表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【BL】熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。  作者: 七賀ごふん
奇な糸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/24

#4



「白希様。お休み中すみません。着きましたよ」

「はいっ!!」

勢いよく飛び起きたせいでシートベルトが胸にくい込み、地味に痛かった。

ていうか、まずい。寝ちゃってた……!!


「申し訳ありません真岡さん! 運転していただいてたのに……!!」

「はは、大丈夫ですよ。今日一日で動き回って大変だったでしょう。もう少し日をまたいでお手伝いしたかったんですが、私も中々都合をつけるのが難しくて……本当に、すみません」


彼が謝る謂れは何一つない。罪悪感に潰されそうになりながら、とにかく否定した。

「宗一様もそろそろお帰りになるはずです。念の為、私は玄関前までお送りしますね」

「だ、大丈夫です。もうエレベーターの乗り方も覚えましたし」

「それは……ふふ、でも念の為ですよ。危険なのはエレベーターだけじゃありませんから」

彼は少し笑い、結局上の階まで送ってくれた。

世間知らずを極めた自分のことが心配なのか……でも仕事と同じだし、なにかあれば彼が叱責される。迷惑かけないように、言われた通り動こう。

「……そうだ。私の連絡先もお渡しします。なにか分からないことやお困り事があれば、遠慮せずご連絡ください」

真岡は名刺入れから、電話番号が書かれた名刺を渡してくれた。


「わぁ……! 名刺を頂いたの、初めてです。ありがとうございます」

「あははっ。それでは、また。失礼致します」


白希は名刺を手に、再び頭を下げた。ドアが完全に閉まるのを見届け、エレベーターに乗る。


真岡はスマホを取り出し、連絡帳を開いた。

見慣れた電話番号をタップし、着信をかける。三コール目で相手は電話に出た。

「もしもし、真岡です」

ポケットから車のキーを取り出す。路肩に停めている車へ向かうと、そこにはスーツ姿の青年が佇んでいた。彼は耳に当てていたスマホを下げ、通話終了ボタンに触れる。


「知ってる」


真岡のスマホの画面も、通話終了の表示が映し出された。バレない程度の小さなため息をつき、スマホをポケットに仕舞う。


「お疲れ様です、宗一様。早かったですね」

「そりゃあ、一刻も早く白希に会いたいからね。法定速度ぎりぎりで飛ばしてきたよ」


真岡がロックを解除すると、宗一は彼の為に運転席のドアを開けた。

「ひとまず、やることは終えました。こちらがお預かりしてる書類です。ご不明なことがあればご連絡ください」

「分かった。今日は本当にありがとう、雅冬。君にしか安心して白希を任せられない」

宗一は踵を踏み鳴らし、いつもと同じ優雅な微笑を浮かべた。

笑顔を向ける相手を間違えてると思ったが、特につっこまずに真岡は運転席に乗った。


「……白希様は本当に可愛らしい方ですね。素直で、謙虚で……あんな方、中々いません。大事になさってください」

「君にしては随分褒めるじゃないか。何をあげても白希だけはあげないけど、いいかい?」

「貴方という人は本当に……いえ、何でもありません。ご心配なく」


ドアを閉め、エンジンをかける。真岡は思い出したように窓を開けた。

「そういえば大事なことをお伝えし忘れました。今日一日一緒に行動しましたが、恐らく白希様の力は一度も働きませんでしたよ」

単純に、力も出せないぐらい疲れていた可能性もあるが……終始落着していたし、普段出掛ける分には心配ないと感じていた。


それに対し、宗一も落ち着き払って答える。

「そうか」

「……驚かないんですね」

「普通に過ごしてれば暴走なんてしないからね」

ポケットに手を入れ、宗一は一歩後ろへ下がる。


「でも白希様のご両親……余川さん夫妻は、彼が力をコントロールできないから屋敷の中に閉じ込めていた。そうですよね?」


恐らく、村の出身以外でそのことを知ってるのは真岡だけだ。全て宗一から聞かされたことだが、白希はあの異質な力を恐れられ、実の両親に軟禁されていた。

宗一も類似した力を持っているのに、待遇が雲泥の差だ。


万物を調節できる力……その伝説自体は春日美村では知られているのに、何故白希だけ冷淡な扱いを受けていたのか。個人的には一番気になる。

答えを待っていると、宗一は両肩を上げ、呆れたように呟いた。


「そう。でもご両親こそ、白希が力を使いこなせなくなった原因だ。本当ならもっと他人と接して、自分を律する機会を得なくてはいけなかった。けど人と接する機会を奪い、ますます世界から遠ざけた。これは自分に自信がないと上手く扱えないものなのに……。何年も孤独に過ごして、他人を怖がる白希がコントロールできるはずがないんだ」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ