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31.暫しの【別れ】

原神、ナタが面白すぎてヤバい。

小さいとはいえ魔素を産み出すダンジョンに身体を突っ込んでいた

黒蛇はその感知能力を惜しみなく発揮して遠く離れた【王都】を探った。

手近な木を折って咥えるとまだ見えてもいない王都の

見取り図を地面に描きだした。


『こことここ、それにここには地下道があるね・・・』

『地下といっても魔素は感じないからダンジョンじゃない』

『ニンゲンが掘った道だろうね』

『見張りもいないしここが一番、王都の中に入りやすいと思う』

『何のためにあるんだろうね?』


『緊急時の避難用ってとこかねぇ・・・』

『本当は隠してあるんだろうさ』


そんなものまで事も無げに見つけてしまう黒蛇の

感知能力には素直に猫も驚いてしまう。


『で、気をつけなきゃいけないのが、こことここ』

『魔素を帯びたニンゲンの数がやたらと多いね』

『はっきり言って強くは無いんだけど・・・』

『魔力を使えない状態でやり合うんならこの数は骨が折れそうだ』


それからも王都をまるで丸裸にするように黒蛇は詳細を描き続けた。


『さっきの、この地下道は拠点にできそうかい?』


少年の気配は今は王都より西の方にある。

基本的には追いかけるつもりだが例の【王の路】が気懸かりだ。

二の轍は踏みたくない。

まずは王都に潜入して少年の現状調査だが、場合によっては

ここで少年を待つのも手だろう。


『う~ん・・・』

『厳しいと思うけどね』

『全部、私が本当にギリギリ通れるくらいの、ただの路だよ?』


黒蛇はちらりと犬を見やった。

ここまでの短い道中だけで、この新しい友の性格や性質が解ってしまうほど

本当にそれは好ましく思うところでもあるのだけど、

それは単純明快で真っ直ぐそのもので理解は容易い。

そしてそんなこの子のその性格では単純な一本道の拠点でじっとしているなんて

無理だろう。

それに魔素のない拠点では同族である歌にも負担がかかる。


『遠すぎて私にも正確には感知できないけど』

『王都を越えたその向こう側からは強い魔素を感じるの』

『きっとダンジョンがあると思う』


『ようやく我の出番か』


飛竜は2匹が顔を出す入り口から窮屈そうに翼を出すと

黒蛇の描いた王都の向こう側を指した。


『拠点と言うならばここにある山の中腹にダンジョンがある』

『かつてはニンゲンどもの言う王都の繁栄とやらを産み出した

 深い深いモノがな』

『今となっては・・・我の【故郷】と言えるだろう』


『あんた、知ってたなら最初に言いなさいよっ!!』


『す、すまぬ』

『我とて、うぬの王都の話は興味深いものであったのでな・・・』


【魔王】たちは歌と違って人の住む街の見学ツアーなど

流石にできるものでは無かった。

これからの計画のために熱心に黒蛇の話を聞いていた猫とは

違った目的で飛竜も王都の話を熱心に聞きいっていた。


『でも、それならどうするの?』

『あんたの【故郷】なら、私らも一緒に行ってみてもいいけど・・・』


『必要あるまい』

『我らの旅は始まったばかり』

『振り返るのにはまだ早すぎるであろう』

『だが、そうだな・・・』

『我が【故郷】を離れてからは幾分か経っている』

『我と同じ魔物が産まれていても不思議ではない』

『我らもついてゆく方が良いか?』


【友】という定義は曖昧で本人にしかわからないものだ。

ただ毎日何となく一緒に過ごしている相手が【友】であろうか?

打算なく自分をさらけ出せ合える相手こそが【友】であろうか?

もしかしたらただの損得勘定で常に共にする相手こそ【友】なのかも

知れないし、ただただ何となく波長が合ったのか、いつの間にか傍らに

いるものこそが真の【友】なのかも知れない。

いずれにせよ、それは互いに知り合ってからの長さが問題となるでは無い。

乱暴にまとめれば【友】とはまるで外にいる【家族】の様な存在であろう。

そして【家族】はいざとなれば、互いにその安否がどうしようもなく

気になってしまって常に傍らに置いておきたい庇護欲を沸き立てるものだ。

尤もその考えは相手を下に見ている言わば尊厳を踏みにじる様な傲慢で

非礼な行為であって、それ故に【家族】を憎むものだっているのは事実なのだが。



本当に短い間でも5匹たちは互いに【友】と呼べる存在になっていた。

猫は最初はとんでもない世界に来たものだとは思っていたがこうしてみれば、

こちらの世界に来たことにより初めて【友】を得た。

猫には今まで【子分】呼べる存在はいても【友】と呼べる存在は

ずっといなかった。

それは飛竜と黒蛇も同様で、初めて得た【友】の安寧を確かめてから

自らの道に進もうと思うことは言わば当然のことであった。


【友】の自分たちを危惧するその言葉に猫は思わず破顔した。


『あんたたちは、あたしらより自分のことを考えな!』

『次に道中で魔素が切れてもダンジョンまで引っ張れる奴は

 いないんだからね』


『『ははっ・・』』


自らの失態を知っていて、それを当然のように指摘する

猫の言葉に【魔王】たちも破顔した。


『では、また会おう』









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