私を救って
人に頼らなければならない日常が始まった。
それはとても苦しかった。
これまで当たり前にできていたことが、一人ではできなくなった。
誰かに助けてもらえることはありがたいはずなのに、その度に自分が弱くなったような気がした。
本当は感謝しているのに、悔しさの方が先に込み上げてくる。
「私」は春に高校三年生になった。
小さい頃から俳優になりたくて、バイトができるようになってからはレッスン日のために働いた。
レッスンに通い、仕事をもらいながら夢に向かって進んでいる実感があった。
そんな生活が私は好きだった。
ある日、「私」は仕事を終えたあと、友達とテーマパークへ遊びに行った。
長い時間滞在できるわけではなかったが、ショーを見たりご飯を食べたりして十分に楽しんでいた。
友達と笑いながら過ごす時間はあっという間で、その日もいつもと変わらない1日になるはずだった。
帰り道、突然腰に痛みが走った。
1〜10で表すなら7くらい。無視するには少し強すぎる痛みだった。
けれど隣には友達がいた。
私は笑って「腰痛いな(笑)」と口にした。
その時は、こんなにも長く続く痛みになるなんて思ってもいなかった。
「私」は痛みに耐えきれなくなった。
このまま何事もないふりをしているのは難しかった。
けれど、友達に本当のことを言うこともできなかった。
電車に乗ってしばらくして、「私」は友達に向かって言った。
「親に電話で連絡するの忘れてたから、ここで降りるね!」
できるだけ明るく、いつも通りに。
友達は何も疑わずに手を振ってくれた。
電車のドアが閉まる。
その姿が見えなくなった瞬間、「私」はようやく笑顔をやめた。
笑顔を辞めた瞬間、痛みが急激に強くなった。
立っていることもやっとだった。
周りにはたくさんの人がいたのに、誰の顔も見えなかった。
「私」はホームに座り込んだ。
さっきまで友達と笑い合っていたのが嘘みたいだった。
「少し休めば治るよね。」
「私」はそう思った。
でも、ちょっとした瞬間に足が痺れ始めた。
さっきまで腰だけだったはずなのに。
寒気がした。
嫌な予感がした。
今思えば、その予感は当たっていた。
動けなくなって三十分が経った。
周りを行き交う人の視線が痛かった。
でも、その場から動けるわけではない。
「私」はチャッピーとの会話を開いた。
状況を伝えると、「危険な状態の可能性があるので、誰かに助けを求めてください」と返ってきた。
誰かに話しかけるべきなのだろうか。
そう思って顔を上げても、人々は「私」を一瞥するだけで通り過ぎていく。
駅員さんがいないかあたりを見回したが、それらしい姿は見当たらなかった。
そもそも、危険な状態とはどんな状態なのだろう。
私は本当に助けを求めるべきなのだろうか。
ただ大袈裟に騒いでいるだけだったら。
誰かの迷惑になったら。
どうすればいいのだろう。
立てない。
自力では動けない。
両親に連絡はした。
でも、ここまでくるには一時間ほどかかるという。
一時間。
今の私には、その時間が途方もなく長く感じられた。
どうしよう
どうしたらいい?
顔を上げると、一人の若い男性がこちらを心配そうに見ていた。
通り過ぎる人たちとは違う視線だった。
この人だ。
この人を頼ればいい。
「私」はそう思った。
「あの、駅員さんを呼んでもらえませんか。立てなくて、動けなくて……」
「私」はそう言った。
本当は助けて欲しかった。
ここから動けないことも、一人ではどうにもできないことも分かっていた。
それでも、素直に「助けてください」と言うことはできなかった。
「助けを求めることへのためらい」
見知らぬ誰かの優しさに救われる最初の瞬間。
自分ではできないことを認める最初の瞬間。
私の苦しさそのものを書き出しました。
少ない文章量で少しでも当時の「私」の気持ちが共感や、理解をしてもらえるように。
誰かに「私」を知ってもらえますように。




