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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?
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イシュタル

 心身共にリフレッシュした俺達は箱庭に戻ってきた。


 お土産売り場で買ってきた菓子を、リビングのローテーブルに広げティータイムにするか。


 お茶をすすりつつまったりしていると、アサカが突然立ち上がった。


「しまった! 今夜、私がイツキと一緒に過ごす番だった! さっきあんなにしたから、夜はもうできないよね……」


「アサカ、俺、頑張るよ」


「うん、嬉しい」


 陽那と結月は無言でお茶をすすっている。


 俺はルディロの様子を思い出しながら、口を動かした。


「それにしても、まるで日本のような雰囲気だったね。温泉街とか、露天風呂とか」


 アサカが買って来た饅頭に手を伸ばしながら応える。


「社長の好みで、日本の文化をシエラスにも広めたらしいよ」


「ふーんそうなんだ。ルイさんって影響力が大きいんだね」


「そりゃそうだよ。シエラス最大の企業『エルピス』の社長なんだから。副社長は議員もしてるし、魂力の大きい人も沢山在籍してるんだ」


「大きい声では言えないけど、シエラス政府とはズブズブの関係なんだよ」


「そ……そうか」


 胸を張り大きめの声で言うアサカ。それってなんかやばいんじゃ無いのか? 俺が思っている以上にルイさんは大物なのかもしれない。


 そんなことを話している間に、そろそろ解散の時間になった。三人に軽くキスをしてから自宅に転移した。




 * * *

 



 今夜はアサカと過ごすのだけど、アサカの固有スキルは使えるようになったばかりなので、まだ分からないことも多い。魔力を混ぜるのは上手く行くだろうか……。


 楽しみ半分、不安半分でログハウスに転移した。

 

 アサカは既に来ており、リビングのソファーに座って待っていた。


「お待たせ。ちょっと訓練用フィールドに行きたいんだけどいいかな?」


 アサカは泣きそうな顔になる。


「ううっ、やっぱり夕方に四人でいっぱいしたから今夜は無しなの?」


「違うよ。ちょっと二人で試したいことがあるんだ。きっと凄く気持ちよくなれると思うよ」


 きょとんとしているアサカの手を引いて、訓練用フィールドに転移した。


 見渡す限りの草原の続いてるフィールドに来た。


 俺は魔法でソファーの形に水塊を作りそこに座った。そして、アサカの手を引いて俺の前に座らせ、後ろから軽く腕を回して話し掛けた。


「大気の支配者ってなんかうまく使えない、というかなんか嚙み合わない気がするんだ。水魔法や風魔法は確かに使いやすくはなるけど、圧倒的な感じがしないというか……」


「あー、なんかわかる。私ね、一人で色々試したんだけど、多分この固有スキルの本質は水魔法や風魔法の強化じゃないと思うんだ」


「大気って星を覆っている気体の層のことだよね。だから、ここら辺の空気も全部大気なのかなって考えたんだ」


「だから魔力を放出して大気に混ぜて、大気そのものを操作するイメージをしてみたら……」


 言いながらアサカが魔力を周囲に放出した。


 すると俺達の周り2m程を避けるように激しく雨が降り出し、風が吹き荒れ嵐になった。次にアサカが、人差し指を立てて軽く振ると、一瞬で吹雪に変わった。


 再びアサカが指を軽く振ると、吹雪は収まりいくつもの竜巻が発生するのと同時に無数の落雷が起こる。さらにアサカが指を軽く振るとおさまり静かになった。


「こんな感じに思いどうりに大気を操ることが出来ちゃった」


「支配者クラスに成長して、感知できる範囲が大きく広がったんだけど、その感知できる部分すべてを思いどうりに操れるみたい。もっとも、操る範囲を広くすると、MP消費も大きくなるし、難しくなるんだけどね」


「それって、とんでもないチートなのでは?」


「そうだよね。使いこなすことが出来れば、ヒナやユズキよりも強くなれるかも」


 なるほど、大気そのものを操作するイメージか。とりあえず俺もアサカの真似をして、天候を操作してみた。


「ホントだ。思った通り操れる。それに物凄く軽く操作できている気がする」


「でしょ? でもさすがイツキだね。一回見ただけで同じことが出来るなんて」


 褒められてしまった。嬉しいな。とそれはさておきここからが本題だな。


「大気に魔力を放出してみて」


「……うん、分かった」


 アサカの魔力が広がり周りの大気に溶けて混ざるのを感じた。続いて俺も魔力を放出してアサカの魔力と混ざるようにイメージした。すると、強烈な気持ち良さを感じる。

 

 アサカは俺の腕にしがみつき、身を縮めてビクンビクンと大きく身震いをした。声はあげなかったものの息を荒くしている。


「アサカ、大丈夫だった? 魔力を混ぜると気持ちいいでしょ?」


 アサカは横に首を振る。頬を染め、蕩けた表情で俺に抗議する。


「大丈夫じゃないよ! イツキのばか……。こんな気持ちいいことをいきなりするなんて……訳も分からないうちにイッちゃったよ」


「ごめん、ちょっとしたサプライズだよ」


 俺はアサカを押し倒して唇を重ねる。


「ねぇ、イツキ。もう欲しいよ……」


「ああ、分かってる」


 俺達は一つにつながり、魔力を放出する。二人の魔力が大気で溶け合い混ざり合う。鮮烈な快楽と、二人の身体も溶けて混ざってしまったかのような、一体感を感じていた。


「すごく良かった」と呆けるアサカに俺は「まだこれからだよ」と囁く。


「放出した魔力を一点に固めて槍を作ってみよう」


「うん」とうなずくアサカ。 


 俺達はつながったまま唇を重ね、周囲を満たす二人の魔力が一点に集まるようにイメージした。

 

 大気中の魔力が集まっていき圧縮されて槍の形になっていく。


 俺達が快楽の沼に呑まれて、頭の中が真っ白になった頃、空中に浅葱色の槍が出来上がっていた。


 アサカは顔を紅潮させて息を上げている。


「こんなに気持ちいいことしてたら、なんか色々ダメになりそう……」


「今だけは、とことんダメになろうよ」


 しばらく二人はお互いの肌の温もりに包まれ、時を忘れていた。




 頬をつつく感触で目が覚める。辺りは薄っすらと明るくなっている。腕の中のアサカが俺を起こしたようだ。


「外でしちゃったね」


「鍛錬も兼ねてたからいいんじゃない?」


「えー、そうなの?」


 俺達は水塊のベッドから起き上がり、シャワーみたいに雨を降らせて二人で体を流した。


 温風を起こして体を乾かして、着替えも済ませてから、落ちている槍に視線を向ける。


 大気の支配を解除しても、やはり浅葱色の槍は消えていなかった。


 俺はその槍を手に取って眺める。青と緑の間で揺れるように色合いを変える光が、淡く灯っている。


「この槍にも名前を付けたいな」


「私とイツキの愛の結晶だから、素敵な名前を付けてね!」


 愛の結晶って……。まぁいいか。それにしても素敵な名前か……。


 あ、そうだあれなんか良さそうだ。


 俺達は二人で自宅に転移した。俺の部屋のベランダからコソコソと空に飛び立つ。


「他の人に見られないようにしないと」


「見られたらダメなの? じゃあ……」


 アサカが魔法で霧のような細かい水の粒子で膜を作り、俺達を包み込んだ。


「光学迷彩を応用した霧だよ。私達の姿は見えないけど、私達は普通に周囲を見ることだ出来る優れモノなのだ」


 胸を張りドヤ顔のアサカ。俺は「すごいね」とアサカの頭を撫でた。


 二人で手を繋ぎ上空に飛んで行くと、明るくなりつつある東の空に、一つの輝く星が見えた。明けの明星だ。


「アサカのアサって、日本語では朝なんだよ。朝に美しく輝くあの星と、美しいアサカ。なんか共通点あるよね」


 ダジャレっぽいとか言わないでね……。


「美しいって……。そんなホントのことを正面から言われると照れるよ。それであの星はなんて名前なの?」


「一応、金星って名前なんだけど、美の女神ヴィーナスとか魔王ルシファーとか他にもいろいろ呼ばれているよ。その中で、アサカのイメージだと美と豊穣の女神イシュタルだと思うんだ」


「女神イシュタルか……。うん、素敵な名前だね」


 気に入ってもらえたようでホッとする。


「そういえば、あの星ってシエラスでも見えるよ。シエラスは今冬だから見えるのは夕方だけどね」


「え、そうなの? それってどういうことだ?」 


 考えようとしたが、ややこしいので考えるのをやめた。そして俺の部屋に戻る。何やらアサカがそわそわしているな。


「ここがイツキの部屋かぁ。思ったより狭いんだね」


「日本の庶民の部屋なんて大体このくらいだよ」


「イツキって世界中でも最上級の魂力を持っているのに庶民なの?」


「地球には魂力って概念が無いからなぁ……」


「レジーナに来ればどこの国に行ってもお偉いさんだよ。私達の会社エルピスなら魂力の強さの序列は五位より上は確実だと思うよ」


「社長もイツキを気に入ってるから、エルピスに来ればいいのにー」


「はは、まぁ考えておくよ」


 前にルイさんからもそんなことを言われたな。俺が笑顔で応じていると、突如アサカが何かを思いついたようだ。


「はっ、イツキのご両親に挨拶しなくては!」


「こんな早朝に、女の子を連れ込んでるのがばれたら面倒なことになるから、また今度ね」


「うー、それもそうか。じゃ、私はとりあえず帰るね。今日も箱庭に来るんでしょ? また後でね」


「私達の愛の結晶は樹が持っていて」


 アサカは俺に浅葱色の槍を渡して、軽くキスをすると転移して帰って行った。


 部屋で一人になったのでベッドに座ってぼーっとすると、俺の中からアサカの魔力を感じる。やはり俺の中に混ざったようだな。俺の中にある陽那と結月とアサカの魔力の心地良い温もりをしばらく感じていた。


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