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57.禁忌

『何とか元気づけてやりたいのだが・・・』

『我では何をすればよいのか皆目見当もつかぬ・・・』


買い出しや犬の狩りで普段から食べていたような

食事を取れるようになり、日用品にも困らなくなって

その安心からか兄妹は故郷を思い出すことが多くなったようだ。

何度もぐずる妹を兄は本当は自分も同じくらいに辛いんだろうに

それでも一生懸命に妹を励ましていた。


そんな幼子のその痛ましい様に9匹の群れは

それぞれに張り裂ける程に胸を痛めた。

犬は悲しそうな親しいニンゲンの姿を見て

自分もとっても悲しくなって、兄妹にずっとつきっきりだ。

慰撫する様にずっと寄り添いながら鼻を鳴らして兄妹の顔を

ペロペロと舐め続けている。


「あの子たちの村は遠いのでしょうか?」

「遺品でも見つけてあげられれば・・・」


犬の嗅覚を以てすれば兄妹の生家を探り当てる事は

恐らく容易いだろう。

ただ、その遺品とは一体どんなものがよいのだろう?

結局9匹の群れはニンゲンでは無い。

流石に遺体など持ってきちゃいけないものくらいは解るが

逆にふさわしいモノなど自分たちで判断できるだろうか?


じゃあ兄妹と一緒に村に遺品を探しに行くという事は

今は絶対にすることはできない。

飛竜と黒蛇の話では村が襲撃にあったというのは数日前だ。

今も凄惨たる惨状のままだろう。

村に打ち捨てられている遺体などはその腐敗が始まっている頃だ。

そんな光景がむしろ傷をえぐるだけなのは流石に解っている。


「こんな時に話すことでは無いのかも知れぬがの・・・」

「その村には青い魔花があると言っておったじゃろう?」

「それは是非手元で観察してみたいと思っとたんじゃ」

「じゃが、そうすればあの子らの慰めにもならんじゃろうか?」


リッチの話に皆は目を輝かせた。

恐らくリッチは単純にダンジョンに咲く紫の魔花との

違いを観察したい純粋な知的欲求で思いついたのだろうが

それにしたって妙案と言えるだろう。


『決まったな』


飛竜は満足そうに頷くと当然のように巻き付いてきた

黒蛇とともに飛び立とうとして皆に止められた。


『あんたたちはお留守番だよ!!』


地上で魔力を惜しみなく行使したリッチの手によって

今は山の中腹あたりからその頂までの間は完全に遮断されている。

ひとまず皆の憩いの場たる山頂は一安心と言ったところだが、

その麓、王都から見れば人を惑わす不思議な霧がたちこめる

その不気味な光景はきっとまた大騒ぎを引き起こしている事だろう。

その辺のことも含めて王都にも情報収取に行きたい所だ。

こんな時に魔王の再登場はご勘弁願いたい。


皆はまた役割分担を話し合った。

兄妹の守護を含めた留守居役が魔王ペアなのはほぼ決定した様な

ものだが王都の情報収集と魔花採取をどうするべきかを話し合った。

飛竜の様に飛べれば話は別だが、恐らく犬の脚を以てしても

村までは数日かかる。

別に数本持ってくるだけなら何てことはないが

兄妹の村が滅んだ以上、魔素の補給する術を完全に

失った魔花たちがゆっくりと滅んでいくことは避けられないだろう。

できることならその全てを、この兄妹の故郷が代々守り続けていた

その花々を助けてあげたい。

それは本当に希少な存在で、そしてこの幼い兄妹にとっては

きっと最後の希望でもある。

犬にその全てを移植させるまで往復させるには流石に時間がかかりすぎる。

リッチに転移の魔法で何とかならないか聞いてみたが

流石にそんなことはしたことが無いと言う。


『できないか・・・』


その猫のつぶやきと「まぁ、仕方ない」とそれに頷く

皆の行為は技術屋に対する最大のタブーであって、

絶対にやっちゃいけない最大級の煽りだと

いうことはその場にいた誰もが知らなかったことだった。


「できないなどとは一言も言っておらんわっっ!!」


いつも好々爺といった姿のリッチが怒気すらをも通り越して

殺気すら放つその言葉は泣く子を黙らせ、その友や

従者、魔王すらをもその場に凍り付かせた。




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