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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?
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遺跡探索(後編)

 さて、今日も遺跡探索を頑張るか。


 ログハウスに全員揃ったところで、昨日目玉のモンスターを倒した部屋に転移した。ルイさんは既に来ており、合流してボスのいた部屋の奥にある下り階段を下りて三階層へと進んだ。


 階段を下りきると大きな扉があり、見たことも無い文字が刻まれていた。


 なんて書いてあるんだろう? すると、音声アシストが答えてくれた。


「ここまでたどり着いた猛者よ。私の創り出した最高傑作を見て、戦い、そして絶望してくれ」


 うん、断る。帰ろうか。俺はルイさんを見た。


 うわぁ……。なんかうっとりしてる。帰るって言ったら、なにされるか分からないな……。


 仕方なく、俺達は扉を開けて奥へと進むのだった。




 扉の向こうは真っ暗だったが、俺たちが進入すると明かりがついた。


 天井は高く広い。床、壁、天井は、やはり白っぽいコンクリートのような質感だ。柱は無いがやたらと広く、向こうの壁までどだけかあるのか見当もつかない。


 奥の方には強力な魂力の物体があった。見た目には魔導機兵っぽいが、肌に感じる魂力はモンスターのように思う。


 真っ黒い蜘蛛型で、胴体部は球状で2~3mはあるだろうか。目のように見える赤く丸いものが二つ確認できる。本物の蜘蛛のような触覚や顎は無く、つるりとした球状だ


 胴体からは八本の脚が伸びている。一本の脚には関節が一つあり、折れ曲がって体を支えている。最大まで伸ばすと相当長そうだ。胴体と脚のつなぎ目と関節部は、脈打つように揺らぐ赤い光が漏れている。


 その物体はガシャンガシャンと音を立てながらこちらに接近してきた。脚の先は刃のように鋭く、動かすたびに地面に突き刺さっている。


 ルイさんはその物体をジッと視て口を開く。


「古代の魔導機兵か。蜘蛛型の胴と脚は魔導器だな。赤い目のように見える部分に、モンスターが組み込まれている。魂力は約10万が二体だ。動作を制御するコンピュータの代わりと、動力のためだと考えらるが……」


「調べてみないと、はっきりとしたことは分からないな。魔導器部分はなるべく無傷で手に入れたい、モンスターの組み込まれている所だけを破壊するぞ」


 ルイさんは嬉しそうにニヤニヤ笑ってそんなことを言っているが、魂力10万のモンスター二体って普通に苦戦しそうだよなぁ……。


 蜘蛛型が脚をしならせて、一気に俺達の所まで跳んできた。


 速いっ! 俺達は散って回避する。ルイさんは身を躱しながら黒刀で脚に斬撃を入れると、火花が散って衝撃音が響くが傷はつかなかった。


「硬いな。脚の一本一本までモンスターが発生させている障壁で覆われている。倒すには高い火力が必要か」


 ルイさんは冷静に分析しているようだ。


 高い火力ね……やってみるか。俺が結月に視線を送ると瞬時に俺がやろうとしていることを理解してくれたようだ。


 俺と結月は具現化している刀に魔刃のオーラを込めて、同時に同じ部分に斬りかかった。それでも障壁を貫通することは出来なかった。


 くっ、結月と魔力が少し混ざって気持ち良かった。おっと、そんなこと考えている場合じゃない。


 蜘蛛型は八本の脚で鋭く連続攻撃を仕掛けてくるので、俺と結月は一旦モンスターから距離を取った。


 陽那が魔法で光線を放つも、障壁に阻まれて全くダメージが通らないようだ。火球を圧縮した刀を蜘蛛型の胴体めがけて放つも、やはり障壁を貫通することはできなかった。


 アサカは蜘蛛型魔導機兵の周囲の空気を操り、動きを押さえているようだが、それでもかなり速く動いている。組み込まれているモンスターの魂力が高いため、抑えきれないのだろう。


 蜘蛛型は脚を剣や槍のようにして、器用に攻撃を繰り出している。結月はその苛烈な攻撃を物ともせず、舞っているかのような動きで斬り結んでいる。しかし障壁を切り裂いてダメージを与えるのは厳しそうだ。


 固有武器を使えば破壊は可能だろうけど、威力を加減できないのでこの部屋ごと、あるいはこの空間ごと壊してしまいかねない。


 俺達が固有武器を制御できないのは、固有武器のエネルギーの方が俺達の魂力より高いのが原因だと思う。


 ならば俺の魂力をブーストしたら、制御できるかもしれない。パンドラのポンコツ四人組が持っているような魔導器があれば……。


「ルイさん、魂力をブーストさせる魔導器とか持ってませんか?」


「持ってはいるが……」


「俺に貸してください」


「しかし、副作用がある。一時的に魂力が二倍になるが、数日間立つことさえできなくなるぞ」


「いいですよ。アレをなるべく無傷で手に入れたいんでしょ?」


「分かった。だが、なるべく短時間で終わらせてくれ。長時間魂力をブーストしていると副作用も重篤になる」


 俺が「分かりました」と頷くと、ルイさんは俺に向かって腕輪の形をした魔導器を投げた。俺は受け止めるとすぐに右手に装着してスイッチを入れた。


 身体の芯から力があふれてくるようだ。全能感というのか、今ならどんな相手にも負ける気がしない。


 この迷宮を探索している途中で、たくさんの魂力の高いモンスターを倒しているので、俺の基礎魂力は上がっているはず。


 魔導器の効果で2倍になっているなら20万はないとしても15万以上はあるだろう。


 俺はイシュタルを呼び出し魔力を込める。浅葱色の槍はまるで喜んでいるかのように輝きを増していく。今の俺は完全にイシュタルを制御下に置いているという確信があった。


 俺は軽く地を蹴り蜘蛛型魔導機兵に近づく。魂力をブーストしているおかげで、とんでもない速さで移動出来た。


 動体視力や反応速度も上がっている。蜘蛛型の動きがスローモーションみたいだ。


 八本の脚が交互に俺に迫ってくるが余裕で躱せる。あれほど強固だった障壁もイシュタルの一振りで容易く斬り裂けた。力が暴発することも無く、必要最小限の攻撃力に調節できている。


 蜘蛛型の懐に潜り込んで、二つの赤い目のように見える、モンスターが組み込まれている部分に浅葱色の槍を突き刺し破壊すると、蜘蛛型はその場に崩れ落ちた。


 完全に停止したのを確認して、右手に装着している魔導器のスイッチを切り、魂力ブーストを止めた。軽く眩暈がしたものの立ってられないということは無かった。


 ブーストしていたのが1~2分と短かったからだろうか?


「よくやった、樹。この魔導機兵はほぼ無傷だな、フフフ……」


 ルイさんは、俺に近づき声を掛け不気味に笑う。この部屋に入る扉に書いてあった文字の様子だと、ここがこの迷宮の最奥だろうからさっさと目的を達成して帰りたんだけど……。


「あのー、これで遺跡の階段のセキュリティが解除されて、階段の奥の部屋に行けるようになったのでは?」


「ああ、そうだ。この場所にも転移ゲートを開通するから少し待ってくれ」


 ルイさんが視界に映るインターフェースを操作していると転移ゲートが出現した。俺達はその転移ゲートに入っていった。


 


 転移ゲートを抜けた先は遺跡の階段の近くだった。ルイさんが階段を下りていくので、俺達も付いて行く。


 今度は途中で迷宮に飛ばされずに、階段を下り切ることができた。下りた先には廊下があり進んでいくと扉があった。


 ルイさんが扉を開けて部屋に入ると、パッと明かりがついて部屋の中が見渡せる。思っていたより広いな。何に使うか分からないけど機器が沢山あった。本棚もありたくさんの本がある。魔導器と思われるような道具もたくさん置いてあった。


 俺達は部屋の中に入っていき、それらを確認している。ここにあるものを下手に触ると怒られそうなので、俺は部屋に入って慎重に中を観察した。


 魔導器には使い方などが書かれたタグが付いていて、大体どんなものかが分かる。もちろん文字は読めないのでアシストに読んでもらった。


 結月が魔導器を指差して、ルイさんに何かを言っているな。あ、なんか魔導器を手に取ってアイテムストレージにしまったな。なにか気になる物でもあったのかな……?


 俺も一通り見てまわったが特に興味が湧く物は無いし、ルイさんはしばらくここを調べたいだろうから帰ろうかな。


「俺達は帰りますね」


「そうか。力を貸してくれてありがとう。この礼はまた今度する」


 俺は軽く頭を下げて、部屋から出て箱庭に転移した。


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