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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

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反省会

 ルイさんとピルロークとの話を終え、俺、陽那、結月、アサカ、セフィリアの五人は箱庭のログハウスに戻ってきた。


 リビングのローテーブルをどけて、そこに俺は正座をしている。正面のソファーには美少女四人が微笑みながら座って俺を見ている。


 俺が冷や汗を垂らして、心臓をバクバクさせていると、陽那が口を開いた。


「樹はセフィリアに『俺の恋人になれ』って命令してたよね?」


「はい、言いました。でも命令のつもりでは……」と弁明するも、キッと睨まれ言葉を失う。


 結月はドス黒いオーラを放ちながらも、笑顔のまま優しい口調で続く。


「ルイさんにセフィリアと魔力を混ぜて武器を作るように言われた時の樹の顔、いやらしかったなぁー」


「そんな! 俺はただ……」


「言い訳は見苦しいよ」


 結月の微笑みを湛えたまま放たれるプレッシャーに、またも俺は言いかけて黙る。


 さらにアサカも膨れっ面で俺を咎める。


「セフィリアに指導して欲しいって、お願いされてるときもニヤニヤしてたよね?」


 ……もう、俺が何を言っても無駄だな。


 「有罪」 「有罪だね」 「有罪でしょ」


 陽那、結月、アサカが口々に俺を断罪する。


 ところで俺の罪ってなんだ? セフィリアを恋人に設定したことか? それともセフィリアの可愛さにデレデレしたことか? まだ手も握ってないと思うけど……。


 よく分からんが、俺は頭を床にこすりつけて三人に許しを請う。


 黙って様子を見ていたセフィリアが俺をかばった。


「別に、あなた達からイツキを取り上げようってわけじゃ無いんだから、イツキをそんなに責めないで! 私がイツキと魔力を混ぜて、固有武器とやらを作れたらそれ以上は求めないから!」


 結月がため息まじりで溢す。


「魔力を混ぜるだけ、ね……」


 陽那が半眼で俺に問いかける。


「で、樹はどうするつもりなの?」


 いや、寧ろどうしたらいいのか教えて欲しいんだけど?


「どう、って言われても……」


 陽那、結月、アサカは俺の目をジッと見つめ、少しの間沈黙する。俺の思考を読んでいるのか……。そして陽那が深くため息を吐いた。


「やっぱりこうなったか。最初に樹がセフィリアを見たときからこうなるだろうな、と思ってたよ」


「でも、まだ何もしてないよ!」


 俺が頑張って反論するも、即座に結月が言い返す。


「まだ、でしょ? セフィリアに迫られたらすぐに堕ちるよね?」


 アサカも結月に続いて俺を責める。


「そうだよ! イツキはチョロい子なんだから」


 今までの事を思えば当然かもしれないけど、さんざんな言われようだ。俺が首を垂れているとセフィリアが口を開く。


「私は無理に迫ったりしないわよ! でもイツキが迫ってきたら、拒否はしないけど」


 セフィリアに迫っても拒否されないのか!? って俺は何を考えてるんだ……。


「樹、ちょっと庭に出ていて。私達だけで話すから」


「あ、ああ。分かった」




 * * *




 ――樹が出て行った後の室内にて、四人の女子達のやり取り。


 陽那は神妙な面持ちで、セフィリアに問う。


「セフィリアは 樹をどう思っているの?」


「……強い男。あと、優しいかな」


「そんな事を聞いているわけじゃないって分かってるよね?」


 陽那の指摘にセフィリアは一瞬言葉を失うが、頬を染めながらも、しっかりと話し出した。


「大好き。強い所、それをひけらかさない所、素直で飾らない所、笑うと可愛い所」


 陽那は眉を顰め、責めるような口調だ。


「うわ、やっぱり樹に惚れてるんだ。樹の恋人の前でよくそんなことを言えたよね」


 セフィリアは開き直り堂々と応じる。


「私だって、恋人だけど?」


「セフィリアはまだ樹とキスもしてないでしょ!」


「キスしたら私もイツキの恋人の一人として認めてくれるの?」


 苛立ちで声が少しづつ大きくなっていく陽那と、冷静に言葉尻を捉えるセフィリア。そこへアサカが口を挟む。


「イツキならすぐにキスしそう」


 結月も瞼を伏せて呟く。


「樹がセフィリアのことを好きだと言ったら、私達は認めざるを得ないけど……」


 セフィリアは自信満々に胸を張った。


「ならすぐに言わせて見せる。そうしたら、イツキとの関係を認めてくれるのね?」


 その時、セフィリアのスマホに着信があった。少しの間話した後、通話を切る。


「私は誘拐されていた件に関して、報告書をまとめないといけないから、今日の所は帰るわ。イツキの件、約束だからね」


 そう言い残して、セフィリアはシエラスに転移して行った。


 残された三人は顔を見合わせる。陽那は結月の言葉が気に入らなかったようだ。


「結月! あんなこと言って良かったの?」


「良くはないけど……。陽那なら樹にセフィリアを恋人にしないでって強く言える? きっとアサカの時みたいに悲しそうな顔するんだよ?」


「う……、樹があの顔すると思ったら、確かに言えない」


「私だって、樹が私以外の女の子を好きになるのは嫌だよ。でもそれで樹が幸せなら、私は我慢しようと思う」


「結月ってドMだよね」


「そうかな……。陽那も似たようなものじゃない?」


「……うん」


 陽那も色々文句は言うものの、最後は樹の言いなりだということを自覚しているので、頷く以外になかった。


 アサカは陽那と結月の話がまとまったのを確認すると二人に聞く。


「樹がセフィリアを好きって言うまでは、セフィリアは樹当番から除外でいいよね?」


「「異議なし」」


「そろそろ樹を呼ぼうか?」


 陽那は樹にメッセージを送信した。




 * * *




 ――俺は陽那に言われるままログハウスから出て、庭にあるベンチに腰掛けている。


 なんとなく空を見上げる。箱庭は夕日も綺麗だなぁ……。


 俺がセフィリアにデレデレしていたから、あの三人が怒るのは当然だよな……。


 それにしても、セフィリアって可愛いよなぁ。でもこれ以上恋人を増やすわけにはいかない。しっかりしろ、俺。


 セフィリアに魔力を混ぜたいってお願いされてしまったな……。


 俺からすると魔力を混ぜるのは、えっちするのとほとんど同じだから、あんな表情でえっちしようってお願いされているみたいで興奮してしま……、じゃなくて、ホント、しっかりしろ! 俺。


 一人で葛藤していると「戻って来ていいよ」とメッセージがきた。どうやら話は終わったみたいだな。


 俺は両手で自分の頬をパシッと叩き立ち上がると、ログハウスのリビングに戻った。




 ソファーに座っている陽那、結月、アサカの ドス黒いオーラは消えている。セフィリアの姿は無い。


「セフィリアなら、誘拐されていた件の後始末があるからって帰ったよ」


 アサカが言うので、「そうか」と俺は返事した。


 俺は三人の顔色を一人ずつ窺う。何を話していたんだろうか? もう、怒ってはいないのか? 恐る恐る声を掛ける。


「それで……、あの……」


 陽那は両腕を組んで俺を見ている。今は怒っていないように見える。


「樹の好きなようにすればいいよ」


「えーっと?」


「どうせ私達が何を言っても無駄でしょ? その代わり今まで通り、きちんと私を可愛がってよね」


 もちろん可愛がるよ? しばらく説教が続くと思っていたが拍子抜けだ。結月も今は怒っていないように見える。


「私はもう樹以外の人なんか考えられない。たとえ樹の好きな女の子が四人になっても、私は樹と一緒にいたい。でもこれ以上は恋人を増やさないで欲しいな」


 アサカもいつもの調子に戻っている。


「私は最初に言った通り、イツキと一緒にいられるなら何でもいいよ」


 あれ、なんか恋人が増えたことになって無いか? セフィリアを俺の恋人にしたことになってる?


「ちょっと待って。俺はバフのためにセフィリアを恋人にはしたけど、そういう関係にはなって無いよ!」


 陽那は半眼で視線を送りつつ、顔を俺の目の前まで寄せて呟く


「ふーん。まだ自分では気が付いていないんだ? まぁ、樹がそう言うなら今はそれでいいよ」


 結月は含みを持たせて言う。


「意外と自分の気持ちって、自分では分からないのかもね」


 アサカも俺に近づいてきた。


「はたから見てると、見え見えなのに……」


 アサカは俺の肩をポンッと軽く叩き微笑む。


「今夜は一人でよく考えてね。明日からは順番に樹当番と一緒だからね」


「まさかセフィリアも樹当番に?」


 俺の問いに結月が答える。


「まだセフィリアとは何でもないんでしょ? だから樹当番も無しだよ」


「そう……だよね」


 陽那が結月とアサカに小声で話し掛けている。


「うわ、露骨に残念そうな顔してる」


 結月は俺の方を見ながら頷いている。


「うん、セフィリアとやる気満々だった」


 アサカは苦笑いを受かべて何やら呆れている……?


「あれでセフィリアに惚れてる自覚無いんだね」


 あの、皆さん、聞こえているんですけど……。


 その後、一人ずつハグとキスをして解散となった。 




 自室のベットに寝転んで今日のことを色々考えている。


 夜一人でベッドに横になるのはいつ以来だろう。目をつむるとセフィリアの笑顔が浮かんでくる。


 俺はブンブンと首を横に振って「こんなのはダメだ。俺はもう三人も恋人がいるんだ」と自分に言い聞かせて眠りについたのだった。


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