#3
「そもそも、僕達が隠れながら生きるのはおかしいのさ」
その人は、目覚めたばかりの自分にそう言った。
自然を超越した力を持っているのに、何故力の弱い者達に怯えて生きる必要があるのか。
狭く古臭い慣習を持つ村社会で死ぬまで搾取されるぐらいなら、何も知らない者達の中に紛れて生きていく方がよっぽど良い。水崎夫妻が村との繋がりを断ち切ったように。
力を使いこなせなければ村に災厄が訪れるなんて、妄言も極まっている。いつから人柱を作り上げる狂った村と化したのか……。それは誰にも分からない。
だが変化を恐れる彼らにとって、イレギュラーな存在は災厄そのもの。どんな手を使ってでも排除するだろう。
君は悪だ。
力を持って生まれたことは悲劇だが、力を使いこなせなかったことは確かに、彼らからすれば災いそのもの。こうなったのは全て必然だ。
でも大丈夫。僕達と出逢ったことは“運命”だから。
優しく頭を撫でられ、抱き寄せられる。嗅ぎ慣れない香水の香りが鼻腔をくすぐる。暗い部屋の中で、その青年に縋りついた。
「僕が君を守ろう。君の命を狙う人や、───君に執着する、ずるい人から」
カーテンの隙間から朝陽が射し込んでいる。
今日も怖いぐらいの静寂と共に目覚めた。白希は立ち上がり、自分の左手を宙に翳す。
人は大人になるにつれ、独りで生きていくものだと思っていたけど。
“あの人”や大我を見ていると、どうもそうとは限らないようだ。むしろ他人との繋がりを強く欲し、手に入れようとしている。
それは何の為に?
どれだけ考えても分からない。ただ、テーブルに置かれたサコッシュを見るととても懐かしくなる。誰かに会いたくて仕方ない。焦燥と情熱に浮かされそうになるんだ。




