琥珀園②
ズリズリズリ。この音なんだろう?
何か引きずってるのかな?かなりの重さなんだろうなぁ。
あれ?ボク、何で寝てるんだろう?さっきまで学校にいたのに・・・。
確か、いつものように槇がドアを壊す勢いで開けて、いつものように晃輝とじゃれて、キレた槇がボクの襟首を思いっきり引っ張って・・・・・・・・・。
「槇!なんてことしてくれるんだ!」
ボクを引きずりながら移動している彼女に抗議の声を上げる。
「あ、起きた」
「 『あ、起きた』じゃい!乱暴すぎだぞ!」
「仕方ないじゃい。いつまでもじゃれてる凌が悪いんだから」
「だとしても、もうちょっとましな方法があるだろっ!」
あまりの言い方に声を荒げる。
「それにいつまで引きずってんだ」
普段より低い声を出し、今の状況を確認する。
他人から見れば、ボク等の今の姿はかなり滑稽だろう。
特にボク。日本人形みたいな女の子に引きずられる男の子。
かなり不憫だ。
つーか、人一人引きずれるコイツもどうよ。筋力ありすぎだよ・・・。
ちょっぴり情けなく感じる夏の放課後だった。
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ドサッ。いきなり手を放されたボクの体は重力に従って落ちる。
衝撃でハッと周りを見ると、見慣れた建物が目の前にあった。
どうやら、長い間思考の海に沈んでいたらしい。
「あ~、疲れた」
左手首をブラブラさせながら槇は言った。
「だから離せって言っただろう」
「離せとは言われてないわ。引きずるなとも言われてないわよ」
だから、ここまで引きずってきたの。
凌は、溜息をつく。
昔からこの幼馴染は、人の揚げ足を取るのがうまい。
わかっていても、イラつくものはイラつく。
気分を入れ替えるように、深呼吸をする。