シーン3 「奇妙な同居生活」
ジェミニ・バランサー エピソード3です。
マモルの家で同居することとなったミナモ。 真面目な性格のため、常にマモルのそばで異常がないかを見守るのだが、マモルとしてはそれが落ち着かない。 そして、川が気になるミナモはマモルと川の様子を見に行く事にするのだが。 以上、あらすじです。
この世界と並行するパラレルワールドの存在を知ったオレ。 だからといってアニメとかにありがちな凄い特殊能力に目覚める、なんてことは特になく、普通の生活を送っている。 表側の世界から来た少女と出会い今日で3日目なのだが……。
「あのー、ミナモさん?」
「はい、どうかしましたか?」
「オレが色々に巻き込まれないように守ってくれるのはありがたいんだが」
「ええ、ちゃんとお守りしますよ?」
「んー、何というか、別に常に一緒にいる必要はないんじゃないですかね?」
「そうはいきません。 いつ何があるか分かりませんし」
「ソウデスカ」
この状況お分かりだろうか。 並行世界ことパラレルワールドの存在を知る事となった原因……もといきっかけとなった少女が、なぜかオレの家に転がり込んでいるという異常な状況なのである。 住むようにしたのはオレだが、事情が事情なので仕方がなかったのだ。 ちなみにオレは親の持家の一軒家で一人暮らしをしている。 まぁ、田舎なんで古い家だが、遊ばせる訳にはいかずとりあえずオレが住むことになった。 ミナモには適当に空いている部屋を使ってもらうようにした。 わざわざオレの隣の部屋を選び、「何かあれば直ぐに分かりますからね!」と。 監視されているようで落ち着かない……。 しかし、もしうちがワンルームのアパートとかだったらこの子はどうする気だったんだろう……。 この性格からすると、何のためらいもなく同じ部屋で過ごすと言い兼ねない。 冗談じゃないぞ。
ご近所にはミナモの事は海外に住んでいた遠縁のイトコという事にしている。 今は社会勉強のためこっちに来て、日本の事があまり分からないからオレが世話をしていると、まぁ、そんな感じで適当に言っている。 こうやって言ってみれば昨日の変な格好の説明も必要なかった。
「しかし、ミナモが他の人にも認識できるようになるとはな」
本来であれば表側の人間は裏側の人間には一切認識できないはずなのだが、あの日以来ミナモは普通に裏側の人にも認識できるようになっていた。
「困りました。 これでは迂闊に能力も使えません……」
まぁ、逆にオレ以外に見えないと、会話している所を他の人に見られでもしたら独り言話すヤバい奴に見えていた事だろう。 良かった、のか?
「能力、ねぇ。 使うって言ってもオレには平和そのものにしか思えないんだが」
「そんなことはありません。 こうしてる今でも、この世界の色んな所で表側の人達が災害が起こらないよう活動しているんです」
「なぁ。 ちょっと気になったんだが、何で自分達には関係のない裏側の世界をわざわざ救ってるんだ?」
「前にもお話しましたが、表側と裏側は表裏一体なんです」
「つまり、こちらで災害が起こるとむこうでも起きると?」
「いえ、起きません。 むしろ良い影響が出ます」
ん?どういう事だ? 比例ではなく反比例している、だと!?
「じゃぁ、なおさらこっちに干渉する理由はないんじゃないのか?」
「これは例え話なのですが、水が1リットル入る器が2つあるとします。」
「ん?うん」
「ですが、水は1リットルしかありません。お互いに分け合えば半分づつ0.5リットルづつですよね」
「まぁ、そうだな」
「ですが、私たち表側の人間が裏側の人間が何もできないのを良い事に全部独り占めしてしまったら―」
「裏側の人間は水がなくて干上がってしまう……と」
「お分かり頂けましたでしょうか」
「むむぅ、なるほど。 ちなみにその話からすると、どちらかの世界が崩壊したらもう片方はどうなるんだ?」
「言い伝えによると、もう片方の世界もバランスが保てずに崩壊するという話です」
「共倒れ……か。それは間違いないのか?」
「実際にはどうなるのか私たちにもわかりませんが、その可能性がある以上は出来る事をしなければいけないのです」
まぁ、良い影響が云々の時点で大体予想できたが。 それよりなにやらミナモの表情が少し曇って見える。 他にも何か言いたそうだがためらっているようだ。
「ちなみに、表側の世界の災害が起こりそうな時もやっぱり自分達で何とかするのか?」
「残念ですが、表側で災害に干渉することはできないようなのです」
「じゃぁ、その時はどうするんだ?」
「言いにくいのですが、裏側での干渉によって調整する他に手段がなくて……」
「つまり、裏側での災害を見過ごす事で調整をしている?」
「……はい」
表情が曇ってた訳はこれか。 まぁ、表側の人間が災害全てを阻止してたらこの世の災害は全て無くなってるだろうからな。 ちょっと悪いこと聞いたか?そりゃ自分達の世界を守る為にそっちの世界に犠牲を強いてます、なんて言いたくないわな。
「ミナモの責任じゃないさ。 自分達で対処できないオレ達には文句言う資格はないしな。 それに、お互いに上手くバランスをとれてるのもお前たちのおかげなんだろうし」
「そう言ってもらえると救われます」
知らないうちに救われてるのはこっちのオレ達なんだがな。 まぁ、でも表の人達がどうしてこっちに干渉するのかは何となく理解できた。 しかし、こちらは守られるばかりで向こうに何も出来ないってのはちょっと情けないよな。
「そういえば、表側と裏側ってどうやって行き来してるんだ? 行き帰するための道具みたいな物があるとか?」
「うーん、そういった道具は残念ながらありませんね。 心で意識をしてここは表だと思えば表に行く、みたいな感覚なんです。 一つ条件があるといえば、周囲が危険な状況ですと意識が集中出来ないので移動できないかもです」
むむぅ。ワンチャンあっち側に行けないかと思ったんだが、意識って何だ?まったく要領を得ない! 危険な状況だと出来ないか。 相当の集中力がいるって事だろうな。
「ミナモこの間はあんなに慌ててたのに出来てたじゃないか」
この間とは、初めて出会った時の河原での件だ。あの時、自分が裏側の人に見えることでパニックとなり人目もはばからず表側へ帰ろうとしたのである。あの時はオレが無理やり制止したため転移は出来なかったのだが。
「あれは、別に命の危機という訳でもなかったですし。 むしろ、集中できたくらいです。 マモルさんに引き止められて集中が切れましたが」
危険な状況の判定がよく分からんな。
「ちなみになんだが、それってオレにも出来たりする?」
「どうなんでしょうか。 でも、表側に裏側から来た方もごく少数ですがいますよ」
マジか!そいつらスゲェな。 どんな器用な脳みそしてんだ。
「行き来する時ってどんな感じなんだ?」
「目の前の景色がフワっと切り替わる感じですね。 移動した場合は、例外を除いて前回移動を行った場所に移動されます」
なるほど。 確かにさっきミナモが表側から帰ってきた時も同じ場所に現れたな。 疑似テレポートに使えそうだと思ったが、そこまで甘くないらしいな。 まてよ? 仮にその転移した場所に障害物があったらどうなるんだ? 凄く気になる! ヨシ、今度ミナモで試してみよう。
「マモルさん、出来そうですか?」
「フン!……いや無理ぽ」
そんな簡単に出来るかよ! もし手軽に出来るのなら、とっくに表側の世界の存在がこっちに知れ渡っているだろう。
「そうですね。 精神力も必要ですし、簡単ではないかもしれないです」
でたな精神力。 つまりオレはMP0の戦士ってことか。 例えが古いか?
「マモルさん。 もし良ければ少しお出かけしませんか?」
「デートのお誘いか?」
「違います! 川の様子を見に行きたいんです」
「まぁ、いいけど。 危なくない?」
「危なくならないようにする為に行くんですよ。 数日の間監視していなかったのでちょっと心配なんです」
ミナモは水を守る活動をしてるみたいだし、まぁ、実際にどんな事をするのか興味はあるしな。 美少女との河原デートも悪くないだろう。
「どうだ、何か変わった事はあるのか?」
「そうですね。 この川はあまり水質が良くありません」
うーむ。 オレ達裏側の人間が環境を顧みず開拓した結果である。 ミナモさんよ、スマナイ。
「やっぱり裏側の人間が汚したからなんだろ?」
「そうですね。 ですが、近年はちゃんとこちらの方々も環境に配慮をして努力しています。 これは他に何か原因がありそうなんです。 前回は闇雲に浄化をしようとして精神力が尽きてしまいましたが……」
そうか、それで行き倒れていたのか。 裏側の人類も今まで環境破壊をしてきた事を今更ながら後悔している。 そして今では元の川を取り戻そうと色々な団体や企業が活動をしている。 オレが務めている会社でも、月に一度だがゴミ拾い運動というのをやっている。 それはそれとして、
「他に原因、か。 何か分かりそうなのか?」
「前回浄化に試みて分かったのですが、水質を悪化させている原因というのがこの地上に存在する物質ではなさそうなのです」
「は?よく分からんな」
「何て言えば良いのでしょう。 説明が難しいのですが、水を洗剤や薬品で直接汚染しているのとはまた違う感じと言えば伝わりますか?」
「なるほど、いや分かるけど分からん。 物質じゃないってのがいったい何なのかが分からんよ」
「例えればそうですね、私たち表側の世界由来の物で汚染されているようなそういう感じです。 あまり考えたくはありませんが表側の誰かが汚染に関与している可能性があります……」
マジか。
「それが上流の方から流れて来ていて、川の生き物たちが弱っているようです」
「つまり、上流へ行けば原因が分かるかもしれないのか」
「ええ、恐らくは。 このままにしておくと最悪川の生態系が崩壊します」
ちょっとヤバそうな展開じゃないか。 危険が危なそうな予感。
「上流に行くしかないか」
「急いだ方が良いと思います」
結果的に早速面倒に巻き込まれてしまった。 いや、自分から首を突っ込んだ形かもしれん。 生態系の崩壊なんて単語を聞いたら流石にオレも放っておけない。 (続)
これまでこれと言った行動をしなかったマモル達に、ようやく動きがありました。 裏側のものではないというのは? 川の上流ではいったい何が起こっているのか? この続きは次回です。




