1/ぷろろーぐ
沢山ある作品の中から、私の小説に目を留めていただき、ありがとうございます!
なにぶん初心者なので、誤字脱字、表現や言葉がおかしかったりするかもしれませんが、長い目で見てくれるとありがたいです。
最初だけシリアスですが、すぐにコメディーになりますので気軽に読んで下さい!
ではでは、小説「姫と騎士と彼女と俺と」をお楽しみください。
ある夏の晴れた昼のこと。
「姉ちゃん! 早く早く〜! おいてっちゃうぞ〜!!」
はしゃぎながら走る子供。その少し後ろには姉と呼ばれた女性が息を切らせている。その女性は制服に身を包んでいて、どうやら女子高生のようだ。
「はぁ、はぁ、待って蓮ちゃん! 蓮ちゃん、足が速くなったね」
「えへへっ、ここまでおいで〜!」
蓮と呼ばれた子は、誉められたことに照れながら、目の前の横断歩道を走った。そこへ凄いスピードで大きな何かが迫る。姉と呼ばれた女性は目を見開き、叫んだ。
「蓮ちゃん、危ない!!!」
「え?」
トラックが蓮と呼ばれた少年に迫っていた――
キキーッと耳障りな音が辺りに響く。体が宙に浮き、地面に一回バウンドして地に落ちた。辺りに静寂が訪れ、次の瞬間騒ぎ出しす。
「おい! 大丈夫か! しっかりしろ!」
「この子は大丈夫だ!」
「そっちの女子高生は!?」
「やべぇ、すごい血が出てる…………」
「誰か! 救急車を呼んでくれ!」
「助かるのかしら、あの子」
ピーポーピーポーピーポー
どこからか救急車の音が聞こえてきた。
少年には何が起きたのか分からなかった――
***
二日後の雨の日のこと。
壁が黒と白の幕で覆われている不思議な雰囲気の広い空間。ただ一つの壁だけに大きな写真が飾られていて、写真の前には線香があり、周りにはたくさんの花束が置いてある。部屋の中央には、大きな箱。
なんでみんな泣いてるの?
みんな黒い服を着てる。
どうして箱の中にお姉ちゃんがいるの?
ねぇ、お姉ちゃん。
起きてよ。
もうお昼だよ?
起きて僕と遊んでよ。
棺の中の人物をさすり続ける少年。
「お母さん。どうして姉ちゃんは起きないの?」
「千里は死んだのよ」
母の声はとても無気力で、生気がこもっていない。
「……嘘だ。寝てるだけだよ。そのうち」
「あなたの……! あなたのせいなのよ! 返して……千里を返してよ!!!」
ヒステリックな女性の声が響く。女性の夫と思われる人物が泣き崩れる女性の肩を抱いてその場を離れた。周りからはヒソヒソ話が聞こえる。
「あの子を助けて千里ちゃんはトラックにひかれたんですって……」
「なにあの子の目、不気味だわ」
ヒソヒソ話は耳には入っても頭には入らなかった。
少年は、もう気付いていた。
ただ、認めたくなかったんだ。
姉がこの世を去ったことも。自分のせいでそうなってしまったことも。
その五日後、少年は孤児院に預けられた。
その時にお母さんに言われた一言が、のちに忘れられない言葉となる。
「この人殺し」
母の目は、まるで汚いものを見るかのような冷たい目だった。
***
「うわぁあぁぁ!!!」
ベッドから飛び上がるように青年が起き上がる。
「……夢か」
そっか、今日は7月9日か……。一応周りを見渡すが、見慣れた自分の部屋だ。殺風景で狭い部屋だが、きちんと整理整頓されている。時計の針が5時52分を指していた。あと2時間寝かせてほしかったな。
今日は7月9日。7年前。姉さんがこの世を去った日。出来れば墓参りに行きたいのだけれど、母も父も7年前にこの孤児院に俺を預けてから、連絡が取れなくなってしまった。それに、墓は多分前に住んでいたところ近くだろうが、ここから前に住んでいたところは随分遠いと聞かされている。飛行機を使わなければ行けない距離らしいのだが、親戚の電話番号も分からないし、孤児である俺が院長にムリを言って交通費をだしてもらうのは心苦しい。バイトをするという手もあったが、先生は家事などで大忙しで、俺は子供たちの遊び相手というポジションゆえ、断念した。
よって、墓参りには行けない。けど、姉ちゃんの命日はこの孤児院の裏にある小さな山で姉ちゃんに一年間のことを報告する。これが俺なりのお墓参り。俺は立ち上がり、カーテンを勢い良くあける。
「いい天気だ」
太陽がさんさんと降り注いでいて、思わず外に出て遊びたくなるほど快晴だ。そろそろ6時。先生も起きてくるだろう。窓を開けると、気持ちのいい風が部屋の中に入ってきた。
「ん?」
孤児院の入り口に見慣れない車が止まっている。先生のものではない。なんだろう? 客か? かなり立派な車のようだけど。一人で思考をめぐらせていると、突然ドアが開いた。
「蓮。お客様が来てるわよ」
院長だった。
「俺に? 何のよう? 俺なんかした?」
「来てからのお楽しみ。いい話よ」
色々と疑問が浮き上がってくる。俺に客なんてこの孤児院に来てから初めてなのだ。なにかやましいことをした覚えはないし、院長は嘘をつかない人だ。その院長がいい話と言っているんだからいい話なのだろう。俺は院長について階段を降り、応接室に向かう。
「お待たせしました。浅田蓮を連れてきました」
応接室には、若い夫婦と思われる二人がいた。男性の方は、知的で、ダンディーという言葉がとても似合う。女性は、髪は茶色いセミロングで、風が吹くたびに髪がなびいて、とても綺麗だ。目はぱっちりとした二重で、美人というより可愛い女性だ。俺が女性に見とれていると、ふいに男性に話しかけられた。
「君が、浅田蓮君だね?」
「あぁ。そうだけど」
「君を、養子にしたいんだ」
「はい? 用紙? 酔うし?」
「いや、養子」
「えェェェ!?」
俺はこの7年間で一番の大声で叫んだ。
楽しんで頂けましたか?これからも更新していくので暇があれば、たまに読んで楽しんで頂けたら、幸いです。




