琥珀園⑮
「そろそろ皆起こさなくちゃね」
「ああ。でも、こいつらいつから寝始めたんだ?」
「そんなのどうでもいいでしょ!早く起こさなくちゃ夕御飯の時間が来ちゃう」
そう言って、周りで寝ている子供たちを起こしにかかる。
槇から視線をそらし、今だボクの上で睡眠を貪る秋一を見る。
あーぁ、幸せそうな顔して寝ちゃつてるな~。
なんとなく、起こすのがかわいそうになって寝顔を見ていたら罵声が飛んできた。
「凌!何やってんのっ!!早く秋一起こしなさい!」
まさに鬼にも負けない声がボクの鼓膜に襲いかかる。
「分かった、分かった。起こすから・・・・」
はーぁ、怖かった。ったく、あんな顔して怒んなくてもいいじゃないか。
美人が怒るとさらに迫力が増すんだから。さて、さっさと起こしますか。怒られるのは嫌だからな。
「ほらっ!秋一起きろ」
軽く体を揺さぶる。
「うっ・・・んん・・・」
秋一は体を少し動かしただけでまた寝に入る。
「しゅーいち!!寝るな!夕飯の時間だぞ」
凌は、秋一を寝かさないようにさっきよりも激しく揺さぶり始める。
「んーーーー、まだ・・・ね・・むい」
しぶとく睡魔にしがみついてる秋一に、溜息を吐く。
昔からこういうことは度々あった。だいぶマシになったと思ったんだけどな・・・・。昔よりひどくなってるんじゃん!!
「ほらっ!いい加減にしろっ!そいてさっさと目を覚ませ」
「・・・っ。おはよー凌兄ぃーー」
「おはよ。やっと起きたか」
人を起こすのってこんない疲れる事だったっけ・・・・。
そんな事を考えてると、思いっきり肩を掴まれた。
「秋一起きたー?」
「ああ、何とか起こしたよ」
力が入らない声で返事を返す。
「そう。園長先生が夕ご飯を一緒にどうぞ、だって」
どうやら、槇はボクが秋一を起こしにかかってる間子供たちを食堂に連れて行き、夕食同伴の許可も得ていたようだ。
「なら御言葉に甘えて食べていこう。お腹が減りすぎて死にそうだ」
「あたしも」
二人は、お腹をすかせて待っている子供たちのところへ急いで行った。