琥珀園
授業終了の鐘が鳴る。一気に教室内が騒がしくなる。
そんな中荷物を片づけていると勢いよく教室のドアが開いた。
「りょーーーーう。今日も行くよーー」
大声でズカズカ入ってきたのは、腰辺りまで綺麗な黒髪を伸ばし黒の虹彩を持った少女だ。
「槇、もうちょっと静かに入ってきてって毎回言ってるだろう」
大人しくしてれば日本人形見たで可愛いのに、と呟く。
見た目は精巧にに作られた日本人形。だが、中身は違う。
幼初期、男友達しかいなかったせいか、性格が男勝りになってしまった。
そのことだけが残念だ。
「いいじゃないんの。壊れてはいないんだから」
(そういう問題じゃないんだけどな・・・・)
あっけんからんと言う我が幼馴染に溜息を吐きたくなる。
ズキズキと頭が痛いのも気のせいではないだろう。
こめかみを押さえてると、首に手が回された。
「りょーちゃん。親切なマホ―ツカイが迎えに来てくれたぜ」
りょーちゃん、と言う人物は槇の他にもう一人しかいない。
「・・・晃輝」
高橋晃輝。
クラスの人気者兼小中高通しての腐れ縁である・
そこまではいい。そこまではいいんだ。
ここまではまだ許せるし我慢もできる。
だけど、十一年間同じクラスってどう思う?
さすがにイラッときたね。
おまけに、運動神経抜群プラス茶髪茶目の爽やか系。
これでモテないわけがない。
まったくもって羨ましいよ。
反対にボクは、黒髪に黒目の平凡顔・・・と言いたいとこだけど実際はチョッピリ違う。
髪は普通に黒。眼は、光の角度によって濃い紫色に見えるらしい。
知った時は、驚いたよ。後々両親に聞いてみると先祖返りをしたという事だった。
「うざい。暑いからこの手を離せ」
乱暴に手を振り払う。
「ははっ。わりーぃ、わりーぃ」
口ではそう言っても反省の色が見られない。
そんな二人のやり取りを見ていた槇は、痺れを切らしたのか、凌の襟首をつかんだ。
「いつまでじゃれてんの。晃輝クン、悪いけど凌貰って行くわねー」
にっこり笑い、思いっきり凌の襟首を引っ張る。
カエルが潰れたような声が聞こえたが、この際は気にしない。
「凌、また明日なー。頑張れよ」
陽気な友人の声をビージーエムに、凌は気を失った。
そんな凌を見て一言。
「ホント・・・頑張れよ」
小さく呟いた声は、誰の耳にも拾われず、騒がしい空気に溶けていった。