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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

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無事か?

 ルイさんとピルロークを倒した後、三人が捕らえられている空間につながっているという転移ゲートに急いで駆け込んだ。


 転移ゲートを抜けた先は、箱庭にある俺達のログハウスのリビングによく似た雰囲気の部屋だった。


「みんな無事か!?」


 すると三人はくつろいだ様子でソファーに座って、複数設置してあるモニターを眺めている。陽那が俺の方を向いて気まずそうに声を掛けた。


「えーっと、樹……。お疲れ様」


 これはどういう状況だ? 俺は思わず「……はい?」と間の抜けた声を出してしまった。結月も俺の方を見ながら話し掛けてきた。


「あのね、言いにくいんだけど、私達が連れ去られたのは……。何と言うか、ドッキリというか……、まあ、そんな感じだったんだよ」


 そんな感じって、どんな感じだ? アサカも二人に続く。


「ルイ姐と、ピルロークがもうすぐ来て説明するから、ここに座ってお茶でも飲んで待ってて」


「えっ、あ、あぁ」


 ドッキリってなんだよ。一気に緊張が解けた俺は、脱力してソファーに深く座った。


 少しして、セフィリアもここに転移してきて、俺と同様のやり取りをしてから、ソファーに座った。


 アサカが差し出したお茶に、口をつけながら待っていると、ルイさんとピルロークがこの空間に転移してきた。


「いやー、ひどい目にあった。もう少し手加減してくれても良かったんだが……」


 ピルロークは俺に文句を言うが、こっちはそんなこと知ったことじゃないって。


 しかし、放置するわけにもいかないので、治癒魔法を使って怪我を完治させてやった。ルイさんもこの空間に転移してきたと同時に倒れ込んだので、アサカが治癒魔法を使って治した。


 ピルロークとルイさんはソファーに腰掛ける。俺は二人を半眼で見つめ、問いただす。


「どういうことか説明して下さい」


「結論から言うと、私が樹と全力で戦いたかったからだ」


 それだけの理由かよ……。俺はため息をつく。


「それなら、言ってくれればいくらでも手合わせしたのに……」


「それでは駄目だ。私の固有スキル『真理を探求する者』は対象を観察したり、実際に戦ったりすることで分析し、相手の固有スキルの能力を自分の能力にすることが出来る。だが、樹の固有スキルは長い時間かけて観察し、何度か手合わせしたが中々私のモノにできなかった」


「研究者としては出来ない事があれば、工夫を重ねて出来るようにしたいと思うものだ」


 ルイさんらしいと言えばそうなんだけど、こっちの身にもなって欲しい。そんな俺の心情など気にもしないで、ルイさんは淡々と続ける。


「樹は普段は無意識に力をセーブしているのだろうと私は推測した。そこで、どうすれば樹と本気で戦えるのか考えて、この計画を思いついた」


「なんて迷惑な……。それで、俺の能力はコピーできたんですか?」


「今のままでは無理だ。樹の本気の攻撃を受けて分かったが、樹の魂には、陽那と結月とアサカの魔力が大量に混ざっていた。そのせいで測定できる表面上の魂力よりも、かなり強いようだ。ひとまず、樹の固有スキルをコピーするのは諦めるよ」


「次に俺の固有スキルのコピーを試すときは、変な小細工しないで下さいよ!」


「どうかな? またその時考えるよ。次は趣向を変えてもっと楽しめるようにしたいものだ」


 何を言っても無駄か……。俺は、ついため息が漏れる。


「そもそも、ピルロークってルイさんの敵のはずですよね?」


「以前、説明したとは思うが、私がレジーナに転移した際に世話になっていたのがピルロークで、会社を立ち上げたのもピルロークと一緒だった。立ち上げた会社が軌道に乗ったころ、ピルロークは私に求婚をしてきたんだ」


「球根?」


 陽那と結月とアサカはすかさず「求婚!!」と声を揃えてツッコんだ。三人は何かを訴えるような目で俺を見ている。しまった、完全に藪蛇だった。


 ルイさんはそれらのやり取りをスルーし、やっぱり淡々と話を続けた。


「私はそれを断った」


 ピルロークは、切なそうに苦笑いをしながらぼやく。


「言い方がまた冷たかったんだよ……。研究したいから無理って一言だよ。ひどいだろ……?」


 俺と陽那と結月とアサカ、それにセフィリアも顔を引きつらせて苦笑いを浮かべた。ピルロークは続ける。


「それで心がボッキリ折れて、ルイから離れることにしたんだ」


「ルイに振られた私は、シエラスから離れ、放浪の旅をしていた。その間にもルイの会社エルピスは急成長をしていて、私は遠くから見守るつもりだった」


「しかし、エルピスの急成長に伴い不利益を被ることになった連中や、シエラスが経済的に急成長をして、面白くないと思う国々が出資してできた集団があることを知ったんだ。私はルイを守るためにその集団に加入した」


「もともと私はとても強くて、優秀だったので半年ほどでその集団を乗っ取ることが出来たんだ」


 自分で自分のことを、とても強くて優秀とか言えるのが凄いな。


「それからは、各地にある反エルピス、反シエラスの勢力を探し見つけては吸収していき、まとめ上げて『パンドラ』の総帥として君臨しているんだよ」


「表面上はルイを倒すために活動していたが、本当の目的はもちろんルイを守ることだ」


「潤沢に集まってくる資金を使って、強力な魔導機兵を開発、製造して、各国に売りさらに資金を得る。新技術の研究と、古代の技術の研究にも力を入れた。その成果があの異空間『孤島』であり、魂力の高いモンスターを作り出す設備なんかも開発した」


「また、魂力は高いが社会的にあぶれた者を集めて、鍛えて戦士に育てたりもした。犯罪者となって世の中に迷惑をかける前に、私がうまく使ってやるためにね。幸い『悪の組織』を気取っていると、そういった人種が集まりやすい。そういった手合いは、私が力を見せつけてやると、勝手に心酔してくれるから御し易く便利だから」


「そうそう、箱庭計画で魂力の上がった地球人たちの中でも、犯罪に傾倒しそうな者もスカウトしておいたよ」


「彼らには、四傑や、六苛戦(ろっかせん)十二鬼将(じゅうにきしょう)など、モチベの上がる役職を準備して、定期的にさっき戦った闘技場で試合させ、上位の者を任命している。目標があると人は頑張れるだろ。観客を入れれば、ぼろ儲けだしねぇ」


「この星の人は魂力を上げる為には頑張るけど、技量を上げることに頑張る者は少ないのが難点だよ。その点、地球人は魂力上げも技量の鍛錬も頑張るから、教え甲斐があっていいね。私が直々に指導したカズヤ君は中々に強かっただろう?」


 やっぱり神速さんは、ピルロークが直接指導していたのか。道理で剣技がさまになっていると思った。ただ、俺の恋人たちには遠く及ばないけど。


「うーん、強くなってはいたけど、いまいちだったな」


「はは、君は強すぎるからな」


「とまぁ、いろいろ活動していたら、戦力も、資金もかなりの物になっていて、本当にルイを倒せてしまえそうになったんだ。そこで、作戦に失敗した振りをして、孤島と大量の魔導機兵をルイにプレゼントしたんだ。スポンサーの皆さんはご立腹で、後始末は大変だったけど……」


「それ以降は、内緒でルイと連絡を取り合い仲良くさせてもらっている」


 ピルロークは嬉しそうに表情を緩めている。そういえばルイさんも魔力を混ぜて作った武器を持っていたな。


「魔力を混ぜて武器を作ったということは、二人はそういう仲なんですよね?」


「私は樹たちのイチャつく様子を観察して、ピルロークと試してみたんだ。しかしなかなか上手くいかなかった。何度か試しているうちに出来るようにはなったが苦労したよ」


 何食わぬ顔で言い放つルイさんに、陽那と結月とアサカは一斉に「覗いていたの!?」と驚き、悲鳴を上げる。


「どうやって魔力を混ぜて、物体を具現化しているのか確認していただけだ」


 やっぱり覗いてたんだな。多分そうだろうな、とは思っていたけど。陽那と結月とアサカは顔を赤くして俯いてしまった。俺はルイさんに一応お願いをしてみた。


「魔力を混ぜられるようになったのなら、もう観察しないで下さいね」


「しかし、樹の若く、はち切れんばかりの精力は羨ましいな。効率よく固有武器に魔力を込めることが出来る」


 あっ、話を変えた。この人、都合の悪いことは基本スルーするな。


「固有武器に魔力を込めるのに精力は関係ないのでは?」


「何を言っている? 魔力を混ぜたら止められなくなるのは、樹も良く知っているだろう。私がムラムラしていても、ピルロークはフニャフニャなのだぞ! それでもいいのか!?」


「知りませんよ、そんな事。精力の増大する魔導器なり薬なり開発したらいいでしょ?」


「現在、我が社の開発リソースの大半を割いて、鋭意開発中だ!」


「ソウデスカ……」


 どうやら俺は中年二人(片方は見た目だけは若い)の道楽に振り回されただけだったようだ……。


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