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熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。  作者: 七賀ごふん
守りたいひと

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#2



ポケットに手を突っ込み、道源は宗一の方に向いた。

「久しぶり。やっと会えたね、宗一」

「あぁ。私から会いに行くつもりだったのに、悪いな」

宗一が皮肉を込めて睨めつけると、道源は心底嬉しそうに頷いた。


「宗一は照れ屋だから仕方ないね。お姫様からすぐに目を離しちゃうし、ナイトには向いてないんじゃないかな」


地鳴りのような音が聞こえた後、男達が一斉に倒れ、跪いた。どうやら上から見えない重力をかけられている。

宗一はにこやかに、しかしかつてなく低い声で答える。


「おっと……力をかける場所を間違えた」


踵を返し、獲物を狩るような鋭い視線を道源に向ける。大我は底知れない重圧を感じ、無意識に後ろへ下がった。

こわ……。


ここにいたら道源のついでとして、一緒に巻き添えにされそうだ。さりげなく後ろへ下がって離れようとしたが、兄に呼び止められてしまう。

「大我。まだここにいなさい」

「え。は、はい……」

残念ながら逃がしてくれないらしい。大我はため息を飲み込んだ。

そもそも兄がここへ来るとは思わなかった。村人達の動向を教えてくれたのは彼だが、いつだって高みの見物を楽しんでいるから。


それほどまでに、白希が心配だったか……今度こそ宗一が出てくると確信していたのだろう。

兄は宗一を好いている。それは恋愛感情とは少し異なっていたが、お気に入りには間違いない。

村を出てまで追いかけるぐらいだから、尋常ではない執着心だ。なのに核心的なことは言わないし、しない。そんな兄が心底理解できない。


道源は少し仰け反り、それから宗一に抱えられてる白希に声を掛けた。

「白希、久しぶり。怪我大丈夫かい?」

「あ。はい……」

「良かった。どうする? 僕のところに帰ってくる?」

眼鏡を軽く持ち上げ、微笑む。同時に、宗一は厳しい表情を浮かべた。


「……」


白希は困ったように視線を泳がしていたが、やがて意を決したように答えた。


「……いいえ」

「そっ、か。オーケー、分かった」


良いんだ……。

大我は心の中で突っ込んだが、兄の考えてる事は分からない。白希が襲われたこの事件すら、なにかの余興として楽しんでいるだけかもしれない。そう思うと、飄々としている彼が本当に恐ろしかった。

と言っても、俺からしたら宗一さんもめちゃくちゃ恐ろしいけど……。


未だ強い重圧を男達にかけている宗一は、お世辞にも好青年とは言い難い。少しでも機嫌を損ねれば、次の瞬間には押し潰されてそうだ。

村で一番強大な力を持っているのは彼だ。自分も兄も、白希ですらも、本気を出した彼には適わない。村の男達は宗一のことをまるで気にしていなかったようだが、愚かにも程がある。


道源が所有しているのは硬度操作という、大我以上に地味な力だ。やはり大きさも派手さも、宗一の重力操作が一番だろう。

肩を落としていると、道源はポケットからなにか取り出し、宗一の胸ポケットに差し込んだ。


「これを返しに来たんだよ。宗一ってば、いきなり白希をさらっちゃうんだから」


それは白希のスマホだった。

「ありがとう。……最初にさらったのはそっちだけど」

「あはは、だから誘拐じゃなくて保護だって」

可笑しそうに答え、道源は男達の手前に屈んだ。

「上からすみませんね。ちなみに皆さん、傷害で警察に引き渡されるより、地元で平和に暮らした方がずっと良いと思いません?」

「は……?」

「貴方達がしたことは、僕も別のビルから動画で撮影してました。これを使えば、貴方達は地元からも厄介者扱いされて、どこにも帰れなくなりますよ」

道源は自身のスマホを取り出し、動けない彼らに向けて、白希を無理やり拉致する動画を再生した。

「村の言い伝えなんて、この社会においては妄言でしかない。貴方達は無害な青年を暴行した、ただただ頭のおかしい人間としか見られませんよ」

「……っ!!」

道源の言う通り、そんな言い伝えを本気で信じているのは村の者だけだ。ひとたび外に出れば、何を馬鹿なことを、と一笑されるだろう。


しかしそんな言い伝えを本気で信じてしまうほど、自分達の力は強大で、非現実的だ。宗一は密かに眉を寄せた。


「白希はほとんど力をコントロールできてると、この宗一が太鼓判を押してるんですから。安心して村にお帰りください。むしろここに留まる方が祟りがふりかかりますよ~。ちなみに、今まさに貴方達にふりかかってますが」


道源はおどけて言ったが、宗一はそれに乗じて重力を上げた。耐え兼ねた男のひとりが、とうとう音を上げた。


「わかった!もう白希には関わらない。約束するから頼む、助けてくれ!」


それを皮切りに、残された二人も宗一に降参の意思を示した。白希にした仕打ちを思えば生温いぐらいだが……不安そうにしている白希の手前、これ以上続けるのは悪影響でしかない。大袈裟にため息をつき、宗一は力を解いた。


「宗一が優しくて良かったですね。でも二度目はないでしょうから……皆さん、どうぞお元気で」




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