがうか、貴方様もついてきてください!」



え、いきなり敬語?っていうか爺さんそのまま置いてくの?

この人肝心なとこで抜けてるなぁ。

あれ?待てよ……。俺が……勇者だって?

いやいや、いくら異世界だからって俺みたいな村人ポジ的性格のやつが勇者とか伝説とかないない。



とか思いながらライリーさんの後を追っていた時期が俺にもありました。



「城兵の、ライリーです。王にお伝えすることがございます」



城の一番奥の大きな扉がライリーさんのノックでひとりでに開き、赤くて大きな椅子に腰掛けている、白髭の長いお爺さんがこちらを見ている。



「失礼します」



ライリーさんが深く頭を下げた。つられて俺も頭を下げる。



「ライリーが来るとは、珍しいのう。どうした、用件を申せ」



「はっ。王様、ついに来ました。神官殿から仰せつかり、勇者の素質がある者を連れてきました。」



「……ほう。勇者とな」



この人が、王……?なんか、見覚えがあるな。

ほんとに最近見たような……。

あ。あああああ!!神官の爺さんだ!瓜二つだよ重ねたら完全に一致するよこれ。もしかして、双子?というか王と神官って差ありすぎじゃないか。神官の方がボケてるのかな?格下げされたのかな?



「お主、初対面のじじいに向かってボケてるだの格下げだの、随分言ってくれるな。神官はわしの弟じゃぞ」



あ、じじいなのは自覚あるんだ。伊達に王やってないなこの爺さん。そしてやはり弟なのかあの神官の爺さん。

……って、え……?今、この爺さん……



「心の読めるじじいであり、この国の王、レサイアじゃが、何か?」



えええうわあああ意外とすごかった!!

じじいとか言ってすみません!

ていうかライリーさん慣れすぎてない!?

無言でこっち見てるだけだし、これが普通なのこの城!?



「お主という奴は口がきけんのか。さっきからわしが一人で喋っておるではないか」



あ、はい。おっしゃる通りです。

コミュ症とか言ってらんねえ、頑張れ、俺。



「……失礼、しました。初めましてレサイア王。俺はアヤト、何故かこの城の庭に落ちました。ここは、俺のいた世界ではないのですか」



うーん、今自分で言って気づいたけど、情報少ないな。こんな説明しかできないのか。

レサイア王は、髭を触りながら俺を見ている。



「……この世界とお主のいた世界が、何らかの力により繋がったと言えばお主にもわかるか。何も知らぬようじゃ、この先皆が困るでな、これからこの世界のことやお主に与えられた使命をわしが話してやろう。――ただし、その代わり敬語をやめろ。今さらな感じが拭えぬ、お主は敬うのに慣れていないようじゃからな」



うっ……。何も言い返せない。

いいや、こうなったら意地でもタメ口を貫いちゃえ。

あ、この考えも読まれてるのか。黙ろう。



「……わかった。続きを話してくれ」



王様は、にっと笑うと髭を触るのをやめた。



「ここは、ワネッカ王国じゃ。この城の名もワネッカ城。わしがレサイア王で、そこにいるのが城兵のライリー。ここまでいいかの?」



俺は頷いた。



「お主が先ほど会った長髪の娘が、わしの娘アリシア王女。隣にいた幼い少女がその従者リビエッタ」



この爺さんにはもう俺の行動が伝わっていたのか。

国、やべー。



「その昔、この国には勇敢な男がおった。魔物を倒し、人々を守る。初代勇者じゃ。しかし、初代の王の記録によると勇者が魔王を倒しても平和は訪れなかったそうじゃ。百年ごとに魔王が復活する。その再生力に抗う術はなかった。やがて初代勇者も歳をとり、戦う力を失った。……じゃが、初代勇者は死ぬ前に、異世界から勇者を召喚すると言いだした。自分の命と引き換えに、次の勇者にこの国を託したのじゃ。その方法も、お主が選ばれた理由も分かってはおらぬが……」



そこまで言うと、王が俺の目を見据えてきた。



「お主は、勇者じゃ。いや、勇者にならなければならぬ。魔王を倒し、歴代の勇者のように、活躍してほしい。頼む、やってくれぬか」



めっちゃくちゃファンタジーだな……。

俺が……勇者か。元の世界に戻る方法はなさそうだな。

でも……これ俺はもう断れない立場だしなんか次の勇者来るまで戦いづくめなんだよな……。

いや、でも。



「……。わかった。やってやるよ」



俺は笑った。

どうせ帰っても下駄箱掃除だ。

将来の夢とかないし、やりたいことって言ったらファンタジーな世界に行きたいとかそんなんだったからな。

死ぬまで生きてやる。



ただ、家族や友達にもう会えないのが辛いが……。

帰れないのは、先代勇者のせいだし、俺は悪くないしいい加減じゃない!よし!この話終わり!



「おお、やってくれるか!準備は大臣たちにさせよう。お主はまず、王女の加護を受け、仲間を選び、装備を整えよ。歴代の勇者のようにな。ライリー、勇者を王女の元へ連れていけ」



「はっ。失礼します」



ライリーさんに連れられ、俺は王の部屋を出た。

にしても王様、伝説をなぞれるのが嬉しいって顔してたな。

まあ誰だって楽しいだろうな。

自分が死ぬんじゃないし。



俺はネガティブじゃない。

死にたいわけじゃない。

生きたい。

頑張る理由はそれだけでいい。



唐突すぎて現実味がないし、むしろこれは夢かもしれないけど、

俺は生きてやるぞ!!絶対!!



で、王女は何をしてくれるんだろうな。

王女の加護……あなたなら何をされたいですか?

私は手料理を振る舞われたいです。

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