二話 祓魔師 三渡琴音
祓魔の力、それは名前の通り魔を祓い、殲滅する力。
私の両親は非常に強い祓魔師だった。
それぞれが天才といわれたその血を、私は受け継いでいる。
そのおかげか、私は今、数多くいる祓魔師の中でも高位の階級を得ている。
最強の血を引いているのだ、当然という考え方も多いだろう。
だが、断じて血の影響ではない。
私をこの道に落とした元凶の吸血鬼、通称『ブラッド』。奴をこの手で殺すために、私はあえて血の恩恵を封じ、無能者として育成機関に入学、力なしでこの地位にまで上り詰めた。
私がなぜ吸血鬼を、『ブラッド』を追い続けているのか。
それは両親を殺した吸血鬼だから。
天才といわれた二人を相手にし、ほぼ無傷で殺してのけた奴を許せるわけがないだろう。
私の愛用している白黒の夫婦銃。もとは両親がそれぞれ使っていた形見の二丁を、私に合わせて調整した、いうなれば家族の銃とでもいうべきだろうか。
それとは別に、私専用に作られた銀十字剣も持っているが、こちらはほとんど使う機会がない。
怖いのだ。やはり人間だから。
異形に対する恐怖心はもちろんある。
「・・・真琴遅いな」
自室で着替えているであろう幼馴染のことを考えつつ、私は階段を下りる
「おばさん。真琴起こしてきました」
「あら、ありがとね琴音ちゃん。ごはんもうすぐできるから待っててね」
真琴のお母さん。年齢不詳の美貌を持ち、家事スキルも天才クラスの現最強祓魔師だ。
そして、私の師匠でもある。
「真琴ったら休みはいつもこうだものねぇ・・・」
普段はおっとりした人なのだが、いざ戦闘となると尋常ではない力を発揮する。音速で動くわ祓魔の力を使わずに吸血鬼を葬るわ、果てには魔公クラスを瞬殺したという伝説すらある。
「おはよう母さん。親父は?」
外出用のジャージに着替えた真琴が下りてくる。寝癖がひどい。
「真琴。洗面所いくよ」
「いや、一人で行けr・・・・」
おい、なんで私を見ない。こっちを向け。
「琴音、顔が怖い」
失礼な。
「どこが怖いのよ、このかわいらしい顔の」
「それ自分で言うのかよ・・・」
若干引いている真琴を見つめる。
私には小さなころの、正確には両親が殺された時の記憶だけがすっぱりと消えてしまっている。
真琴を見ていると、脳裏にノイズのようなものが走るのだ。
まるで誰かに記憶が封印されているかのように。
「な・・・なんだよ」
照れてそっぽを向く真琴。この幼馴染は時折こうやってかわいいしぐさをするのだ。うむ、かわいい
「真琴、琴音ちゃん。ごはんできたわよ」
おばさんの声で我に返る。いずれわかる日が来るはず。そう考えて、私はその件についての思考をやめる。
「「「いただきまーす」」」
今日の朝ごはんはオムレツだ。今日は何も予定がないはずだし、真琴と買い物にでも出かけよう