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71.【女神】

その世界の住人達は当たり前に身体を自在に動かすための

筋肉はおろか、発声器官すら持っていなかった。

その多くは本当に時間をかけて光に向かってゆっくりと

手を伸ばす様にその枝葉を伸ばすことはできても、

その緩慢な動きに対して他者が脅威を感じることなどは無いだろう。

棘や毒を持つものもいるがあくまで自衛のためであって

一部の例外はあっても他者を積極的に傷つけるためのものでは

決して無かった。


生物としての壁を超えた次元に到達した女神は

こちらにゆったりとしっぽを振っている犬に近づくように

魔花の花園に足を向けた。

その視界に移る魔花たちの姿は今までと特に変わりがあるわけではない。


それでも―――


『ああ・・・』

『生きているんですね・・・』


その生の息吹だけは強烈に感じ取ることができた。


この生命は繋ぐための手なんて持っていないし

話すことすらできやしない。

互いに意思の疎通なんてきっと絶対にできるはずがない。

それでも同じ空の下で生きている生物なんだってことだけは理解できる。

その者が根から水を飲み、栄養を貰いながらそれをその身体に

循環させて自己完結にその生を歩む姿がありありと解ってしまった。


思わずその生き物に手を伸ばして触れてみた。

実体をずっと持っていなかった女神は初めてその生物に触れた。

勿論、女神に解る返事があった訳では無いのだが・・・

感情と呼ばれるものなのかどうかは果たして解らないが、

それが少し揺らぐのを感じとった。


他者と触れて喜んでいるのか、怒っているのか

恐怖なのか、あるいは植物だけにある別の感情なのか・・・


ただ間違いなく言えることはその揺らぎは間違いなく

生物だけが持つ反応だった。

その場を動くことも声をだすことすらをも出来なくとも

それでも、それは一生懸命に生きる命が、

生命だけが持つ反応であった。


『ごめんなさい・・・』


その女神の口をついて出た謝罪の言葉は

一度、滅ぼすと決意したことに向けてだったか

今まで決して目を向けてこなかった訳では無かったが

その命をきっと動物たちより尊重してこなかった故なのか

あるいはその両方、それ以上の思いを込めたのか・・・


女神自身も理解できていないその言葉に魔花からの返事は無かった。

赦しの言葉も毒づく言葉も何も聞こえてこなかった。


解るのは、ただその感じとられる揺らぎが少し変わったことだけだ。


それが何を表しているのかを感じ取ることはできないし、

それを感じ取れるまでにはまだ少し時間がかかるだろう。

もしかしたらそれこそ永遠に理解できないのかもしれない。

それでもいつか感じとることができれば良いなと思う。

この同じ世界で生きる別世界の住人のことを少しでも

理解することができれば良いなと願ってしまう。


たった一度の経験が良くも悪くも、それからのその生に

影響を与えてしまう程に強烈なものだったということは

誰しもが一度は経験したことがあるだろう。


終わりの無い生を歩む女神にとってそんな経験は

幾度も身をもって体感してきていたことだ。

生物としての壁を超えたこの出会いがこれからの自らの

その生に何を齎すのかはまだわからない。

だけどきっとこれはこれからの自身の歩む道に

大きな影響を与えるものになることだけは感じていた。



―――それに


だいぶ希望に満ちた議論になったのに、急にだんまりになって

ふと立ち上がって魔花に近づく女神に

んん?どした??と気に掛ける友だちたちの視線を感じた。


自らの方に歩み出して急に立ち止まった女神の姿に

わんわん吠えながら自らの身体の大きさを解っていないのか

自分よりはるかに小さい仲間に犬は抱き着いて

女神のぬいぐるみを吹っ飛ばすようにして

押し倒すとその顔をペロペロと舐めた。

犬にすれば親愛の情を示したに過ぎないのだが


えええっ!?

大丈夫っっ!?


その様に思わず声を上げて近づく友だちたちの姿を見れば、

自らの顔を舐め回す犬の姿を見てしまえば、

ずっとひとりぼっちだった女神でも今はひとりぼっち

なんかじゃないことが解る。


その自らに注がれる情の全てが、

自分にそれを与えてくれたこの友だちとの出会いが

何よりも自身の生の礎となっていくのだと感じた。

自らの存在意義なんてずっと解らなかった。

ただ何となくの自分の役割だと思っていたことを

不器用に続けていただけの私だって、こうして

新しい出会いを得ることで成長するのだ。


ああ・・・

私も生きているんですね・・・


自らの生命を今更ながらに感じ取った。

私だって生きているんだって当たり前のことに気づいた。

信仰と言うものを得て力を得た女神であっても

その心の成長は信仰とはまた違った意味で心の奥底から

新たな力と考えを湧き立たせた。


犬に押し倒されて仰ぐ夜空の星々の輝きは

初めて空を見上げた時の様に泣きたくなるくらいに

綺麗に輝いて見えていた。









何年もサーフに通い詰めて、ずっと作者の夢だった

大座布団級のヒラメを遂にこの手にすることが出来ました。


ただ、もはや相棒とも呼べる文字通りの棒である愛竿がまるで

相打ちするかのようにランディングと同時に折れてしまいました。


喜怒哀楽の全部が混じった様な言葉にできない感情になって

情緒不安定になって本当に貴重なヤバい経験をしました。



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