琥珀園⑨
ホントに今日はいい天気だ。
寒すぎず暑すぎず。風が穏やかに流れている。
ベンチに座り空を仰ぐ。いつもは賑わう中庭だが、今はお楽しみのため誰もいない。
凌はこの時間が好きだった。何もせず、考えず時間だけが通り過ぎる。
「平和だな」
ポツリとこぼす。
子供たちと触れ合う時間は好きだ。見てるだけで、元気が貰えるような気がする。
しかし、どうしても人形を操った後は一人でいたかった。
なぜだがわかんない。
わかんなくていいとも思う。
見回りは、建前で一人になるというのが目的だった。槇もそのことを分かっている。
にゃーー。
どこからか鳴き声が聞こえた。
「ねこ?」
確かここは動物持ち込み禁止なんだけどな・・・。
たぶんどこからか忍びこんで来たのだろう。
「どこにいるのかな?」
あたりを見回すが、それらしき影が見当たらない。
「どこにいんのかな?」
ベンチから立ち上がり、茂みのあたりを見る。
みゃーー。
「お、こんなところにいたか」
目の前にちょこんと座っている三毛猫がいた。
「かわいいいな、お前」
頭をなでると、すりつけてきた。
「お前、ノラなのか」
けど、いつまでもここにはいちゃいけないね。
三毛を抱き上げ、子供達のところへ向かう。
もうそろそろ槇の手品も終わる頃だろうね。




