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事件にならない事件  作者: 七海
6/6

2週間

引越し先に荷物はもうあった。


全てが新しいもので、思い出のあるものも何もかも無くなっていた。

小学校の卒業アルバムすらない。


大人二人の部屋にはにはテレビ、テーブル、小さなタンス、ベッド。


私の部屋にはベッド、机。


キッチンに冷蔵庫。


3LDKの中にこれだけ。


「どうして?他のは?私のタンスは?服は?部屋にあったものは?」


聞きたかったけれど、いつも奥の部屋でドアを閉めて引きこもって酒を飲んでいる大人達には聞きづらい空気だった。


私は一人で住んでいる気分だった。

でもそれは私にとって快適なものだった。


中学校に入学する手続きだけはしてくれていた。

後は一人で中学に通うための用意をした。


学校のものに名前を書いたり体操服にゼッケンつけたり制服を取りに行ったり。


暇なときは絵を書いて遊んだ。


テレビの音が聞こえると見たくなるので、私の部屋のドアも閉めた。


何も聞こえないのは本当に快適だ。

特に母のあの声が聞こえないのがいい。


でも、トイレとお風呂は1つだから時々会う。


男の人、父、お父さん…ぎこちなく呼ぶ。


でも嫌いだった。


ニヤニヤ、ニヤニヤ。


いつも会うと笑ってた。

風呂上がりに隠す場所がないから裸を何度も見られた。


ニヤニヤ。


脱衣場、仕切りがあれば良いのになっていつも思ってた。


気持ち悪い。


県外に行くなら早く消えてくれたらいいのに。


学校が早く始まって欲しかった。


そんな生活が二週間続いた。


「いつお母さん達は引っ越すの?」


聞いたらやっぱり殴られ蹴られた。


私を見る母の視線は変わってしまった。

見下ろすような冷たい目で睨むのだった。


なぜ睨むんだ、汚いものを見るように殴り蹴り、見下すような冷たい視線で睨む理由が分からない。


私が悪い子だからなのかな。

まだ幼かった私はそう思っていた。

もう捨てられたくないから必死だった。


ピップエレキバンに付いているツボの場所を覚えて指圧をしたり料理を作ったり。

好かれていると思いたくて。


そんなわけないのに、そんなこと思ってた。


本当に私は馬鹿だった。

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