入れ替わりの魔導器
しばらく美少女三人に言葉で責められているのだが、三股しているから仕方がないので我慢して聞いていた。
まぁ、彼女達にからかわれるのも、それほど悪くは無いのだけども。でも、もういい時間だな。
「そろそろ解散の時間では……」
俺が三人の顔色を窺いながら言うと、結月が何かを思い出したようだ。
「あっ、そうそう、樹当番決めといたから。今夜、樹と過ごすのは私だよ」
陽那が「明日は私ですー」と続くと、アサカは「私はあさってだよ……」としょんぼりしている。
何かの勝負をしてアサカが一番負けたんだろうな。
俺は三人を軽く抱いてキスをしてから、自宅へと転移した。
――その夜。
俺が箱庭に転移してログハウスに入ると、リビングから結月が出てきて俺の手を引く。
「早速、部屋に行こ。今日はルイさんに面白そうな魔導器を借りてきたんだ」
面白そうな魔導器? 今日、遺跡の部屋で見つけたやつかな。レジーナの古代人も大人なおもちゃを使ってプレイしていたんだろうか?
結月の部屋に入ると、結月は輪っか状の魔導器を二つアイテムストレージから取り出した。一つを俺に手渡して、一つを自分の頭にかぶって額に装着した。
「樹もこれを頭につけてみて」
俺は言われた通りにその魔導器を頭に装着した。頭頂部から輪っかを通して額に取り付ける。伸縮性があり額にぴったりと吸い付くように装着できた。
俺が装着したのを確認すると結月が「ベッドに横になって」と指示するので、いわれた通りに横になる。結月も俺の隣で横になった。
今度は「魔導器のスイッチを入れて」と指示するので魔導器のスイッチを押した。
すると全身に妙な感じがして、目の前が真っ暗になった。直後に視界が戻り何が起きたんだろうと考えていると……。
「うわ、成功した。私、樹になってる!」
喜んでいる男の声が聞こえる。俺はそっちの方を向くと、そこには俺がいた。俺は慌てて上体を起こすと、長い黒髪がハラリと俺の顔を撫でる。さらに肩から胸にかけて重量を感じた。なんか揺れてる……、これは……。
「入れ替わってるー!?」
思わず上げた声が結月の可愛い声だった。
「樹……。反応がベタだよ」
俺が俺をジト目で見ている。
「これは……、入れ替わる魔導器なのか?」
目の前にいる俺が解説を始めた。
「そうだよ。正確には脳への入力される視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚などの全ての感覚信号と、全身の筋肉への全ての出力信号を装着者同士で交換することで、疑似的に体を入れ替える経験が出来る魔導器なんだって。本来は患者の苦痛を医師が正確に体験して、治療に役立てるための医療機器らしいけどね」
「そう……なのか」
俺が呆然としていると、俺の体に入っている結月は姿見鏡の前でポーズを取りながら「結月、愛してるよ」だの「結月、結婚しよう」だの言っては、一人で盛り上がっている。
「結月……。俺の体でそんなことすると恥ずかしいよ」
俺の体に入っている結月は、俺の声を全く気にしないで続けている。俺はため息をついて下を向くと、大きな胸があり、その先にはあぐらをかいて座っていることで、はだけたスカートの裾から除く女の子の白い足と、女の子の股間が見えた。
俺、というか俺が入っている結月の身体の心音が高鳴るのを感じた。
「結月、やっぱりコレ……まずいって」
「え、何が? ちょっとお風呂に行って、樹の身体を隅々まで確認してくるね。樹も私の身体を自由に使っていいよー」
俺の体に入っている結月は部屋を出て行ってしまった。一人残された俺は、両手で胸を持ち上げてみる。自由にしてもいいて言われたことだし、ちょっとくらいなら……。
俺も興味がわいてきたので、結月の身体を見たり触ったりした。当然ちょっとで済むはずもなく、お約束の行動を一通りこなして、気が付いた時にはベッドの上で全裸になってガクガクと震えていた。
俺は息を上げて「結月の身体って、すごい……」と呟くと、男の声が間近で聞こえた。
「樹、私の身体でずいぶん楽しんだみたいだね!」
俺の体に入っている結月は戻って来ていたみたいで、ベッドの横に立ってニヤニヤしながら俺を見ていた。
「うわぁ! ゴメン! あまりに気持ち良かったからつい……」
「いいよ。私も一人でしてきたところだし。男の子の身体ってすごいね。なんかもう、すっきり! って感じだったよ!」
「……良かったね」
「でも……、樹が私の身体を自由に弄んでるのを見たら、また大きくなっちゃった。今日はこのまましよ!」
「え、ちょっと、待って……」
俺の体に入っている結月は、結月の身体に入っている俺の上にのしかかってきた。そのまま唇を重ねて抱きしめられた。
入れ替わった身体の感触を芯まで味わったところで、魔導器を解除した。
結月はとても満足そうな顔をしていた。俺も結月の身体はとても良かったのだが、俺の体に抱かれていたので、いまいち燃えきらなかった。
結月はもう寝てしまったのか。幸せそうな顔して寝てる、可愛いなぁ……。ホントは固有スキルを変化させた今の状態でも、上手く魔力を混ぜられるか実験したかったんだけど。
朝になってから試すか……。俺は寝息を立てる結月の頬にキスをして寝ることにした。
翌朝、体を揺すられて目が覚める。下腹部に異物感を感じるな、と思って目を開けると、目の前に俺がいた。くっ、また入れ替わったのかよ……。
「結月、寝起きに自分の顔にキスされるのはちょっとキツイよ」
俺の体に入っている結月は、そんなことお構いなしで身体を揺すっている。
「男の子の身体でするのって癖になりそう。うっ……」
結月の身体に入っている俺の上に倒れ込んでくる俺の身体……。仕方がないので抱きしめて頭を撫でてやる。時折身震いをしている、余程良かったんだろうな……。
しばらくそのまま待って、余韻も収まった所で「そろそろ戻ってもいい?」と聞くと。コクコクと頷いたので魔導器を解除した。
結月はくたっとして横になっている。
「あのー、結月? ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけどいい?」
「私にできることなら何でもするけど」
「俺の固有スキルなんだけどさ……」
「ああ、恋の支配者ね!」
「……もう名前はどうでもいいよ。固有スキルを変化させた今の状態でも、結月と魔力を混ぜられるか試したいんだけど……」
「いいよ、やってみよ! 月影来て」
現れた瑠璃色の刀を二人で握り、魔刃を使う。二人の青いオーラが混ざり合い、月影にしみ込むように吸収されていく。
以前と変わらず、結月と魔力を混ぜることが出来た。魔力を混ぜることで感じる気持ち良さも同じだった。
「うまくいって良かったよ。これが出来なくなっていたら、固有スキルを変化させた意味がないからね」
「うん、そうだね。ところで……」
結月は顔を上気させて物欲しそうに俺を見ている。もちろん分かってるよ、俺も同じなんだから。
俺が「今度は普通にしようね」と確認すると結月は「うん」と応えたので、そのまま二人は密着してシーツを乱した。
入れ替わってするのも新鮮で良かったけど、自分に抱かれるのは嫌なので、俺としては普通にする方がいいな。
でも結月と入れ替わった状態で、陽那かアサカとするのなら……。などと妄想してしまうのだった。