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【BL】熱しやすく冷めやすく、軽くて重い夫婦です。  作者: 七賀ごふん
二十歳の青年

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14/17

#14



「俺も……宗一さんと暮らせたらって、ずっと考えてました。……十年も前から」


頼りない情報とつたない想像力だけで創り上げた想い人。

墓場まで持っていこうと決めてたのに。ひどく遅れて、後悔の大波が押し寄せてきた。


絶対引かれた。恐る恐る表情を窺うと。宗一は目を丸くしていた。よく見ると、頬は少し紅潮している。


「きっ……気持ち悪いこと言ってすみません……!」


既にパニックに陥ってるが、まずは謝って、それから弁解しないと。あれは現実逃避で、馬鹿な子どものいっときの感情なのだと。

ところが、宗一は白希の手をとり、甲に優しく口付けした。


「嬉しい…………。つまり、私達は両想いだった。ってことだよね?」

「……え」


そう……なのか?


恋心を抱いてたのは子どもの時の話だ。

でも、彼の強さや優しさに惹かれてるのも事実。

恋愛感情として、俺は宗一さんが好きなんだろうか。


起き上がってから、のぼせたような頭で真剣に考える。

「はは、分からなかったらいいよ。でも分かったら教えてほしい」

手がゆっくり離れていく。彼は立ち上がり、床に落ちた服を拾う。

何だかそのまま“終わって”しまいそうな気がして、無意識に手を伸ばしていた。


「……待って」


このまま放っておかれたら、凍えて死んでしまいそうだ。まだ体と頭が火照ってるうちに、ずっと溜め込んでいたものを晒してしまいたい。


「俺……宗一さんにずっと会いたかったんです」


熱い。とけてしまいそうだ。膝が熱いのか、ソファが熱いのか、もう分からない。

けどそんなことどうでもよくて、彼のシャツを掴んだ。


「納屋に閉じ込められてた時……貴方だけが、唯一俺のことを気にかけてくれて、本当に嬉しかったんです。だから一番逢いたかった。これがどういう感情なのか自分でも分からないけど……これから先も、叶うなら一緒にいたい」


ただの願望だ。叶わないことは分かってる。

だからこそ、軽々しく口に出せた。離れるなら尚さら、本当の気持ちを伝えておきたい。


夫婦とか、特別な関係になれなくてもいいんだ。ただ近くにいたい。世界で一番信頼して、心を通わせたいと思うのは彼だけだから。


「君も私のことを求めていた……か。まずいな。嬉し過ぎて」


宝石のような美しい瞳に、何とも妖しい色が灯る。


「いつだって私だけが君を求めてると思っていた。ふふ……本当に、白希は嬉しいことばかり言ってくれるね」

「はぁ……」

「ちなみに、十年前私に求婚したのは白希の方だ」


……!?

宗一は白希の手のひらに、指でなにかの文字を書いた。

恥ずかしい記憶が走馬灯のように駆け巡り、視線を逸らす。


……なんてことだろう。子どもの頃の自分を引っぱたきたい。


「……と。このままじゃ風邪をひくね。この話はまた今度にして、お風呂にしよう」

「え……わっ!」


宗一はこちらに迫ると、自分を抱き抱えた。

「お、下ろしてくださいっ」

「暴れない暴れない」

力を入れて押してもびくともしない。おかしなほど手応えがない。間違いない。重量操作されてる。

一般男性の体重ではなく、犬猫レベルで軽くされてるようだ。彼は浴室に入ると、ドアの前に立ち塞がって白希が逃げられないようにした。


「お湯も沸いてるね。良かった」

「宗一さん……その、求婚って」


良くないかもしれないけど、蒸し返してしまった。なんせ黒歴史中の黒歴史だ。


かつて白希は、顔も知らない相手に全てをさらけ出していた。その相手こそ宗一になるが、今思うと若気の至りじゃ済まない。


子どもが考えることというのは、時に残酷で、時に常軌を逸している。


青い顔で浴室の隅っこに寄ると、宗一は自分の服を脱ぎ始めた。


「思ったとおり、綺麗に忘れてそうだね。でも構わないよ。君には今の私を好きになってもらう」





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