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一話 半吸血鬼、空野真琴

長い長い夢をみていた。

それは、人と吸血鬼の物語。

お互いを嫌いあう二つの種族。水面下で行われる争いの中、とある紱魔師(エクソシスト)と、とある大魔騎(パラディン)が恋に落ちた。

二人は人間界で身を潜め、幸せな時を生きていた。


そして、紱魔の力と吸血鬼の力を受け継いだ、半吸血鬼(ハーフブラッド)が誕生した。

その半吸血鬼、名を真琴といった。

真琴は人間として昼間を生き、吸血鬼として夜を生きていた。

そして、その生活は突然終わりを告げる。

人側の正義として、吸血鬼を滅ぼす、裏切りの吸血鬼の物語。

紱魔の力と吸血鬼の力を使い、真琴は全ての吸血鬼を滅ぼす。


無論、父である大魔騎も。

そして、吸血鬼と言う種族を滅ぼすと言うことは、そう。


自分自身をも、真琴は殺した。

正確には、幼馴染みの琴音。天才的な紱魔師で、吸血鬼に両親を殺され、吸血鬼を誰よりも憎んでいる彼女の手で。

「真琴…」

「どうした?やれよ。…見ての通り、俺は吸血鬼だ。お前を両親を殺したやつと同じ、な」

夜、目を赤く光らせた真琴と、白銀、漆黒の夫婦銃を構えた琴音が対峙する。

「でも…」

「その銃に込めた誓いを、お前は破るのか?その、お前の両親の形見である夫婦銃に込めた誓いを。」

真琴の言葉に琴音は俯く。

「……」

「…俺が最後の吸血鬼だ。俺を殺せば、この世から吸血鬼は消える。お前の復讐が叶うんだ。」

全ての吸血鬼は真琴が滅ぼした。名実ともに吸血鬼は真琴のみであり。その身体はすでに複数の銀弾で貫かれている。

「その引き金を引け。琴音。さもなくば…」


俺がお前を食い殺す。


そういって、真琴は琴音に襲いかかった。


「起きろっていってんでしょこのねぼすけぇー!!!!!」

そこで、夢は終わった。正確には、終わらされたのだ。脳天に響く高い声と、同じく脳天に物理的に響くフライパンによる一撃で。

「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!いってぇな琴音!何しやがんだ!」

「なにしやがんだ!じゃないわよ!いくら呼んでも起きない真琴が悪いんでしょーが!」

時計を見ると朝8時、夏休みにしては早起きである。

改めて、俺は琴音を見る。

茶色のショートヘア、眉のところでコウモリのピンで留めているのが印象的だ。

顔は幼く、身長も低いため、一見中学生にも見えるが、れっきとした高校生である。俺と同じ学年。高校2年生である。

「んで?なんでお前がここにいるんだ?俺の部屋の鍵は内側からだから外からはあかないはずだが?」

「私を舐めないで頂戴。ピッキングくらい習得済みよ」

盗賊かお前は。

「俺のプライベートはないのか」

「真琴がなにしてるのかくらい私にはお見通しよ。あと、タンスの裏に隠してあったいかがわしい本は捨てておいたから」

「鍵は開けるわ探索するわ、お前はどこの主人公だ。」

さらば、友よ…。夜を過ごしてきた友に心の中で別れを告げ、起き上がって服を脱ぐ

「なっ…!!なんで脱いでるのよ!」

「着替えんだよ。部屋から出てろ。」

まったく。小さい頃は風呂も一緒だったのに。思春期だなぁ琴音ちゃんは。

「思春期なのは真琴もでしょうが。終わったら降りてきてね。おばさん待ってるよ」

「ほいほい。」

寝巻きから着替え、空を見る。今日はあいにくの曇天。だが、俺たち吸血鬼にとってはありがたい天気でもある。




吸血鬼。それは人の血を吸いつくし、殺す鬼。

そして、そんな鬼の血は俺の中に半分流れている。

半吸血鬼というものは、俺以外には存在しない。

吸血鬼の能力を完全には使えない代わりに、弱点である日光やにんにくといったものは効かない。

俺は右手に意識を集中する。

「…包丁。」

頭の中で、右手に握られた包丁をイメージする。すると、光の分子が右手に集まり、瞬く間に本物の包丁が右手に握られた。

これが俺の吸血鬼としての能力、「物質具現(リアライズ)」。

吸血鬼の能力というのはそれぞれ違う。「霧化(ミスト)」や「変身(カメレオン)」といった自己変化系、「発火(パイロ)」や「氷結(アイス)」といった自然系(ネイチャー)、そして「物質具現(リアライズ)」や「念動力(サイコキノ)」の特殊系に別れており、どの能力もこの三つのどれかに分類される。

俺の物質具現は半吸血鬼ゆえに強くなく、完全な吸血鬼なら戦車や飛行機といった大質量のものを具現化できるらしいが、俺にできるのはせいぜい武器の具現化程度、大きすぎると具現化ができないのだ。

その代わり、俺にしかできないこともある。

紱魔の能力と具現化を組み合わせ、吸血鬼を葬る特異系。通称「聖魔鬼」という。

聖魔鬼状態になると能力がフル活用できる上、その全てに紱魔の力が宿る。つまり、チート形態だ。


「解除」

包丁を解除し、目が元の黒に戻ったことを確認し、俺は下へと降りた。

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