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零話    昔話

人通りのない暗い路地裏。私はそこを全力で走っていた。

既に体は限界を超えており、小さな体はあちこち悲鳴を上げている。

でも、走るのをやめることはできない。

なぜなら・・・


「子供の割に良く逃げるじゃないか。でも、やっぱり子供だね」

後ろを追いかけてくる影。その声はだんだん近くなり、私の恐怖をさらに助長させる。

「君は良く頑張ったよ。普通ならあれを見た瞬間に腰が抜けちゃうんだけどね・・・


    自分の両親が、吸血鬼に襲われて死んでいたら・・・」





吸血鬼。もはや逆に新しいくらいの化け物。ニンニクが苦手。何百年も生きる。棺桶で眠る。肌が白い。

そして、人間の血を吸う。血を吸いつくし、殺す。


「・・・えっ」

曲がり角を曲がった先に会ったのは、無機質な壁。つまり、行き止まりだった

「残念、これでおしまいだね。すぐに両親の所に行かせてあげるよ」


お父さんとお母さんの顔を思い出してしまい、視界がぼやける。だめだ、今は泣いてる場合じゃない。何とかしてあの吸血鬼から逃げないと。


「・・・おい、そこの。何やってんだ??」

不意に、別の声が聞こえる。声からすると私と同い年くらい。小学生男子らしい高い声が、吸血鬼の後ろから聞こえた。


「・・・真琴??」

その声には聴き覚えがあった。私の家の隣に住んでいる、幼馴染の空野真琴の声だ。

「・・・琴音か?何やってんだ、心配したぞ」

真琴はこの状況を破壊するくらいに能天気な声で私に尋ねる。私は答えようとしたけど、だめだ、怖くて声が出ない。

「・・・俺の幼馴染みに何してんだよ、吸血鬼。」

「何って、血を吸おうとしてるに決まってるでしょ??全く、いくら子供の血は最高だからって、大人の血を吸った後に二人はさすがにきついわね、片方は普通に殺しましょう」

そう言うと吸血鬼の体は変化する。

それまで人の形を保っていた体は急速に鬼のそれのように膨れ上がる。腕は木の幹みたいに、そしてわずか数秒で、人が鬼に変化した。

「・・・ふぅん、鬼か。ずいぶん大きいもんだ」

真琴は動じたそぶりを見せない。むしろ分かっていたかのように納得していた。

まるで此の世に吸血鬼が存在し、肉体を変化させることができる事を知っているかのように


「あなた、子供なのに全然動じないのね。つまらない」

そう言って吸血鬼は真琴の方にゆっくりと近づいて行って・・・


「ごめんね、琴音ちゃん」

良く知った声が何処からか聞こえて、私の意識を急速に眠気が支配する。

「ま・・・こと・・・」

ぼやける視界で真琴を見、私は意識を手放した












「・・・真琴、琴音ちゃんは眠らせておいた。安心して良いよ」

影から現れた父さんがそう告げて去っていく。

「とりあえず安心か」

そう呟いてから、右手に刀を構築する。

「・・・あなた、吸血鬼なのね。私と同じ」

吸血鬼・・鬼が納得したようにうなずいている。


そう、俺は吸血鬼だ。こいつと同じ、太陽を嫌い、闇を好む。吸血鬼。魔物。


ま、俺は・・・

「俺は半吸血鬼ハーフブラッドだ、そこんとこ間違えんな」

人間と吸血鬼の子。半分人間で、半分吸血鬼。どちらでもあり、どちらでもない。

「半吸血鬼??いたんだ、そんなハンパもの」

明らかに嘲笑している。ま、そりゃあそうか

「笑うなよ。そのハンパものに狩られるんだから」

そう言って刀を正眼に構える。そして

「・・・一閃『不知火』」

吸血鬼の脚力で一気に距離を詰め、音速の斬撃を一瞬で放つ。


「・・・え??」

どうやら俺の攻撃を受けたことに気付かなかったらしい鬼が、遅れて自分が斬られたことを認識する。

「俺の両親は、人間界最強の祓魔師エクソシストと吸血鬼の王『大魔騎パラディン』だ」

「そ・・・そんな」

「つまり、その血を受け継いでいる俺はハンパもんではあるが、ある意味では優良種だ。


ハンターとしてはな」


刀についた血を振り落とすのと同時に、鬼の体はバラバラに切り刻まれる


「お疲れ真琴」

「準備運動にもならないよ」

実際、初めてとはいえ父さん母さんに毎日しごかれているため、この程度は運動にすらならない

「それより、琴音は…」

「琴音ちゃんは家で引き取るよ。今日の記憶は消しておくけどね?」

「そっか」

それが一番いい。琴音は知る必要ないんだ。

この世界に吸血鬼をはじめとする夜の生き物がいるなんて……





これは、本編の9年前の話である


一人の少年と、一人の少女悲しい物語の始まり。

彼らは、どんな選択肢を選ぶのか

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