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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ファンタジーな異世界に召喚されたら銀髪美少女が迫ってくるんだが?

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魔法陣

 学校での一日が終わり、陽那と結月とアサカとセフィリアと共に帰路についていた。


「明日からの三連休何する?」


「樹と一緒なら何でもいいよ」


俺の問いかけに、緩い口調で答える陽那。


「私も樹と一緒なら箱庭でまったりでいいよ」


 結月も緩く同意を示した。


「それだと、いつもどうり鍛錬とイチャイチャばかりして連休終わっちゃうよ?」


「それでも全然良いよー」


 アサカも緩く返事をしたところで、セフィリアが何かを思い出して口を開く。


「あ、そういえば社長がシエラスに面白そうな遺跡が発見されたって言っていたわ。この機会に観光しに行く?」


「面白そうってルイさん基準でしょ? 絶対ハードだからやめとくよ……」


 そんな感じで、四人の美少女達と楽しく談笑しながら歩いていると、突如、俺達の足元から眩い光があふれ出て、白い光の線で描かれた魔法陣が出現した。


 俺と陽那と結月とアサカは、瞬時に危険を察知して魔法陣の外に退避したが、固有スキルの性能差のせいだろうか、コンマ数秒反応が遅れたセフィリアは魔法陣に捕まってしまった。


 魔法陣の輝きが強くなり、何かの魔法が発動しそうだ。魔法陣からは強力な魔力を感じる。今のセフィリアでは自力で抜け出せそうにない。


 俺は咄嗟に魔法陣の中に取り残されたセフィリアの元に戻り、抱き上げて脱出しようとするも、魔法が発動して俺とセフィリアは光に包まれてしまった。


 この感じは……、転移ゲートをくぐった時みたいな感覚だ。これは転移魔法……なのか? 




 * * *




 魔法陣と共に、光の中に消えてしまった樹とセフィリア。突然の出来事に陽那、結月、アサカは動揺している。


 陽那は慌ててスマホを取り出すと、ルイに電話を掛けた。


「ルイさん、足元に突然魔法陣が現れて、樹とセフィリアが光に包まれて消えちゃった。どこかに転移させられたんだと思うんですけど……まさか、ルイさんか、ピルロ―クの仕業ですか?」


「いや、私達は知らないよ。それに、魔法陣だと? ファンタジーでもあるまいしそんなことが……。ともかく、どこに転移したのか探してみよう。すぐに会社まで来てくれ」


 結月が表情を曇らせて呟く。

 

「樹って、転移させられる呪いとか掛かっているのかな?」


 三人は揃って苦笑いをしている。アサカは、あることに気が付き呟く。


「セフィリア、樹と二人っきりだね……」


 三人はしかめっ面で沈黙し、シエラスにあるエルピスの社屋に転移した。




 アサカが陽那と結月をエルピスの建物内のとある一室に案内した。


 観測室と表示された部屋の中には、大きなモニターが奥の壁面中央に配置してあり、複数の端末が並んでいる。それらを操作するオペレーターも数名いた。


 ルイはその部屋の端末を使って何か作業をしており、三人が来たことを確認すると、ルイは作業を中断して説明を始めた。


「樹とセフィリアは、異空間の世界に飛ばされたようだ」


 陽那と結月は神妙な顔をして、黙って聞いている。アサカはルイに質問した。


「箱庭みたいなところに飛ばされたってこと?」


 ルイは頷き、魔導器であるスマホを取り出して三人に見せる。


「このスマホは魔力と電波を組み合わせ、さらに転移ゲートの技術を応用してどこにいてもエルピスのサーバーと常時接続しているのだが、樹達は転移ゲートが開通していない空間にいるため、接続が切れてしまっている」


「しかし、このスマホには特殊なマーカーを仕込んであから、宇宙の果てだろうが、異空間だろうが、これを持っていればどこにいるのか捕捉することが出来る。とはいっても、これも古代の技術の応用で仕組みは完全には解明されていないがね」


 ルイは自嘲気味に軽く笑った後、説明を続ける。


「基本的なところから説明すると、地球とレジーナは別の宇宙とか異空間というわけでは無い。同じ太陽系の惑星であり、太陽を挟んで真逆の位置にある」


「地軸の傾きも同じで、公転軌道も速度も全く同じだ。さらには全く同じ大きさの月もある。また、陸と海の比率もほぼ同じだが、大陸の位置や形状は異なっている。偶然なのか、何らかの因果による必然なのかは分からないが、日本とシエラスの位置は緯度と経度がほぼ同じだ。そのせいで、日本とシエラスは季節が真逆になる」


 陽那は、確かめるように小さく呟く。 


「地球から見ると、太陽の向こう側にレジーナがある……?」


「そうだ。だが通常の方法では地球からレジーナは何故か観測できない。古代の技術を研究する過程で、その事実に気が付いたのはここ後年の話だ」


 レジーナが地球と同じ太陽系の惑星だ、などとは思っていなかった陽那と結月は「そうだったんだ」と漏らす。


「樹達が現在いるのは異世界であり、箱庭や孤島のような異空間だ。でも、この端末を持っていればどこにいるか観測できるし、転移ゲートを開通させればそこに転移することもできる。現在、樹達のいる場所に転移ゲートを開通させる作業をしている。1~2時間くらいで転移できるようになるはずだ」


 陽那が顔を引きつらせてルイに問う。


「まさか、いつものみたいに時間の流れが速いとか?」


「その通りだ。倍率は現在計測中だ」


 ルイからの説明を一通り受けた後、陽那、結月、アサカは応接室に通され、転移ゲートが開通するまで待つことにした。


 三人は落ち着かないのか、頻繁にスマホで時間を確認している。

 

 結月がため息交じりで「樹とセフィリア、くっつくんだろうな……」と呟くと、アサカが冗談っぽく「くっつくどころかセフィリアが正妻になってるかもよ」と笑う。


 すると、陽那は即座に「あり得すぎて笑えないよ!」と不機嫌そうに言い返した。




 一時間ほどたって、三人の元へ転移ゲートが開通したことをルイが知らせに来た。


「先ほどの観測施設からは、異世界を含め無数に存在する星を観測できるのだが、生物が活動できる環境の星が発見されるのは稀だ。まして人間が存在している星は地球とレジーナ以外は発見できていない」


「観測の結果、樹達が今いる世界は確実に人間がいる。これは大発見だ」


「それにしても、何者が魔法を使って異世界の人間を転移させるという、極めて高度な芸当をやって見せたのか……、興味深いな」


 顎に手を当てニヤリと笑うルイに、アサカはまくし立てる。


「ルイ姐! ニヤニヤしてないで早く行こうよ! 急がないと樹がセフィリア一人のモノになってるかもよ!?」


「不吉なことを言わないで」


「セフィリアに独り占めなんてさせないんだから!」


 三人の騒がしいやり取りに構うことも無く、ルイはスマホを操作して転移ゲートを発生させた。


 ルイ、陽那、結月、アサカはそれぞれの思惑を胸に、樹とセフィリアのいる異世界へと転移した。

 

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