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歩きながら考える

 大好きな作家さんが昨年の暮れに亡くなって、まだまだ読めると思っていたので呆然とした。一度もすれ違えないままニュースのテロップになってそれがお別れ。何かしら文学を続けていれば会える日もあるかも知れないと考える夜もあった。とても好きだった。Instagramのアカウントはご遺族が続けて下さるそうだ。死の予感を全く匂わせないまま、猫のようにすっと消えた少し年上のお姉さん。本を手に取る度にこの方は私の心と近いものを抱えているのだなと慕っていた。

死んでしまっても続く、多分配偶者の方と編集者の方からの手紙のような内容のInstagramをたまに覗きに行くのが習慣だった。なのに、鍵アカウントになっている。昨日見たら‥どうしてかな、気になるな、フォローリクエストは多分通らないだろうな。

私も鍵をかけてる。


周りに理解者が少なくて、孤独な気持ちで毎日通学路を歩く。遅刻確定でも走らずにただただ、プラスチックに熱を加えたような異臭のする町工場の前でラジオ体操が始まり、使っていない小さな車教をショートカットして、今は遊ばない友達の家の前、曲がると牛小屋、細い川には赤い橋が架かる。学校まで、まだまだある。見渡した頃には過呼吸症状が出た。過呼吸だとわかったのはそれから5年程たってからだった。ロッキンオンジャパンでCHARAさんがペーパーバック法で凌いでるインタビューを読んだ。誰も教えてくれなかった事をいつも教えてくれるのは、遠い人からの手紙越し。あの頃、年の離れた姉と家族だったが、涙目の私を見て、なんでまつ毛が濡れてるの?と聞かれた。息が苦しくて目が潤むから、と答えた。姉は息が苦しい事を心配はしなかった。子供の頃から仮病を使って学校を休む私を嘘つき認定してたのでそんな雰囲気だった。姉から睫毛が長いねとよく言われた、自分は短いとも。

 体の症状を不安に思いながら答えは出ず、CHARAさんの記事を読む。しばらくして過呼吸症と言う言葉をテレビ越しに耳にした姉から心配の言葉をかけられても、この人は目の前の妹よりテレビを信じるんだなとがっかりした。

本を手に取るとほっとする。言葉が愛が詰まってる。

私の知らなかった言葉を沢山教えてくれた山本文緒さん。この人もせつないし、辛いんだと感じさせてくれたお姉さん。わがままな主役たちを遠目で見つめて嫌いになれないほっとけないと暖かい眼差しをおくってる。言葉にならなかった気持ちが細い糸のようで、指で摘んで眺めることが出来る。自分のことを買い被って、つまらない答えを返す人を見つけるとひどく傷つき、誰も信用しないまま、思春期を通ってきた私は鞄にいつも本が入っていた。

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