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プロローグ
「よいしょ」
大学生活のはじまりを前に、故郷から出てきた俺は、妙に高鳴る胸を抑えながら、引越し荷物の整理をしていた。
「すみませーん、そのグランドピアノ、こっちの部屋に置いてもらっていいですか?ああそこですそこです。」
音楽はいい。疲れた俺の心を癒してくれたのはいつも音楽だった。今日の飯どうしようかと物思いに耽っていると、
「♪ーーーーーーーー!♪ーーーーーーー〜!」
どこからともなく歌声が聴こえてきた。力強い歌だ。魂から揺さぶられるような感覚。住宅街の雰囲気に似合わぬストリート系Hip-Hopに心躍らされた俺は、あとの家具の配置を全部丸投げしてギター片手に音のする方へ足を運んでいた。