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箱庭のエリシオン ~ゲームの世界に転移したら美少女二人が迫ってくるんだが?~  作者: ゆさま
謎の異空間に飛ばされたら金髪美少女が迫ってくるんだが?

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スキルの成長

 俺がアサカの元に転移すると、彼女は満身創痍だった。敵の姿は無く、気配も感じない。


「アサカ、無事か?」と声を掛けると、アサカは俺の方を見て笑顔を浮かべたかと思うと、崩れ落ちるようにその場に倒れてしまった。


 倒れたアサカの元に駆け寄り、抱き起して魔力を込めてギュっと抱きしめる。アサカの傷は跡形もなく完治させることが出来た。


「イツキ、来てくれたんだね。ありがと。私の相手は逃げて行ったよ……」


 それだけ言うと気を失ってしまった。身体の傷は俺が完治させたが、相当消耗しているんだろうな……。


「アサカ、頑張ったんだね」


 アサカの頭を撫でて、キスをしてMPも回復しておいた。


 気を失っているアサカを抱き上げて、箱庭に転移した。




 箱庭のログハウスに戻ると、陽那と結月はもう戻ってきていた。二人して「お帰りー、遅かったね」と俺に声を掛けた。


 結月は俺がアサカを抱きかかえているのを見て尋ねた。


「あれ、アサカどうしたの?」


「アサカは何とか勝てたみたいだけど、深手を負っていたんだ。傷は完治させたし、MPも全回復させたからそのうち目が覚めると思うよ」 


 陽那は、俺に抱きかかえられたアサカを見て言う。


「あの程度の奴らにやられてしまうなんて、もっと厳しく鍛えなきゃね」


 口ではそう言っているが、表情からは陽那もアサカを心配していることが窺える。俺は「ああ、そうだね」と応える。


 とりあえずアサカを部屋に連れて行きべッドに寝かせる。アサカはスース―と寝息を立てて眠っていた。


 アサカの可愛い寝顔をじっと見つめていると、俺の鼓動が高鳴ってくるので、軽くキスをしてリビングに戻ることにした。




 リビングにはルイさんが来ていた。


「ピルローク達がちょっかいを出してきたようだな」


「はい。俺が孤島でダロスを倒した後に、ピルロークが転移してきたので相手をしました」


「ピルロークと戦ったんですけど、今思うと指導されたような感じでした。おかげで俺も刀を具現化できるようになったし……」


 ルイさんは顎に手を当て考える。


「そうか、ピルロークも研究者気質だからな。樹の固有スキルに興味があるのかもしれない」


「ええっ、なんか嫌だなぁ……」


 アサカが起きてリビングにきた。。


「イツキ、恋人が気絶したら、目を覚ますまで付き添うのが普通でしょ!」


 膨れっ面で文句を言うアサカに俺は言い訳をする。


「あ、ごめん。身体の怪我は完治させたし、MPも全回復させたから大丈夫だと思って……。それにアサカの可愛い寝顔を見ていてムラムラしちゃうと駄目だから……」


「駄目じゃないよ! ムラムラしたら寝込みを襲えばいいのに!」


 アサカはいつも通り元気になったようだな。俺はアサカに近寄り抱きしめた。


「アサカが無事で良かった」


 俺の腕の中でアサカは言う。


「……もうだめだと思ったとき、イツキの声が聞こえたんだ。そしたら力が湧いて来て凄い威力の魔法が使えたんだ……」


 その言葉を聞いたルイさんはアサカをじっと見つめた。


「アサカの固有スキルが成長しているな……」


「大気の支配者か……。水と気流を自在に操れるようだな。おそらく天災規模の魔法を行使できるだろう。身体の怪我を治療する魔法は変わっていないようだ」


 アサカはポカンと驚いた表情だ。


「私が、支配者クラスの固有スキル持ち……? 信じられない……。レジーナ全土でも数人しかいなくて、支配者クラスの固有スキルが覚醒した者は、文字通り国一つを支配することも可能なほど強大な力を得ることが出来るという……」


 ルイさんは柔らかい表情で頷く。


「私の固有スキルの眼で識別したから間違いない。アサカの固有スキルの強さは紛れもなく支配者クラスだ」


 アサカは飛び跳ねて、全身で喜びを表している。


「これで、ヒナとユズキを倒せる! ちょっと訓練用のフィールドに行って試してくるね!」


 喜んでいたかと思ったら、そう言い残して転移して行ってしまった。陽那と結月を倒すのはやめて欲しいが、嬉しそうでなによりだ。


「支配者クラスの固有スキルに成長したってことは、アサカは死にそうなくらいピンチだったってことですか?」


「そういうことになるな」


 俺がピルロークと戦っている間に、アサカは苦戦していたのか。


「……アサカの身に何かあったらと思うとゾッとするな。本当に無事で良かった」


「奴らは弱かった。でも魔導器を使用したんだろうね。私がシェイドを倒した後すぐにアサカの所に向かえば、アサカが危険な目にあうことも無かったのに……」


 結月は深刻そうな顔で呟いた。陽那も曇った表情で俯いて黙っている。


「結月……、アサカは無事だったんだし、固有スキルも成長したんだから! 陽那も落ち込まないで」


 俺は、陽那と結月を抱きしめ背中を撫でた。二人は「うん……」と頷いた。


 しばらくして、アサカが戻ってきた。満面の笑みでご機嫌の様子だ。


「ヒナ! 私と勝負して!」


 陽那はクスッと軽く笑った後、「いいよ」と答えた。俺達は全員で訓練用フィールドに転移した。




 アサカと陽那は飛んで空中で向かい合っている。俺と結月は魔刃のオーラで障壁を作りガードすることにした。魔力をすべて魔刃に回しているおかげで以前よりも強力な障壁が出来ている気がする。


 それと結月のオーラと俺のオーラが溶け合い混ざることで、素肌で密着して抱き合っているかのような気持ち良さを感じる。結月をチラリと見ると、顔が少し赤くなっている気がする。


「あの……、樹……? 私、すごく気持ちいいんだけど……」


「俺も……」


 ルイさんがゴホンと咳ばらいをする。俺は慌てて誤魔化そうとする。


「い、今はアサカと陽那の手合わせに集中しないとね」


 俺と結月が、魔刃のオーラを絡めることで感じる快楽に耐えているとは露知らず、アサカと陽那の勝負が始まった。




 陽那は余裕の笑みを浮かべてアサカを見ている。


「好きなように攻撃しておいで」


 アサカは気合十分で応える。


「その余裕、すぐに崩してあげるよ!」


 アサカは魔力を水に変化させて、槍の形に固める。かなりの魔力が込められているようで、魔刃のオーラで具現化した刀と似た威圧感を放っている。

 

 それを右手に持ちおもむろに陽那に向かって投げつけた。風の魔法で加速しているのか、目では追えないほどの速さで飛んで行く。


 陽那は表情を変えることも無く余裕で躱した。


「ヒナなら避けると思ったよ。でもこれならどう?」


 アサカは自分の周囲に大量の槍を発生させた。一つ一つが先ほどの槍と同じ程度の魔力が込められているように感じる。


「よーし、なら私も真似するね」


 陽那の周囲に炎の魔力を固めた赤い刀が大量に発生した。


 二人が同時に手を振り下ろすと、次々と槍と刀が発射されぶつかり合う。はげしい閃光と爆音が辺りに広がり、衝撃波が俺達の方まで来るが、俺と結月が展開している魔刃の障壁はびくともしない。


 アサカと陽那の魔法の槍と刀の威力は全くの互角だったようで、どちらにもダメージは無かったようだ。


「さすがヒナだね。でもまだまだ行くよ」


 再び槍を作り出し、今度は両手で持ち構える。先ほどの槍よりも多くの魔力が込められており、圧縮され密度を増した魔力によってアサカの周囲が震えている。槍を捻りながら突き、圧縮された魔力を解き放った。


 大気をねじ切るような轟音とともに螺旋の水流が一直線に撃ち出されると、その技によって巻き起こった暴風が周囲に吹き荒れる。螺旋の直径はアサカの身長の三倍はあり、込められている魔力は今までのアサカの技とは比較にならないほどの大きさだ。


 陽那はそれを両手を前に出して正面から受け止めた。陽那の両手にも水と風の魔力が渦を巻いており、アサカの魔法を相殺しているようだ。


 アサカの放つ螺旋の水流を陽那は難なく防ぎ切った。


「今の魔法は今までで一番強いね。ちょっと本気出したよ」


「く……、これならどうだ!」


 アサカは水の塊を複数発生させて、陽那に向けて飛ばした。陽那はいくつもの水塊に囲まれる。そして、アサカが両手のひらを握る動作をすると、水塊が陽那に向かって押しつぶすように飛んで行き、陽那は水塊に閉じ込められた。


 さらにアサカは巨大な竜巻を発生させ、陽那は水塊ごと竜巻に飲み込まれた。


「これだけすれば、ヒナでも身動きできないでしょ?」


「思いっきり、強力な奴を叩き込むからね!」


 アサカは水と風の魔法を圧縮して固めた槍を作り出す。その槍に魔力を込められるだけ込めて陽那を閉じ込めている竜巻に投げつけた。


 勢いよく竜巻に突き刺さると爆発が起こって、辺りに水煙が立ち込め真っ白になった。


「ヒナなら大怪我はしないとは思うけど……、やりすぎたかな?」


 水煙が晴れていき、陽那の姿が現れる。陽那は無傷で何事も無かったような微笑みを浮かべている。


「まぁまぁだね。確かに強くはなっているよ」


 アサカは怯み空中で後ずさりをする。


「げ、無傷!?」


 陽那は笑顔のまま「次は私の番だね」と言い終わるのと同時にまばゆい閃光がほとばしる。


 アサカは即座に反応して水の障壁を展開するも、陽那が次々に放つ光線に徐々に障壁は削られていき、貫いた光の矢がアサカに命中した。そして、訓練用フィールドに響くアサカの悲鳴……。


 勝負がついたようなので、俺と結月は障壁を解いた。身体の芯に気持ちいい感覚が残っているが、何事も無かったかのようにしないと……。


 結月の顔を見ると頬はわずかに赤みを帯びている気もするが、表情は引き締まっている。さすが結月だな。


 涙目で俺の方に飛んでくるアサカ。


「イツキー、抱きしめて怪我を治してー」


 しかし、陽那が瞬間移動をしたのかと思うほどの速さで飛んできてアサカを捕まえた。


「だから、私も治癒魔法は使えるって!」


 陽那はアサカに治癒魔法を使いあっという間にアサカを完治させた。


「私はイツキに治してほしかったのに!」


「私を倒すんでしょ? もっとやろうよ」


「うっ、また今度で……って言うか、支配者クラス同士なのに強さが違いすぎるでしょ?」


 アサカの抗議にルイさんが諭す。


「陽那と結月は支配者クラスに覚醒してからもずっと切磋琢磨していた。覚醒したばかりのアサカよりも能力を使いこなせるのは当然だ」


「しかし、アサカもさすがは支配者クラスの固有スキルだ。相当な強さだったよ。これから頑張れば陽那と結月に追いつけるだろう」


「えっ? そうかな……じゃあ頑張るよ!」


 さっきまで涙目だったのに、満面の笑顔になってやる気になっている……アサカはころころと表情が変わって可愛いな。


 さて、お腹も空いたしログハウスに戻るとするか。


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