はずだった
その日は、穏やかなはずだった。
何事もなく、いつも通りに流れていくはずの日常が、急に変わったのは、とある地震が原因だった。
「緊急地震速報、緊急地震速報」
けたたましいアラーム音とともに、放送が流れる。
「震源地、特定完了。深さ10km、マグニチュード7.8……いや、8.0、まだ上がるぞ!」
俺がいた部屋は、基地の全体に放送をかける放送局のような所だ。
ここには、火災をはじめとする各種災害の発生放送、政府からの命令の放送も行う。
3人が常時詰めることになっていて、俺は先任隊長として、今日から夜間部の担当になっていた。
「確定は?!」
揺れがいつ来るかと身構えつつ、モニターを凝視する。
黄色のP波の円と、赤色のS波の円が、徐々に大きくなっているのが分かる。
もうすぐ、P波が基地に到達するだろう。
「確定報、マグニチュード10.3です!震源は南海トラフ!」
「来てしまったのか……」
震源が判明した時点で、俺は何が起きたかをすべて理解していた。
南海地震を震源として、東南海、東海地震と九州沖を経て、さらに琉球海溝までいっきに動いたのだろう。
そこまで分かった時、カタカタと小さな揺れが襲ってきた。