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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?
8/122

通話中

 ――翌朝。



 鳴海さんと一緒に朝食を食べている。


「今日は別行動しよ。ちょっと一人で買い物したいんだ」


「そっか、分かった。じゃ俺は一人でモンスター狩ってくるね」


 今日も鳴海さんと一緒に行動したかったが、まとわりついて嫌がられても困るので了解しておいた。


 俺が朝食を食べ終わり席を立つと、鳴海さんは笑顔で声を掛けてくれた。


「柳津君、気を付けてね」


 今日も破壊力抜群の可愛い笑顔だなぁ、などと思いつつ「うん」と返事をした。




 * * *




 宿泊施設から出て歩いていると、ふと思い出す。


 そういえば、ショッピングモールを回っているときに、刀が売っているのを見かけた。刀ってカッコいいよなぁ。今使っているスキルは剣より刀向きな気がする。


 刀、買おうかな。


 早速ショッピングモール内の武器を売っている店に向かった。店内には色々な武器が陳列されている。俺のイメージしていたゲームの中の武器屋そのものだな。さて俺が買えそうな刀は……。


 ミスリル刀 軽く丈夫な刀 2000Cr


 2000Crか、資金はゴールドロックのおかげで、多少は余裕があるから買うか。


 刀を購入した後、ショッピングモールから出て北の転移ゲートに向かって歩いていると、男の声で呼び止められた。振り返ると双原が立っており、暗い表情で話しかけてきた。


「君は、昨日陽那と一緒にいたよね? 少し話さないか?」


 その時、音声アシストが聞こえた。


「鳴海陽那より通話の着信です」


 双原に「電話が掛かってきたからちょっと待って」と断りを入れ、視界の端にある通話アイコンをタップすると、鳴海さんの声が聞こえてきた。


「あっ柳津君? 今双原君が北の転移ゲートに向かって、歩いているのが見えたから注意してね」


「えと、いま声かけられてる……」


「えー! 大丈夫なの?」


「あ、うん、どうやら今は落ち着いてるようだから、ちょっと話を聞いてみるよ」


「そう? 気を付けてね」


 鳴海さんとそんなやり取りをしていると、双原が割り込んできた。


「今、陽那と通話しているのか? 君は陽那と付き合っているのか?」


「いや、付き合ってはいないよ。昨日も言ったろ? フレンドでパーティーメンバーだって」


「でも陽那のことが好きなんじゃないのか?」


「それは……。でも俺、中学の卒業式に鳴海さんに告白して振られているんだ」


「そうだったのか、じゃあ俺たちはライバルというわけか!」


「いや違うだろ。君、鳴海さんに嫌いとか言われたよね? 好感度メーター下限値だよ。あきらめてほかの恋探せば?」


「ぐはぁ!」


 双原は崩れ落ちた。


 とりあえず通路の真ん中で話し込むのもアレなので、俺たちは自販機で飲み物を買い通路わきに並んでいるベンチに腰を下ろした。そして、俺は遠くを見ながら話した。


「なんというか、振られた直後は俺も辛かったよ。でも高校の同じクラスに凄く美人な子がいてさ、綺麗な長い黒髪をポニーテールにしている、鳴海さんと少し似た雰囲気の子なんだけどね……」


 双原は黙って俯いているので俺は続ける。


「あっさりその子のことを好きになったよ。それからは鳴海さんのことも考えることは無くなって、辛くも無くなったんだ」


「そうなのか。なら今は陽那のことは、何とも思っていないのか?」


「いや、また好きになった。この箱庭に来て鳴海さんと一緒に行動してみて、やっぱり可愛いなと思ったよ。中学の時より美人になってるしスタイルも……ね」


「ああ、確かにおっぱい大きいな!」


 ……露骨に言うなコイツ。


「もちろん、美人だから、可愛いいからってのはある。でも一緒に過ごしてみて人柄というか、纏っている雰囲気のようなものにも惹き付けられてると思うよ」


 すると双原は凄い剣幕で声を張った。


「俺は陽那をずっと見ていた! 陽那を好きな気持ちは、俺の方が強い!」


「でも今は鳴海さんに嫌われているだろ? 何か行動しても、すればするほど逆効果なのでは?」


 俺の言葉に双原の勢いは急に弱まり、悔しそうに口をへの字に結ぶ。


「ぐぅぅ、しかし……」


「この世界に転移した人のうち、女の人も結構いたように思うから、新しい出会いを求めて視野を広げてみたら? かっこよくモンスターを倒してたら女子にもてるかもよ?」


「そうか! ボスモンスターを討伐したら、女子にモテモテということだな?」


 そこまでは言ってない……。しかし双原の瞳に闘志が宿る。


「君は北のフィールドの攻略を目指すんだよな? 俺は南のフィールドボスを討伐してみせる! 話相手になってくれてありがとう! 俺、頑張るよ!」


 とても元気になった様子の双原が走り去る背中を見送った。


「これで鳴海さんを独り占めにできる。……なんてね。俺が鳴海さんのことを大好きでも、向こうは俺のことなんて何とも思っていない、よな」


 一人呟く言葉に、空しくなりため息が漏れる。


 ふと視界の端を見ると、「鳴海陽那と通話中」とアイコンが表示されていた。その瞬間、俺の鼓動は跳ね上がる。しまった! 通話を切るのを忘れてた!! 


 直後、通話中アイコンが消えた。……鳴海さんに今の話を全部聞かれてた?


 鳴海さんのことが好きって、もろに口にしてしまったが……。どう思われただろう? 待てよ、箱庭で最初に会った時に「憧れの人に再会して興奮してるの?」みたいなことを言っていたよな。


 向こうは俺が好きなことを知っているんだから今更か。それはそれでなんか悲しい気もするけど、特に気まずくなることもないだろう。


 そう思って考えるのをやめたのだった。


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