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32.【変化】

いよいよ光の旅路へと歩みはじめた飛竜と黒蛇を

3匹はその巨体が見えなくなるまで無事を祈りながら見送った。


その間にもフラフラと何の変哲もない木々や岩肌に近づいては

太陽がもたらすその明暗を興味深そうにしげしげと見つめ、

時に思い出したようにこちらを振り返っては巨体の2匹とは違って

もう随分と小さくなっているであろう3匹に向かって翼を広げて羽ばたき、

鎌首を振り回して、もう何度目かわからない別れの挨拶をして

そしてまたフラフラと全てに興味を惹きながら進み続ける2匹の遅すぎる

歩みは猫に少しの不安を感じさせるものであった。


『また、どっかで魔素切れとか起こさなきゃいーけどね・・・』


歌も地面に描かれたそれが何を表しているか解っている様だ。

猫と歌は別れた友を思いながら黒蛇が地面に描いた

王都の見取り図を頭に叩き込んだ。

説明の言葉が解らなかったであろう歌のために補足を

描き足しながら、特に危険と言われた2ヶ所とこれから向かう

ダンジョンは必ず歌にも伝わるように描いて説明した。


もちろん犬は地面に描かれたものなどには興味が無く

何見てるのー??と2匹が熱心に見続ける地面の上を

てててと走ってきて、2匹に苦笑を浮かべさせた。

まぁでも後は現地現物で確認した方が確実だ。

そろそろ自分たちも発つとしよう。


まずの目的地は【拠点】となるダンジョンだ。

真っ直ぐにそこを目指したいところだが王都を迂回する

必要がある。


犬は猫と歌をその頭と背に乗せると頭上から猫が肉球で示す方に

駆けはじめた。





『しかし、こりゃまたでっかい街だね・・・』


犬の脚をもってしても一昼夜かけて迂回路の8割といったところか。

いつの間にか見えた始めた城壁は絶えることなく続いている。

黒蛇の地図からは推し量れなかったが飛竜の故郷の話を

聞いていて良かった。

こんなにもあの小さな地図からくる印象と現物に乖離があるとは。

それこそ魔素を補給できる拠点でもなければ歌は参ってしまうだろう。


もうすっかり暗くなってから随分と経ってしまった。

ここに来るまでに何本もの街道を飛び越え、そして悪路を走破し続けた

犬もさすがにそろそろ疲れているだろう。

街道から離れた位置にある森の中で駆ける犬を止めると猫は

今日はこの辺で休もうと2匹に伝えた。

久しぶりに魔素をほとんど含まない獲物を口にしながら

歌はぼんやりと自らの手を見つめた。


なんだろう?

魔力が変化してる??


特に能力を得たわけでも失ったわけでも無い。

ただ、それでも自らの身体を駆け巡る魔力の性質が

変わったのを歌は感じ取った。

魔物は魔素をその身の限界を超えるほどにため込むことで稀に

別の魔物に【進化】する。だがそれは比較的下位の魔物の身に起こるものだ。

高位に位置する魔物であるセイレーンの自分が【進化】するとは

思えないし、何より自分自身にそんな実感はない。

ただ、わかるのは自分自身の魔力が何らかの変化を起こしたことだけだ。


あっ、ひょっとしてこれかな?


歌はごそごそと別れた2匹の友からの餞別である鱗を取り出した。

飛竜の鱗は上等な装飾品とも見えるほどに美しく黒く輝いているが

その硬い表面の下に内包された魔素の濃さと量は魔物である歌から見ても、

目の前にあって信じられない程のものだ。

魔素が漏れ出ている気配は無いが、もしかしたら身に着けている

自分の魔力に影響を与えているのかもしれない。


『あれ?もう食べるのかい?』


猫に問われて歌は食べないよと「わんわん」と笑って首を振った。

地上で生活することにも慣れて、旅路で膨大な魔素をその身に蓄積した

今の歌は2,3日くらいであれば魔素を食べなくたって平気だった。

でもそういえば、これはいざというときにお食べって渡されたものだ。


「(これ・・・)」

「(私の牙で、かじられるのかなあ・・・?)」




小さき者たちの【友】となったのであろう3匹の【魔物】たちにも

【女神】は自らの力を分け与えた。

とはいえ、まだよくわからないこの世界の【魔物】に大きく自らの力を

分け与えるのには、まだ少し憚られた。

それに世界を隔たる壁を超えてどの程度、力を渡せるのかもわからなかった。

それは【魔物】たちの行動を見守り続けるために見失わないようする

GPS代わりになる様なごく少量の力のつもりだったのだが、

信仰を得て急激に力を得た女神は自分のその力とその量を見誤った。

【魔力】の扱いはこれ以上無いほどに長けた【魔物】たちは知らず知らず

自らの【魔力】と【女神】の力をその身で混ぜ合わせ、その性質を

大きく変化させていった。

尤も、3匹の【魔物】たちは誰一人としてそれに気づいていなかった。

誰もがそれをおくびにも出さないので世界の壁を超えて見守る

【女神】もそれに気づくことは無かった。




『見たかっ!?』

『今、星が流れ落ちたぞ!?』


『そんな訳ないでしょう・・・』


『ほ、本当だっ!!』


飛竜と黒蛇は王都より少し離れた丘の上であまりにも美しい満天の星空を

あんぐりと口を開けて飽きもせず、ずっと見上げていた。

3匹の新しい【友】との、そもそも敵同士だった2匹との間でも

笑いあって進む旅路は本当に楽しいものだった。

そもそも【友】と呼べる存在は互いに存在していなかった2匹にとっては

こうして静かに夜空を見上げる時間より談笑している時間の方が

長かったのだ。

3匹の【友】と別れ、これからの期待と少し寂しい気持ちになった

2匹はふと夜空を見上げ、その星々の優しい光に魅入られたのだ。

魔力の変化は感じ取ってはいたが


『(こいつと一緒にいると、何か魔力が変わるな・・・)』

『(いや?地上に出たからか?)』


と内心思っていた程度であった。




『星が流れて落ちたっ!?』


『そうであろうっ!?』

『うぬの魔力でどこに落ちたか探せぬか??』

『いや、今すぐ飛んで追いかければ・・・』


『地上での魔力は禁止っ!!』

『ちょっと前に痛い目みたばっかりでしょう!?』


2匹のそのやり取りを【女神】は新しく顕現させたモニターで

微笑みながら見守っていた。











原神、ナタが面白すぎてホントにヤバい。

ただ竜たちがいちいち可愛いのはホントに良くないと思います。

宝箱や素材のために狩る時にホントにごめんな~っごめんな~っ

って心が悲鳴をあげるわ・・・

釣った魚の腹開いたら卵入ってた時の気分。

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