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23/俺が番長!?

瀬戸の上目使いにぼろ負けし、結局玄関まで様子を見に来てしまったわけなのだが、如何せん相手の数を数えてみると、なんと七人。

この数で仕返しだと?やめてくれよ頼むから。俺泣いちゃうよ?

っていうか、問題は数が多いってことじゃない。七人だというところだ。

無駄にあの時と同じ人数なだけに、随分と彼方が殺気だってしまっている。

まじで無駄だよ。帰ってよ。

さーて、どうしたものかな。

なんて、やることなんて決まってるさ。


「奴らに気付かれないように逃げるぞ」


俺がそう言うと、神谷が俺を制止し、指を指した。


「待って。環さんがいるわよ」


神谷が指をさしている方向を見ると、環さんがお怒りの様子で芹沢に怒鳴っている。

なんて言っているかはよくわからない。

あーあー、なんか頭下げてるし……あれ?ちょっ、芹沢?何やってんの!?


「えぇ!?土下座!?」


俺の心の叫びを、彼方が口にしてくれた。

いきなり芹沢が環さんに向かって土下座しだしたのだ。続いて他の六人も一斉に土下座する。

事の進行がよくわからない。

昨日のあのふざけた態度はどこにいった?

なぜ昨日と違って環さんの怒鳴り声を黙って土下座して聞いている?

っていうか何?目的俺じゃないの?

それなら、もう帰っていい?


環さんが大きく肩を上下(多分大きな溜め息)させたあと、玄関に戻ってきてなにやら手近な人になにやら質問している様子。


「なにしてるんだ?」


「誰かを探してるみてーだな」


俺の質問に、彼方が答えた。

まぁ確かにそう言われてみればそんな感じもするな。

俺は、その状況を見ながらただただ俺じゃないことを祈る。

そして、何故だか環さんだけでなく玄関にいる生徒が誰かを探し始めた。意味が分からない。

どんだけみんな優しいんだよ。



4人でその不可解な様子を眺めていると、後ろから声がかかった。


「藤宮蓮さんって知ってますか?」


一瞬四人の体が強張る。


「いや、知らない」


条件反射で俺が答える。他の三人がえぇ!?みたいな顔をしているが気にするわけ無い。


「そうですか」


「うん」


彼女が律儀にもさん付けで探していたのは、藤宮蓮。

=して俺なわけなのだが……こんなに人がいるのに誰一人俺の顔知らないんだね。


「見つけたら、逃げるように言ってください。芹沢って怖い人が探してるみたいなので」


「…」


「どうしました?」


なんって優しいんだろうこの人…!

見ず知らずの人を心配するなんて、相当心の優しい人に違いない。


「あの?」


「あ…うん。見つけたら伝えておく」


そしてお言葉に甘えてさっさと逃げさせていただきます。

そして、他の三人に帰るぞと手で合図をした


「あ……」


所で、本日二度目の失態に気がついた。

俺たちが帰るためには、どう頑張っても玄関を通るしかないわけで、玄関の外には未だに芹沢がいて、更に俺の靴箱のところに環さんがはっているという八方塞がりなわけ。


「どうした蓮?……あ」


彼方、お前も気付いたか。


「何してるのよ。……あ」


お、神谷。

君も気がついたみたいだな。


「早く帰ろうよみんな〜。置いてくよ〜」


なにしてんだ瀬戸!俺の心の叫びを無視してさっさと下駄箱に向かう瀬戸。

待て、瀬戸!


「待て、瀬戸!」


あたりに静寂が訪れ、みんなが一斉に俺を見る。そして、神谷が俺のスネを蹴った…。

マジで痛い………じゃなくて、やっちまったぁ!心の中で叫んだつもりが、まさか口からでてしまうとは……。

神谷が怒るのも無理はない。

でも蹴るのはなしでしょ。

環さんを見ると、こっちを見てニヤッとすると手で来いと招いている。

おいでとかそんななまやさしいものじゃない。

有無を言わさない命令形。


俺は彼方たちに

「ここにいろ」と一言残して、渋々出て行った。

もちろん行きたくないオーラを体全体にまとっている。


「なんか用?」


「芹沢があんたに話があるって」


「俺はないんだけど」


「そんなに警戒しなくてもいいって。悪い話じゃないから」


仕返しに来たんじゃないのか?でも興味がない。


「興味ないね」


「…」


俺の態度に、何故か環さんが顔を俯かせた。

あー、もー!


「聞くだけな」


環さんはニヤッとすると俺の手を引いて歩き出した。

はめられた…。

俺は腹いせに環さんの手を振りほどき、先頭を切って芹沢と対峙した。




***




………はてっ?

これは話し合いをする態度なのだろうか?

俺と環さんが現れた瞬間、芹沢+他6人が深々と頭を下げ始めた。


「先日はどうも、すいませんでした!」

「「すいませんでした!!」」


なにこれ?どいうこと?


「今日は、お願いがあって参りました」


おいおい、勝手に話を進めないでくれ。


「今日は、俺らを舎弟にしていただきたく、参上しました」


「………はぁ?誰の?」


「藤宮さんのですよ。いやぁ、あの強さにはおそれいりました。自分で言うのもなんですが、俺は喧嘩に関しては無敗だったのですが……。おみそれしました!」


「あ…そ」


「そこで、蓮さんには俺らのヘッドになっていただきたく、お訪ねしました!」


はぁ?なんで俺が。


「嫌だ」


そうそう、嫌ですよ。

………ん?声のした方を見ると、彼方と神谷と瀬戸が立っていた。

しかもかなり怖い顔で。特に神谷の形相は酷い。もはやクールビューティーのかけらも残らず、芹沢の存在すら否定するような顔だ。

神谷、女の子がそんな顔してていいのか?

仮にも君は美人で人気があるというのに、そんなんでいいのか?ファンが減るぞ?

っていうか、そんな顔してたらこの7人のお客様が機嫌を損ねてしまうじゃありませんか。


「あん?なんだてめ……」


ほらきた…!

ってなんで途中で動き止まってるわけ?


「もしや……あなた方は藤宮さんのご友人の方ですか!?」


何それ!?

まさかの切り返し方に、目が点になり、口が半開きになる三人。

無言を肯定ととったのか、芹沢が勝手に話を進めていく。


「いや、そうとは知らず…すいませんでした!実は、先日藤宮さんにボコボコにされまして、その強さといったら…まさに鬼神!俺は…いや俺らは!この人についていくって決めたんです!]


「や、勝手に決められてもね」


「いや、さっき、環さんにお許しをいただいたんですが…」


「はぁ?」


また環さんか…。こいつ、どこまで俺を振り回せば気がすむんだこのやろー。昨日今日と少ししおらしかったからって完全に油断しちまったよ。

っていうか、なんで俺の意思関係なしでこう話が進んでしまうんだろう。

俺は、平々凡々な毎日を送りたいと常日頃から思っていたのに…。こんなやつらとつるんでしまったら最後、俺の目指す日常は確実に砕け散るに違いない。

やべ、何が何でも阻止しなければ!


「無理無理。俺、お前嫌いだから」


「や、あんたの好き嫌いの問題じゃないし」


と、環さん。君さ、昨日殴られてたよね?それはもういいわけ?


「なんでそんなに芹沢に入れ込む?」


環さんは少しきょとんとした顔をしたあと、俺に指でちょいちょいとしので、俺は環さんの顔に耳を近づける。


「確かにふざけた話だよ。でも、よく考えてみろ。芹沢があんたの舎弟になるってことは、つまりパシリになるってことなんだよ。それに芹沢はあんたに憧れてるけど恐れてもいる。だからあんたには逆らわないし、あんたの友達にも逆らわない」


あーそう。つまりさ、環さん、あんたはただパシリがほしいんだな。

そんな理由で俺を利用しないで!


「だからさ、ここは1つ頼まれろよ」


「あんた、性格悪いな」


「よく言われる」


よく言われてるんだ。

俺が大きな溜息をつき、環さんに呆れていると、芹沢の仲間Aが声を上げた。


「あ、芹沢さん!そろそろ番町会議の時間です!」


ば、番町会議って…。分かりやす。


「ん何ィ!?もうそんな時間か!すいません、藤宮さん。今隣町の高校と抗争中でして…何かアドバイスとかありますか?」


抗争!?おいおいおい、何本格的にヤクザみたいなことやってんの!?っていうか、学生の本分は学業だよ?って、俺も人のこと言えない!


「話し合いで片付けなさい」


おっと、ここで今まで黙っていた神谷が参戦。


「え…?」


目が点になっている芹沢。


「分かったの?分からないの?」


口調は割りと優しい…が、目が半端ななく怖い。芹沢が口をパクパクしてこっちをちらちら見てくる。

うん、言いたいことは分かるよ。

でも怖いから何もいえないんだろ?心配するな、俺もだから。


「返事は?」


ちょ、もうやめてあげて!芹沢なみだ目になってるから!


「わ、分かったらもう行けよ」


沈黙を破ったのは、彼方だった。随分平静を装って言ったみたいだが、一発目で噛んでいるので平静じゃないことは明らか。

しかも、横目で神谷の顔色を伺っている。


「よ…よし。で、できるだけ話し合いでか、片付けるぞ。おら…い、いくぞ!」


芹沢の一声で、やっと他の6人も動き出し、バイクにまたがった。

そして、ブンブンをエンジンをふかし、動き出そうとする。

すると。


「うるさい!」


神谷の一喝ですぐにおとなしくなった芹沢軍団。エンジン音をださないように非常にスローペースで去って行った。


「なんだったんだろーな」


芹沢軍団の去った方を見て、彼方が呟いた。


「なんなんだろうね」


瀬戸が彼方に続いて呟く。

更に続いて、溜息をこぼしながら神谷がいとこと。


「あー、怖かった…」


俺たち神谷を除く三人は、お互い見合わせた。

口には出さなかったけれど、多分みんな言いたいことは一緒だろう。


1000%神谷の方が怖い。


そう、1000%ね。





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