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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

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遺跡探索(中編)

 ――翌朝。


 昨日攻略したドーム状の部屋に、みんな揃って転移して来た。


 そこには作業服姿の人が何人かいて、この部屋を調べていた。


 ルイさんも既に来ており、俺達を見つけると近くに来た。傍らには銀色の長い髪の若い女性と40代くらいと思われる男性がいた。


 ルイさんは俺達に女性を紹介する。


「この子が副社長のセフィリアだ。若いが優秀で魂力も高い。エルピスでNo2の戦力を有しており、議員もしている」


 陽那、結月、アサカ達に負けない程綺麗だ。俺は軽く頭を下げた。


 ルイさんは続ける。


「実質エルピスを動かしているのは彼女だ。そのおかけで私は比較的自由に行動できている」


 うわぁ……。きっとルイさんに面倒ごとを押し付けられてる苦労人なんだろうな。


 そんなことを思いつつセフィリアの目を見ると、俺のことをまるで汚いものを見るかのような目で見ている。


「あなたがイツキ? 三人の女の子を手玉に取っている、ケダモノ男らしいわね」


 初対面から辛辣な言葉を掛けられたが、事実なので言い訳もできない。


「……まぁ、そうです」


 アサカが横からセフィリアに声を掛けた。


「セフィリアも来てたんだね。今日は一緒に探索するの?」


「私はここのボスモンスターが討伐されたと聞いたから、少し様子を見に来ただけよ。すぐに仕事に戻るわ」


「あなたもこんなケダモノ男とさっさと別れて、会社のために働きなさい! それが強い力を持つ者の義務よ」


 険しい表情でセフィリアが苦言を呈すると、アサカは頭に血が上った様子で言い返す。


「遺跡探索を手伝ってるから、会社に貢献してるもん! それにセフィリアもイツキのことを知ったらきっと好きになるよ!」


 セフィリアは表情をより険しくして言い返す。


「なるわけ無いでしょ!」


 黙って聞いていた陽那は小声でアサカをなだめる。


「アサカ……変なフラグ立てないで。これ以上女が増えたら厄介だよ。ツンデレ属性とか本当に厄介なんだから」


 セフィリアは「ふん!」と振り返り転移していった。


 次にルイさんは40代くらいと思われる男性を紹介した。


「こちらはクラウスだ。開発部を任せている」


 何となく仕事が出来そうなオジサマに見える。


 俺が軽く頭を下げるとプレッシャーを放ってきた。魂力は俺の方が高いので特にビビることも無いけど、初対面で挑発的だなぁ……。


「ここのボスを倒したのはお前か。ふむ、たしかに魂力は高いな。この遺跡の迷宮はまだ階層がある。ついでに最奥まで攻略してくれ」


 俺が呆気にとられていると「クラウスさん! ちょっと来てください」と部屋を調査している作業者がクラウスを呼んだ。


 クラウスはその作業者に向かって片手を挙げて応えると、「では、よろしく頼むぞ」と言い残して行ってしまった。


 何とも強烈な個性を持った二人が去った後、俺は口を閉じたまま、ルイさんに視線を向けた。


「二人とも優秀だが少し変わっていてな。不快な気分にさせてしまったのなら申し訳なかった」


「いえ、気にしてません」


「よし、なら今日も探索するか」


 ボスがいたところの奥に、下の階層へと続く階段があるので、俺達はその階段を下って行った。


「なんでこんな迷宮を作ったんだろう? クリアさせたくないなら、もっと無理ゲーにすればいいのに」


 俺がふと思ったことを口にすると、ルイさんがそれに答える。


「こういった迷宮の制作者は、高度な迷宮を作って自分の高い技術を誇示したいんだよ。先程の部屋だって、魂力の高いモンスターが大量にわいてくる仕掛けなどは本当に驚かされる」


「ふーん、そんなもんですかね……」


「この迷宮をクリアすることで行けるようになる部屋には、製作者からのご褒美ともいえる貴重な品物が置いてあるはず。これほどの高度な技術を持った者が遺した物とは、どんな物なのか興味深いと思わないか?」


「……そうですね」


 ニヤニヤしながら俺に問うルイさんに、俺は愛想笑いで返した。




 階段を下りきると一階層と変わらない雰囲気の迷宮だった。白よりの灰色で、コンクリートのようにも見える壁は、どことなく地下街を思わせる。天井は高く閉塞感はさほどでもない。


 しかし、この階層のモンスターの気配を探ると、一階層より段違いに高い魂力のモンスターの気配が多数あった。


「ルイさんこれ……」


「ああ、魂力8万クラスのモンスターが何体もいるようだな」


 ルイさんは嬉しそうだ……。まあ魂力8万でも相手がモンスターなら勝てるだろうけどな。


 迷宮を進んでいくと、一体の爬虫類系の見た目をした、二足歩行のモンスターに遭遇した。リザードマンだな。手には剣を装備している。


「試しに俺が戦ってみるね」


 俺は魔刃のオーラで刀を具現化し、リザードマンに歩いて近寄った。俺を敵と認識したのか、雄たけびを上げて威嚇した後、俺に向かって突進してきた。魂力が高くても知性も技術も無いモンスターだ、一撃で決めてやる。


 俺は間合いに入ったリザードマンに向かって袈裟切りを放った。しかしリザードマンは俺の斬撃を半身で躱して剣を振り下ろしてきた。


 全く予想していなかったので焦ったが、障壁を展開して受けバックステップで距離を取った。


「コラ、樹! 油断するなー!」


 少し離れた所から見ている結月が声をあげたので、俺は思わず苦笑いで応えた。


 魔刃のオーラで斬撃を飛ばして倒してもいいけど、それだとなんか負けた気がするので、今度は油断せずに剣技で勝負する。


 数回打ち合って、俺の刀がリザードマンを捉えて倒すことが出来た。たいして強くはなかったが、きちんと剣術になっていた。パンドラの面々よりかは強かったな……。


「さっきのモンスター、剣の心得があったみたいですけど……」


「制作時に戦闘アルゴリズムをきめ細かく作りこんでいたのか。あのスピードで、受け攻めも巧かったし、剣の振りも良かった。ウチで作るモンスターとは比べ物にならない性能だな。モンスターに剣技を埋め込む技術を応用すれは魔導機兵のレベルを上げられるかもな……」


 ルイさんに声を掛けるが、ルイさんはブツブツ独り言を呟いている。やっぱり嬉しそうにしているな……。


「あのー、ルイさん?」


「ん、どうした? さあ先に進もうか。ぜひともこの遺跡の技術を手に入れたい」


 根っからの研究者なんだなぁ……。と感心しつつ先に進むことにした。




 迷宮をどんどん進んでいくと、先ほどと同じ程度の魂力と思われるリザードマンと五体遭遇した。


「一人一体ずつ倒しますか?」


「いや、チームプレイで行こう。アサカは敵の動きを止めて、陽那は魔法で牽制、樹と結月で止めを刺して。私は後方から指示を出す」


「「「「了解」」」」


 リザードマン達も陣形を組んで対抗しようとしているが、アサカの能力で動きが鈍くなっている。そこへ陽那が光の魔法で削り、態勢が崩れたところで俺と結月で切り捨てた。


 今度は油断しなかったし、みんなで戦ったから楽勝だったな……。ルイさんは何もしていないけどね。


「樹、なにか言いたいことがあるのか?」


「い、いえ……」


 そんな感じで、遭遇するモンスターを蹴散らしつつ進むと、広い部屋に出た。この感じ……ボスのいる部屋だろうな。俺は部屋の内部の気配を探った。


 高い魂力のモンスターがいるな。見上げると、天井から何かがぶら下がっている。目を凝らしてよく見ると巨大な目玉のモンスターだ。気持ち悪っ! いくつもの触手が生えており、触手の先端にも目玉が付いていた。


「魂力10万程度だな。さすがにあれほど魂力が高いと致命傷を受けかねない。充分気を付けてくれ」


 こちらの様子を伺っているようだが攻撃は仕掛けてこない。ある程度近づかなければ攻撃してこないのだろうか? 眺めていても仕方ないので、仕掛けてみるか。


 俺が一歩踏み出そうとすると結月が制止した。


「樹、待って。私がやってみる」


「でも……」


「大丈夫だよ。樹より私の方が強いんだし。もし私が怪我したら、樹が治してね」


「……うん、気を付けてね」


 結月が走り出しモンスターとの距離を詰める。たくさんの触手の先の目玉から光線が結月に向かって放たれる。結月はそれを縦横無尽に動き回って回避しつつ、モンスターに近づいていく。


 モンスターを射程圏内に捉え、居合切りを放つが障壁に防がれてしまった。結月の居合切りを防ぎきるとは何て強力な障壁だ。


 結月は俺達のいる部屋の入り口付近まで退避してきた。彼女は全ての攻撃を回避しており無傷のようだが、一応聞いてみた。


「結月、怪我してない?」


「いっぱい怪我したから 治して」


 結月が俺に甘えて抱き着くので、ギュっと抱きしめておいた。アサカと陽那が冷ややかな視線を送っているので少し気まずい。


 誤魔化すために「で、どうだった?」と攻撃した感想を結月に聞いた。


「触手の攻撃が激しくて刀にオーラを溜める時間が無い。あの障壁を貫通するのは骨が折れそうだね。月影を使えば切れそうだけど……」


 どうしたものか……。


「私のイシュタルに魔力を思いっきり込めて投擲すれば、障壁を貫通してあのモンスターを倒せるよ!」


「モンスターごとこの空間も消し飛びそうだけどね……」


「うっ……」


 彼女たちの固有武器である、天照、月影、イシュタルを使えば倒せるだろうけど、力加減を間違えると全部ぶっ壊してしまいそうだからな……。待てよ、そうだ!


「俺と陽那とアサカで、固有武器を使って全力で障壁を作りつつあのモンスターに近づいて、結月が斬るのはどうかな?」


「なるほど、固有武器の強力な力を防御に使うんだね。試してみよう」


「あえて月影を使わずに斬るんだね。それならここを破壊せずに戦えそうだ」


 陽那、結月が頷いたので早速実行に移す。


 俺が月影を、陽那が天照を、アサカがイシュタルを呼び出し手に握る。そして魔力を込めて障壁を展開した。


 結月を三人で囲って陣形を組みモンスターに近づく。


 触手が激しく光線を撃って攻撃してくるが、俺達の展開する障壁はびくともしない。俺の思惑通り固有武器の持つ膨大な力は防御にも使えた。


 俺が今使っている固有スキルは魔刃の支配者なのだが、この状態では陽那とアサカとは魔力を混ぜられないようだ。それでも十分な強度の障壁を展開出来ているので問題は無い。


 結月は魔刃のオーラで具現化した刀にありったけの魔力を込めた。結月は青白く輝を握り締め、俺たちが展開する障壁から飛び出すと、渾身の居合切りを放った。


 その斬撃は障壁をごとモンスターを切り裂き、いくつもの触手が吹き飛んだ。しかしまだ倒し切っていない。


 陽那が障壁を解除して、怯んだモンスターに閃光を何発も打ち込む。目玉のモンスターは口が無いが断末魔の叫び声をあげ消滅した。


 何とか倒せたようだな。俺は振り返りみんなを確認すると、陽那が倒れていることに気が付く。俺が慌てて陽那を抱き起すと息はあった。


 眠っているのか? ルイさんが近寄ってきて、陽那をじっと見つめる。


「あのモンスターの魔法で眠らされてしまったようだな。魂力が低い者なら、夢の世界に捕らわれて目覚めなくなる魔法のようだが、陽那なら自力で目覚めるだろう」


 ルイさんが視てそう言うなら間違いは無いだろう。心配ではあるが今はどうしようも無いか。


 この部屋にもルイさんが転移ゲートを設置したので、俺は陽那を抱きかかえて、みんなとログハウスに転移した。




 * * *




「陽那を部屋に寝かせてくるね」


 俺は結月とアサカに声を掛けてから、陽那を部屋まで抱いたまま連れて行き、ベッドにそっと寝かせた。


 陽那はすーすーと寝息を立てて可愛く眠っている。ちゃんと目を覚ますんだろうな? と不安になってしばらく寝顔を眺めていた。


 陽那の寝顔を見つめているとニヤニヤと笑い出した。なんかいい夢でも見てるのかな?


 それにしても可愛いなぁ……。美人は三日で飽きるとか聞いたことがあるが、俺はまだまだ陽那に飽きそうも無い。


 なんかドキドキしてきた、部屋の入り口に目をやる。ドアは閉まっているが、鍵は掛かっていない。まぁ、鍵なんて掛けたら何してんだ? ってなるけど。


 モンスターに眠らされてる女の子にえっちなことをする気か? 不謹慎だぞ! いやいや、念のためにMPを回復させるだけだ。


 俺の頭の中で論戦が始まるが、きっと陽那だったらキスしても嫌がらないよね。という結論に至って、べッドに横になっている陽那の手を握り唇を重ねた。


 いつもは陽那とキスすると、陽那の方が情熱的に動いて俺の口の中を撫でてくれるけど、今は反応が無い。それが逆に新鮮で興奮してきた。ちょっとだけなら触ってもいいよな? 俺が陽那の身体に手をまわそうとすると――。


 コンコンコン! ドアをノックする音がした。俺は慌ててドアの方を見ると、既にドアは開いており、その状態でノックしたようだ。


「寝かしてくるだけなのに、やけに長い時間が掛かってるなーと思って見に来たら、イツキが寝てるヒナにえっちなことしてるー!」


「私は邪魔しに行くのはやめようって言ったんだよ」


 膨れっ面のアサカと、苦笑いの結月。俺はとりあえず言い訳をする。


「MPを回復していただけだよ」


「嘘だー、身体を触ろうとしてたよ!」


「うぐっ」


 騒いでいると陽那が目を覚ました。


「あっ、陽那。目を覚ましたんだね。良かった」


「私……。モンスターに眠らされてた? ゴメン心配かけたね」


 俺は陽那の手を取って「何ともない?」と確認すると、陽那は俺に抱き付き顔を間近に寄せた。


「多分、大丈夫。でも念のために私の身体をきちんと確認してみる?」


「はーい、完全に元気だね! さあ、お茶にしよう!」


 アサカがパンパンと手を叩くので、俺は陽那から離れてリビングに向かうことにした。


 リビングに行こうとすると、陽那が俺の腕に抱き付いてきたので声を掛けた。


「ニヤニヤしながら寝てたけど、いい夢見てたの?」


「うん、すっごくいい夢。私が浮気してる夢かな……」


 俺はその言葉に驚いて「浮気?」と反復した。


 陽那は俺の反応を楽しんでいるかのように、ニコニコと笑みを浮かべている。


「そ、私だけに夢中になってる樹とキスする夢。でも、やっぱり私はこの樹が大好きだな」


「……ありがとう」


 陽那は満面の笑みを俺に向けていた。 


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