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3

「ーー全く! 何をやってんだい、あんた達は!」

「ひっ。ご、ごめんなさい!」


鞭で打たれた茶髪の少年ーーサムが小さく悲鳴を上げながら、身を竦めて鞭から顔を庇う。


(あー、めんどくせえ。また始まった)


何となく予想はしていたが、やはりザイが必要としていた薬草の量には及ばなかった。他の仲間の集めた量はリリアネアの半分程度しかなかったのだ。


「あんた達はいつも、私の、言いつけを、無視しやがって!」


神経質ヒステリックな声が小屋の中に響き渡る。夜ともなれば静かな森では尚更響く。粗野な作りのこの小屋だ。恐らく外まで声が響いているのではないだろうか。かといって近隣に建物などないのだから、全く誰の迷惑にもならないのだが。

憤怒の表情で顔を真っ赤に染めた老婆はそのうち血管でも切れて、虚無の深淵にでも落ちるのではないだろうか。

そうなってくれた方が自分達にはありがたいのだが。いや、むしろそうなってほしい。

壁際に並び、直立した状態でザイの言葉を右から左に聞き流していたリリアネアにも鞭が飛んでくる。


「……っ!」


腕に疾った痛みを唇を噛み締めて耐える。


「この役立たず共が! 誰がお前達を養ってやっていると思っているんだい! この箱が溢れるくらい、フィンディンの薬草を集めてこいと言ったのに。たった、これっぽっちしか、集めて来れないだなんて!」


あの折れ曲がり年老いた身体のどこにこれだけの力があるのだろう。リリアネアはどうでも良いことを考えながら少しでも痛みから意識を逸らそうと心がける。

その間にも勢いよく振られた鞭は風を切り、リリアネア達の腕や足に叩きつけられて行く。


「はあっ。はあっ。本当に使えない愚図共が!」


しばらくして息が切れたのか、ザイの鞭が止まる。


「明日もまた行ってもらうからね! もしも明日も……ん?」


再び鞭を振り上げたザイだったが、扉の方を見つめて動きを止めた。


「……全く、あんた達はこういう時だけ運がいいねえ。今から私がいいと言うまで奥の部屋に引っ込んでな。出てきたら明日の陽は拝めないと思いな」


その場にいた五人はザイの言葉に頷き、素早く奥の部屋へと向かう。

部屋の扉が閉まる直前、嬉しそうなザイの言葉がリリアネアの言葉に届く。


「お待ちしておりました。旦那様……」


最後尾を務めていたリリアネアは、扉を閉める際に僅かに黒衣の人物が小屋の中へと入ってくるのを見た。こんな森の中にやってくる奴だ。碌でも無い人間に違いない。


(これでしばらくばばあの機嫌が良くなってくれるといいんだがな)


余計な詮索は身を滅ぼす。リリアネアは頭を振り、仲間と共に本だらけの狭い寝床へ向かった。







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