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67.落としどころ

結局、歌のぬいぐるみに女神が憑依したので

少女は歌のぬいぐるみを作り直し、

そして新たに女神のぬいぐるみも作られた。


全部で12体となったぬいぐるみは互いに寄り添い

微笑みながら青い庭園を見つめている。


その光景に自分たちも思わずつられて微笑むと

それぞれが自身のぬいぐるみに魔力を込めた。

幼い兄妹たちは魔力を全く持っていなかったので

その気持ちを自身のぬいぐるみに込めた。


封印するリッチに魔力を持つ全員が協力し

ぬいぐるみの鎮座する台座はこの世界で

最高峰の力によって封印されることとなった。


永遠に一緒だという、その願いきっと叶わない。

それでも長い間、きっと自分たちの分身たちは

ここでずっと寄り添い続けるのだろう。





さて、これからのことを決めるとしようか。


女神が群れに加わったことで少年側の事情を

把握できたことは大きかった。


女神の話によれば少年は

犬と猫が自分を追いかけてこの世界に来ていることも

魔王と呼ばれる存在が犬と猫の友だちだということも

自分と同じようにこの世界で犬と猫がいくつもの出会いを

得て共に旅路を歩む大事な仲間たちを得ていることも

何もかも全部知っているらしい。


魔王の討伐を依頼された時は、少年は逆に

「皆(犬と猫とその友達)を僕が絶対に守らなきゃ!!」

と息巻いたらしい。

その覚悟が宿るその瞳を大きく勘違いされて

話が大きく拗れたようだ。

既に想定していた最悪の事態はとっくに

回避していた。


ならばさっさと少年と合流して―――

という訳にもいかないらしい。

女神の話によれば少年の仲間にも

やっぱり心底魔物を憎む者もいる。

合流すればひと悶着は避けられないそうだ。


逆に少年が把握していないこともある。

女神は魔花の呪いについてまだ少年に話せていないらしい。


「伝えるべきなのか」

「伝えるとしてもどう伝えていいのか」

「わからなかったんです・・・」


女神はそれをずっと考えたいた。

魔獣を産み出すその呪いを少年に伝えれば

その仲間もきっと知ることになる。

あの真っ直ぐな少年は仲間に隠し事なんて

絶対にしないし、してほしくも無かった。


【女神の少年】のパーティーが持つ、

この世界での影響力を考えればあっという間に

それは知れ渡ることになる。


魔花に懺悔する者もいるだろう。

魔花を憎む者もいるだろう。

そんな話に興味も持たない者もいるだろう。


そして齎される混乱への対処が女神一人では

思いつかなかったのだ。

でも、その答えは友に相談したところで

容易に得られるものでもなかった。


こうなってしまえば、この世界に必要なのは

落としどころだろう。


誰かが笑えば、誰かは泣くことになる。


皆で笑って手を取り合って大団円いう理想も

勿論わかる。

わかるのだが、それは絶対にありえない。


だって生きるためには何かを喰らわなければならない。

はたして食われる側になった方は笑っているのか?

と問われれば答えはおのずと知れるだろう。


まるで光と影の関係みたいに

それは当たり前に存在するものだ。


今回は一方が植物という自らの主張を形にする術を、

声を上げることも行動することもできない種族で

あるがゆえに目立たなかった。

それでも、ただ一方的にこの世界の害意にさらされ

続け、そしてその悲観と憤怒が、その怨嗟が

この現状を産み出したのだ。


そんな魔花たちと世界が笑って手を取り合って・・・

なんて都合の良い話はたぶん、ありえない話なんだ。


「私は産まれながらに誰かだけを、」

「その・・・何というべきなのか・・・」

「その、贔屓することは許されないんだと思っていました」

「私は常に中立であるべき存在なのだと」

「その考えは私をずっと一人ぼっちにして・・・」

「そんな私にだってこうして友だちができたんです」

「それを当たり前と思っていた孤独から解放されたんです」

「ありえない事が起きたんです」


そう。

あり得ないと思った話だって時にあり得る未来なのだ。

それに都合よく考えてしまえば幼い兄妹の故郷を思えば

決してあり得ないことでも無いだろう。


それを願ってしまう。

しかし、現実的には難しいだろう。


光と影は当たり前にあるんだから。

でも地上に出てからその光と影で彩られた

この世界に何度心躍らされたことだろう。


今、自分たちが探すべきは

そんな光と影が彩る素敵な世界、

つまりは双方の落とし所だった。





















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